
7月以降、米国は空前の人手不足に陥る
バイデンの「功績」は移民300万人受け入れ?アメリカの好景気が長続きした理由

Q. アメリカではなぜ好景気が長く続いたのですか?
バイデン政権下のアメリカでは長い好景気が続きました。その秘密は「バイデンミックス」とも呼べる特殊な政策組み合わせにありました。
バイデンミックスの第一の特徴は国家予算の大幅増額です。歴代政権の予算増加率を見ると、オバマ政権後期で3%台、トランプ政権で5-6%台だったものが、バイデン政権では7%台に達しました。特に2022年までは、インフレ率を差し引いても非常に高い水準でした。
第二の特徴はコロナ禍からの回復過程で蓄積された「ペントアップ需要」の活用です。コロナ対策でばらまかれた資金が、行動制限で使われずに貯蓄として溜まっていました。バイデン政権はこの需要を活用できる幸運な時期に始まったのです。
そして第三の特徴が「ビルド・バック・ベター」政策です。これは石炭・石油などの旧エネルギーを廃止し、グリーンエネルギーへの転換を図るものでした。環境政策と次世代エネルギー政策を組み合わせた官僚的には王道の戦略でした。
Q. バイデン政権で実施された具体的な政策内容はどのようなものでしたか?
バイデン政権の政策は大きく分けて二つの柱がありました。
一つは「福祉・公平化政策」です。具体的には年金や給付金政策、フードチケット、メディケード(医療)、学生ローン返済免除などが含まれます。これらは購買力を増進させ、消費拡大に貢献しました。
もう一つは「ビルド・バック・ベター」と呼ばれる政策です。これは環境政策、衰退産業のスクラップ、インフラ投資の三要素から成り立っています。衰退産業から成長産業へ人材とお金を移すことで、投資拡大と収益力向上を目指したのです。
これらの政策が合わさると通常は景気拡大が起こります。しかし同時に人手不足による倒産、インフレ昂進、消費縮小、人件費アップといった問題も発生し、最終的にバブル崩壊を招くのが一般的です。
Q. なぜバイデン政権では景気後退やバブル崩壊が起きなかったのですか?
バイデン政権の秘密兵器は「緩やかな入国政策」でした。この政策により大量の移民を受け入れ、労働力不足を解消したのです。通常、移民政策は社会的摩擦を生むため政治家は慎重になりますが、バイデン政権は年間300万人という前例のない規模で移民を受け入れました。
この移民流入は「エッセンシャルワーカー」として機能しました。エッセンシャルワーカーとは医療従事者だけでなく、コンビニやスーパー、物流倉庫で働く人々も含みます。これらの職種に移民が入ることで、既存の国民はより生産性が高く、給与の良い職種へと「上流移行」することができました。
統計を見ると、トランプ政権時に月間700万件だった求人数が、バイデン政権下では1000万件を超える状態が続いていました。これは異例の高水準であり、バイデンミックスが生み出した強力な労働需要を示しています。
Q. 移民政策はアメリカ経済にどのような影響を与えたのでしょうか?
移民がアメリカ経済に与えた影響は計り知れません。2010年から2020年のデータを見ると、アメリカでは毎年約100万人の移民が流入し、国内人口増加と合わせて約200万人の人口増加がありました。

しかし近年、白人人口は減少傾向にあり、国内の人口増加はほぼ停滞しています。2021年、2022年はコロナの影響もあって人口減少となり、2023年も減少、2024年にようやくわずかなプラスに転じました。
つまり、アメリカも日本や中国と同様に人口減少社会に突入しつつあります。そんな中で経済が縮小せずに済んだのは、移民流入というバイデンミックスの効果だったと考えられるのです。
Q. トランプ新政権は移民政策をどう変えようとしていますか?その影響は?
トランプ新政権は移民政策を大幅に厳格化する方針です。バイデンも選挙対策として2023年6月に入国管理を厳格化し、月間流入数は30万人から15万人程度に減少しました。さらに同年10月の追加厳格化で10万人レベルまで減りました。
しかし、トランプ政権下ではさらに厳しくなり、月間5万人以下、実質的にはほぼゼロに近い状態になると予想されます。これは労働市場に深刻な影響を与えるでしょう。
移民は入国後6ヶ月ほどの教育期間を経て労働市場に参入するため、影響は6ヶ月遅れで現れます。すでに2024年5-6月頃から労働力の流入が減少し始めており、7月以降はエッセンシャルワーカーが著しく不足する状況になると予測されます。
2024年後半から2025年にかけては、人手不足による倒産が増加し、社会全体の活力が失われていく可能性が高いのです。
Q. アメリカの労働統計には何か問題があるのでしょうか?
アメリカの労働統計には現実を正確に反映していない側面があります。特に二つの要因が統計を歪めています。

一つ目は「不法就労者」の問題です。失業率調査は個人への電話調査で行われますが、不法就労者は摘発を恐れて調査に応じないケースが多く、実際には働いていなくても統計上カウントされません。
二つ目は「ギグワーカー」の問題です。例えばUberEatsの配達員が以前は月3万円稼げていたのに今は4千円しか稼げないという状況でも、電話調査では「仕事がある」と回答するため失業者としてカウントされません。
これらの問題により、実質的な失業者は統計よりも多いと考えられます。不法就労者とギグワーカーを合わせると約600万人、失業率に換算すると18%程度になるという見方もあります。
Q. 長期的に見て、アメリカの成功の秘訣は何だったのでしょうか?
アメリカの成功の秘訣は、常に「水が流れる方向」に投資してきたことにあります。アルビン・トフラーの「第三の波」が示すように、世界の発展は農業革命、産業革命、IT革命という三段階で進んできました。

アメリカはトフラーの提言通り、ITと金融に特化して道を開き、そこに進んだ国が勝つという戦略を取りました。一方、日本のような国々は昭和時代にうまくいった「要水路」(例えば万博、IR、地方創生など)に固執し、時代に逆行する投資を続けてきました。
アメリカとイギリスの歴史的転換点を見ても、イギリスが植民地支配という生産性の低い後ろ向きの投資を続けたのに対し、アメリカは前向きの投資を選択しました。このように将来性のある分野に投資する国家戦略が、アメリカの長期的成功を支えてきたのです。
Q. トランプ新政権下のアメリカ経済はどうなると予想されますか?
トランプ新政権の経済政策は、アメリカの成功要因から逸脱する可能性があります。特に製造業回帰政策は、生産性の低い分野に再投資するという点で懸念があります。
製造業はいわゆる「スマイルカーブ」の底に位置し、利益率が最も低い部分です。アメリカはこれまで高付加価値分野に特化することで成功してきましたが、トランプ政権はその逆を行こうとしています。
加えて、移民制限政策は労働力の大幅な減少をもたらし、インフレを再燃させる可能性があります。これらの政策が重なると、市場の大きな調整(いわゆる「トランプショック」)が起きる可能性も否定できません。
ただし、アメリカには強いレジリエンス(回復力)があります。4年後には再び軌道修正され、成長路線に戻る可能性も高いでしょう。歴史的に見れば、これも螺旋階段を上るように一時的に後退しながらも長期的には上昇していく過程の一部かもしれません。
