
成功するキャリアを作るために必要なことは何か?
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2026年8月1日
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偶然を必然のキャリアに変える術: 予測不能な時代を生き抜く「計画的偶発性」のキャリア論
現代のビジネスキャリアは、かつてのように予測可能な一本道とは言えず、多くの「偶然」に満ちている。そんな不確実性の高い時代において、私たちはどのように自身のキャリアをデザインし、成功へと導けば良いだろうか。キャリアのプロが提唱する「計画的偶発性理論」を紐解きながら、変動する現代で自身の価値を高める方法を探る。


Q. 成功するキャリアを築くための普遍的な法則や理論はあるのか?
成功するキャリアに万能の法則や「これをやれば必ずうまくいく」という理論は存在しない。キャリア理論は、野球の戦術書と同じく、それ自体を学ぶだけで選手がうまくなるわけではないのと同様に、あくまで「ヒント」に過ぎないと認識する必要がある。
特に社会学や心理学といった文系理論は、理系理論のように99%以上の精度で物事を再現するものではなく、その妥当性係数はわずか0.4程度とされる。つまり、理論がキャリアの業績や成功を説明する要因は16%未満であり、理論だけで成功をデザインできると過信するべきではない。
重要なのは、理論と実践を行き来しながら経験を積むことである。日々の仕事の中で試行錯誤を繰り返し、座学で得た知識を自身の血肉に変える実践こそが、キャリア形成の本質だと言えよう。
Q. キャリアの約9割が「偶然」によって決まるのはなぜか?
キャリア研究者のクランボルツ氏が提唱する「計画的偶発性理論」によれば、キャリアの約9割は予期せぬ出来事や偶然によって形成されると言われる。これは決してキャリアが無計画であることを肯定するものではなく、偶然をいかにチャンスに変えるかが重要であると説く理論だ。
そのために必要とされるのが、以下の5つの行動特性である。
好奇心: 新しいものや面白そうなことに関心を持ち、アンテナを張る。
継続性: 面白そうだと思って始めたことを、飽きずにやり続ける。
楽観性: 物事がうまくいくと信じ、困難な状況でもポジティブに捉える。
柔軟性: 状況の変化に合わせて、考えや行動を調整する。
冒険心: 新しいことに挑戦することを恐れず、リスクを取って行動する。
これらの特性をバランスよく持つことで、キャリアにおける偶然の出来事を好機と捉え、それを最大限に活かすことができるのである。
Q. 悲観的な人でもキャリアで成功することはできるか?

悲観的な人が成功できないという考えは一面的なものだ。むしろ、故・稲盛和夫氏の言葉を借りれば、「悲観的に準備し、楽観的に行動する」という姿勢が成功を呼ぶことがある。
悲観的な人は物事のマイナス面やリスクに気づきやすい。目の前の「穴」を発見し、「やばい」と察知する能力に長けているのだ。これに対し楽観的な人は、気づかないまま進んで穴に落ちてしまう可能性がある。
しかし、多くの悲観的な人は穴に気づいた途端に行動を止めてしまうか、失敗するとすぐに諦めてしまう。稲盛氏は、「穴があることを認識した上で行動を止めず、もし落ちてもまた登ればいいという楽観的な行動力を持つこと」が重要だと指摘した。
自身の資質を理解し、日本人特有の「柔軟性」などの強みを活かしつつ、クランボルツ理論の5つの特性の中から不足している部分を意識的に補うことで、悲観的な性質がむしろ成功確率を高める武器となるのだ。
Q. リクルートのような「成功者を輩出する環境」は、個人にも再現可能なのか?
リクルートは第二新卒や中途採用が多く、様々なバックグラウンドを持つ人材を自社のカルチャーに染める力を持つ企業だ。その大きな特徴は、失敗を「最前線で戦った証」と捉え、それを評価する文化がある点だ。米国軍の考え方と共通し、捕虜となった兵士を、危険を顧みず最前線で戦った勇敢な兵士として称賛する。この心理的安全性の高い環境が、個人の好奇心や冒険心を急速に育む。
では、このような環境にいない人はどうすれば良いのか。窮屈な会社であっても、既に成功を収めている先輩や上司に話を聞くと良い。彼らの多くは、偶然の好機に必死に食らいつき、時には嫌々ながらも新規事業に挑戦し、泥臭く結果を出してきた経験を持つ。
つまり、変化を促す環境がなくても、自分から機会を求めて行動を起こす主体性が不可欠となる。社内で成果を出している人の体験談に耳を傾け、彼らが無意識のうちに実践しているであろう計画的偶発性の原理を探り、自身のキャリアに応用することが重要だ。
Q. 夢を追い続けるべきか、それとも現実的に諦めるべきか?

この問いに対し、クランボルツ理論には異なる側面からアプローチする複数の理論がある。
第一理論は「夢や特定のキャリアに固執せず、目の前のチャンスを掴め」と説く。夢ばかり追っていて他の機会を見逃すのではなく、与えられた種を最大限に活かすことを推奨する。キャリアカウンセラーの中には、これを強調しすぎるあまり、「ソニー以外にも道はある」と一方的に諭してしまう場合もある。しかし、このアプローチだけでは、夢の実現を追求する機会を奪いかねない。
一方、第二理論は「一つの夢を愚直に磨き続ければ報われる」と示唆する。人気お笑い芸人を例にとると、彼らの多くは特定のクラスの同級生同士でユニットを組んでいる場合が多い。これは決して数万人に一人の天才が集まったわけではなく、クラスで一番面白かったような「100人に1人」レベルの才能を持つ原石が、数十年かけて研磨された結果だと考えられる。
ではなぜ、多くの才能ある人々がこの境地に達せないのか。それは、成功への道のりが途方もないリスクを伴い、様々な誘惑や困難が立ちはだかるからである。安定を求めて挑戦(冒険心)を避けたり、売れない時期に楽観性を失い撤退したり、成功時に天狗になって柔軟性を失ったりすると、いずれか一つでも欠けると、100人に1人の才能は埋もれてしまうのだ。
この両方の理論を融合させたものが第三理論となる。これは、「夢は一度、徹底的にやり尽くして燃え尽きるまで追いかける」というものだ。そして、やり切って無理だと消化したら、次へと進めという考え方だ。マイケル・ジョーダンが引退後に一度野球に転向したように、かつての夢をやりきったことで、彼にとっての点(経験)は繋がった。
これは、スティーブ・ジョブズが語った「Connecting the Dots(点と点を繋ぐ)」の真髄と重なる。過去を振り返った時に点が繋がって見えても、歩んでいる最中に未来の道を正確に予測することは不可能だ。だからこそ、今ある場所で全力を尽くし、熱中することで、将来その経験が予想もしなかった形で繋がる可能性があるのだ。もし、ある夢を追いかけると決めたなら、「1年間だけやってみよう」「3年間だけ死ぬ気で挑戦しよう」というように期限を設定し、その期間内は全身全霊を傾けて取り組むのが賢明だ。期限を設けることで、集中力が高まるだけでなく、潔い「損切り」もしやすくなる。
一方、短期間で転職を繰り返す「ジョブホッパー」が成功しないのは、この第二理論の要素が欠如しているためだ。一つの会社や職務で粘り強く経験を積まず、成果を出す前に次の機会を求めてしまうと、表面的な経験(タグ)は増えても、本当に自身に蓄積される実力が乏しく、何者にもなれない。特定の領域で深い経験と実績を積むことが、キャリアの強固な「軸足」となるのだ。
Q. 今日の学びを実践する上で、キャリアに活かせるポイントは何か?
キャリア形成に遅すぎるということはない。たとえ年齢を重ねていても、クランボルツ理論に基づいた行動特性を意識することで、キャリアをいつでも軌道修正できる。かつての夢(例えばサッカー選手)が叶わなくとも、その過程で培われた情熱、スキル、そして逆境を乗り越える粘り強さは、形を変えて次のステージで必ず活かされる。全ての経験は決して無駄にならず、確実に個人の中に蓄積されていくのだ。
今日の学びをキャリアに活かす鍵は、自身の強固な「軸足」を確保した上で、目の前に現れる偶然の好機や新たな興味に対して、柔軟かつ果敢に挑戦していくバランス感覚だ。一つの道を極めつつも、別の可能性を探り、必要に応じて方向転換する「ピボット」の考え方は、まさに不確実な時代を生き抜くための有効なキャリア戦略と言えよう。
次回は、個人が仕事に根本的に求めるものを深く掘り下げる「キャリアアンカー理論」について解説する。自身の「自分らしさ」を特定し、その得意技をいかに仕事に活かすかを学ぶことで、よりブレないキャリア軸を確立できるはずだ。
