
痩せる生活リズムと食事の基礎「体内時計」を学ぶ
朝型・夜型の違いは遺伝子が決める?体内時計を知れば睡眠とパフォーマンスが改善する
時間栄養学と体内時計について広島大学准教授の田原裕二氏が解説。自分のクロノタイプ(朝型・夜型)を知り、それに合わせた生活を送ることでパフォーマンスが向上する秘訣とは。

Q. 体内時計とは何か、どのように機能しているのか?
体内時計は体のあらゆる場所に存在している。筋肉や脳、腎臓、肝臓、皮膚など、基本的にすべての細胞に時計遺伝子が機能しているため、体全体に体内時計があると言える。
頭の真ん中には「中枢時計」と呼ばれるマスターオッシレーターが存在し、これが神経やホルモンを通じて体中の時計に「今何時か」を教えている役割を果たしている。この体内時計が24時間のリズムを刻むことで、人間の体は一日のサイクルを維持している。
体内時計は外からの刺激によって調整される。その代表的なものが「光」と「食事」だ。これらの刺激により、体内時計はリセットされ、調整される。
2017年にはこの「時計遺伝子の発見」でノーベル賞が授与された。体内時計の研究自体は1970〜80年代に始まったが、その重要性が認められるまでに30〜40年の時間を要した。動物実験から、体内時計が乱れたマウスは寿命が短くなったり、糖の代謝に異常が生じたりすることがわかっている。

Q. 朝型と夜型の違いは何か?どのように自分のタイプを知ることができるか?
朝型と夜型(クロノタイプ)を知るには以下の方法がある:
1. 休日の就寝時刻と起床時刻を確認する
2. 睡眠時間の中間時刻を計算する
3. 自分の年代と照らし合わせてクロノタイプを判断する
例えば、夜12時に寝て朝9時に起きる場合、中間時刻は午前4時30分となる。これを年代別の基準と比較することで、自分が朝型か夜型かを判断できる。一般的に20代では中間時刻が4時でも「朝型」と判断されるが、60代では2時30分程度が「朝型」の基準となる。これは年齢を重ねるにつれて、人は自然と朝型化していく傾向があるためだ。
朝型と夜型では、日中のパフォーマンスに大きな違いがある。朝型の人は朝8時頃が最もパフォーマンスが高く、夜型の人は夜8時頃が最も調子がいい。さらに、筋力のピークも異なり、朝型の人は14時頃にピークを迎えるのに対し、夜型の人は夜8時頃にピークとなる。

Q. 朝型・夜型は変えることができるのか?遺伝的要素はあるのか?
朝型・夜型は遺伝子によってある程度決まっているが、生活習慣によって変えることも可能だ。研究によると、数十万人のデータから朝型と夜型で異なる遺伝子が約300個見つかっている。つまり、朝型・夜型は親から受け継いだ遺伝的要素に大きく影響される。
しかし、夜型の人が朝型になることは可能だ。ただし、気を抜くとすぐに夜型に戻りやすいという特徴がある。休暇中や年末年始など生活リズムが乱れやすい時期は特に注意が必要だ。
また、興味深い研究として、カフェインと生活リズムの関係がある。マウス実験では、甘いカフェイン水を与えたところ、本来夜行性のマウスが昼行性に変化した。人間の場合も、夜型の人ほどエナジードリンクをよく飲む傾向があり、これが夜型の生活リズムを強化している可能性がある。
Q. 体内時計を整えるためにはどうすればいいのか?
体内時計は自然と遅れやすい性質がある。洞窟の中など外部刺激のない環境に置かれると、多くの人は25時間以上の生活リズムになってしまう。これを24時間に調整するために有効なのが、朝の光、朝食、朝の運動だ。
栄養素の面では、炭水化物を摂取すると血糖値が上がり、インスリンが分泌される。このインスリン自体が体内時計を調節する役割を果たす。また、タンパク質はIGF-1というホルモンを介して体内時計を調節する。
さらに、GLP-1(糖尿病治療薬として注目されているインクレチン)も体内時計の調整に役立つ。これを活性化するには、魚に含まれるDHAやEPAが効果的だ。また、腸内細菌が食物繊維を分解して作る短鎖脂肪酸も、GLP-1の分泌を促し、体内時計の調整に寄与する。
ただし、これらの食品は朝に摂取すると朝型に、夜に摂取すると夜型に作用する点に注意が必要だ。朝に重点を置いた食生活が体内時計の調整には効果的だとされている。

Q. 社会的時差ボケとは何か?どのように対処すべきか?
社会的時差ボケとは、平日と休日で生活リズムが大きく異なることで生じる体調不良のことだ。多くの人は平日に早起きを強いられ、休日に寝だめ(睡眠を補填)をしようとして夜更かしや朝寝坊をする。この差が大きいほど、体は時差ボケのような状態になる。
平均的には1時間程度の差だが、2〜3時間以上ある人も少なくない。これが慢性化すると「ブルーマンデー」と呼ばれる月曜日の不調や、自殺率の上昇など深刻な問題につながる可能性もある。
対処法としては:
1. 休日も平日と同じ時間に起床する
2. 睡眠不足がある場合は、早寝を心がける
3. 昼寝(パワーナップ)を活用する
特に夜型の人は社会的時差ボケの影響を受けやすい。社会は朝型に有利な仕組みになっているため、夜型の人は自分の体内リズムと社会のリズムのギャップに苦しむことがある。

Q. 8時間ダイエットとは何か?効果はあるのか?
8時間ダイエットは、1日の中で食事を摂る時間を8時間に限定する方法だ。欧米では既に多くの研究が行われており、減量効果だけでなく、血圧改善など様々な健康効果が報告されている。
これは単なる断食ではなく、血糖値の管理が重要なポイントとなる。食事の内容としては、朝に多め、夜に少なめを基本とし、朝食を毎日摂ることを習慣化すると体が変わってくる可能性がある。
朝食に関しては、和食派の人ほど早寝早起きの傾向があるという研究結果もある。ただし、これは和食を食べることで朝型になるというわけではなく、朝型の人が和食を好む傾向があるという相関関係を示しているにすぎない。
