
トランプ政権の閣僚人事を予測
アメリカ大統領選挙でトランプ圧勝の背景とは?今後の人事と日本への影響
経済アナリストのジョセフ・クラフトが、トランプ政権2.0の誕生背景と今後の展望について解説。「男性票」と「経済不満」がカギとなり、上院・下院も制したトランプ政権は「やりたい放題」の状況に。今後の主要閣僚人事と日本への影響とは。

Q. トランプの圧勝は予想通りでしたか?
予想通りとまでは言えませんが、トランプ勝利の背景には大きく2つの要因があります。1つは「経済票」です。CNNの出口調査によると、経済状況が「良い」または「まあまあ良い」と答えた有権者は全体の31%で、彼らは圧倒的にハリス支持でした。一方、経済状況が「悪い」または「まあまあ悪い」と答えた有権者は約70%を占め、彼らは圧倒的にトランプに投票しました。
もう1つは「男性票」です。特にマイノリティの男性票がトランプに流れました。例えば黒人女性の9割がハリスに投票したのに対し、黒人男性はその比率が8割弱でした。さらに驚くべきことに、ラテン系男性はトランプ支持が逆転していました。
Q. マイノリティ男性がトランプを支持した理由は何ですか?
経済的な不満に加えて、民主党のアイデンティティポリティクスへの反発があります。例えば、CNNの番組でカマラ・ハリスの名前の発音を巡って議論があり、正しい発音をしないことが「女性蔑視だ」という極端な議論が展開されました。さらに民主党の党大会では、小さな女の子がハリスの名前の発音の仕方を国民に説教するような場面もありました。
こうした状況に対して男性層が反発し、一方でトランプはマッチョなイメージを打ち出し、WWEのハルク・ホーガンを登場させるなど、特に若いマイノリティ男性の心を掴みました。
Q. リベラルメディアの偏りも影響したのでしょうか?
非常に大きな影響がありました。日本での報道と現地の実感には大きな隔たりがありました。民主党は政策面でのアピールが弱く、トランプ批判に終始しました。「アメリカを統一させる」「皆の大統領になる」と言いながらも、すぐにトランプ批判に戻るため、共和党支持者は「結局私たちを批判しているのではないか」と感じていました。
また、情報収集の仕方も変化しています。若者を中心に、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNといった従来メディアではなく、SNSで自分の好きなポッドキャストや好きな人をフォローして情報を得る傾向が強まっています。イーロン・マスクも「伝統的メディアの時代は終わった」と述べていましたが、確かにSNS時代になって主流メディアの影響力は衰退しています。
Q. トランプが上院・下院も制したことの影響は?
これは非常に大きいです。トランプにとって今回は2期目で再選がないため、少なくとも中間選挙までの2年間は「やりたい放題」の状況になります。上院を制したことで人事承認が速やかに行われ、下院を制したことで予算を握れるため、減税政策や景気刺激策など、トランプの政策が素早く実行できるようになります。
Q. 主要閣僚人事はどうなりそうですか?
まず主席補佐官にはスーザン・ワイルズが就任することが発表されました。彼女はトランプの選挙対策本部長で、以前はフロリダ州知事のロン・デサンティスの選挙対策本部長も務めた「やり手」です。主席補佐官は日本で言えば幹事長と官房長官を合わせたような重要ポストで、彼女がトランプの暴走をある程度抑える役割を担うかもしれません。
国務長官候補としては、マルコ・ルビオ(フロリダ上院議員)、リチャード・グレネル(元ドイツ大使)、ビル・ハガティ(元駐日大使)などの名前が挙がっています。特にハガティは知日派で、NATO重視、ウクライナ支援に前向きなので、日本からすれば望ましい人物です。
財務長官候補としては、ハワード・ルトニック(金融会社CEO)やロバート・ライトハイザー(元通商代表)などが挙がっています。特にライトハイザーはドル安論者で、かつてレーガン政権時代にプラザ合意を交渉した人物であるため、彼が就任した場合は円高になる可能性があります。
商務長官候補としては、リンダ・マクマホン(元中小企業長官)が有力です。彼女はトランプ陣営に多額の献金をしており、信頼関係が厚いとされています。
Q. イーロン・マスクは政権入りするのでしょうか?
おそらく政権入りはしないでしょう。イーロン・マスクにとっては、政権入りするよりも外から影響力を行使する方が有利です。政権入りすれば、テスラやスペースXの運営から離れなければならず、持っている株も売却する必要があります。また、トランプの下に入ると指示に従わなければならないため、自由に行動したいマスクの性格には合わないでしょう。
しかし、この4年間でマスクに大統領への野心が芽生える可能性はあります。特に彼の事業領域である宇宙開発などは政府と密接な関係があるため、自分の夢を実現するために将来的に大統領を目指す可能性はあるかもしれません。
Q. 中東情勢への影響はどうなりますか?
トランプはイスラエル支持者ですが、「戦争は終わらせる」とも言っています。また、イスラエルのネタニヤフ首相とは家族ぐるみの付き合いがあり、トランプの言うことを聞かざるを得ない関係です。
このため、イスラエルがさらにガザやレバノンへの攻撃を強めるなら、トランプ政権発足前の今のうちに行う可能性があります。なぜなら、トランプ政権下では自由に行動しにくくなるからです。4年間付き合っていかなければならないトランプと喧嘩してイスラエルへの支援が減れば、ネタニヤフ政権も存続が難しくなるでしょう。
Q. ウクライナ支援はどうなりますか?
トランプは必ずしもウクライナ支援に反対しているわけではなく、「アメリカの負担を減らすべきだ」という立場です。彼はバイデン政権がアフガニスタンから撤退して混乱を招いたように、自分がウクライナから支援を引くことで責任を問われたくないという思惑もあります。
したがって、アメリカの負担は減らしつつも、他国の支援を増やすなど、何らかの形でウクライナ支援を継続する可能性があります。国務長官がハガティやルビオになれば、より安定したウクライナ政策が期待できるでしょう。
Q. 日本への影響はどのようなものが考えられますか?
駐日大使として、著名投資家のスコット・ベセント氏の名前が挙がっています。彼はヘッジファンドの創業者で、かつてジョージ・ソロスの右腕として活躍した人物です。財務長官になれなかった場合に駐日大使を希望しているとされ、親日派として知られています。
また、トランプ政権下で通商政策を担当するのがライトハイザーになった場合、彼はドル安論者なので円高になる可能性があります。さらに、トランプの関税政策によって日本企業も影響を受ける可能性があるため、今後の動向に注意が必要です。
