
資産を減らす「13の心理バイアス」の正体【マネックス証券・塚本憲弘】
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2026年1月19日
「投資で勝てないのは『脳の仕組み』のせい?」 マネックス証券・執行役員が語る人間が投資で陥る13の罠とは?国山ハセンに伝授する正しいポートフォリオ構築の手法とは? <ゲスト> 塚本憲弘|マネックス証券 執行役員 1978年生まれ。2001年一橋大学経済学部卒業後、経営学修士(ファイナンス)を取得。...
感情に流されず賢く資産を増やすには?予測不能な市場を生き抜く投資戦略
私たちの脳は、本来投資に向いているとは言い難い。市場の短期的な変動や感情に流され、非合理的な判断を下しがちだからである。しかし、適切な知識と戦略があれば、予測不能な市場環境下でも着実に資産を築ける。本稿では、感情の罠を避け、長期的な視点で資産を形成するための重要な考え方を提示する。

Q. 人間の脳が投資に向いていないのはなぜか?
人間の脳は感情に大きく左右され、投資判断を非合理的なものにしがちだ。例えば、利益が出ると「もっと稼ぎたい」という欲が、損失が出ると「損をしたくない」という恐怖が働き、客観的な判断を妨げる。損失の痛みは利益の喜びよりも強く感じられるプロスペクト理論のように、行動経済学の観点からも、人は感情的バイアスに支配されやすい点が指摘されている。
代表的な認知バイアスとしては、自分の都合の良い情報だけを集める確証バイアスや、自身の能力を過大評価する自信過剰が挙げられる。これらは投資家が特定の銘柄に固執したり、過剰なリスクを取ったりする原因となる。このような人間の本質的な傾向があるため、感情を排除した客観的な「仕組み」で運用することが極めて重要となる。
Q. 予測不能な市場環境にどのように対応すべきか?
市場で毎年パフォーマンス1位となる資産は常に変動しており、これを正確に予測することは不可能に近い。過去のデータを見ても、J-REIT、日本株、米国株、金、原油、新興国株などが年ごとにトップを入れ替えている。直近10年以上は先進国株が優位な時代が続いているが、これも歴史的には新興国株との間で優位性が循環してきた。

特定の資産に集中投資すると、高いリターンを期待できる半面、予測が外れた場合の損失も大きい。市場で最高の上昇日をわずか数日逃しただけで、全体の平均リターンが大きく減少するデータもある。そのため、特定の資産に集中せず、株式、債券、金など、様々な資産クラスや地域に幅広く分散投資し、市場全体に居続ける戦略が最も合理的である。一見分散しているようでも、市場がリスクオンの時に同時に上昇し、リスクオフの時に同時に下落するような資産ばかりでは、真の分散効果は得られないことに注意が必要だ。
Q. 投資を長期的に継続するために不可欠な要素とは何か?
資産運用を長期的に成功させるためには、「何のために投資をするのか」という明確な目的を持つことが不可欠である。投資それ自体が目的ではなく、老後資金、住宅購入資金、子どもの教育資金など、人生の具体的な目標を達成するための「手段」と捉えるべきだ。目的が曖昧だと、市場の変動に一喜一憂し、短期的な利益や損失で運用をやめてしまう可能性が高まる。

人生のステージによって、資産運用の戦略も大きく変化させる必要がある。一般的に、収入があり積極的にリスクを取って資産を増やす「資産形成ステージ」と、退職後に資産を守りながら取り崩していく「退職後ステージ」がある。資産形成期では時間的な余裕があるため、リスクを取りやすいが、退職後期では収入が減り、投資期間も短くなるため、資産保全に重点を置く運用へ切り替える柔軟な視点が必要とされる。
Q. 「ゴールベース運用」とはどのようなアプローチか?
「ゴールベース運用」とは、投資資金全体を一つの塊として捉えるのではなく、目的別に区分して運用する考え方である。具体的には、生活費、緊急予備資金、5年以内に使う短期資金、そして老後資金などの長期資金といった複数の「ポケット」を設定し、それぞれに応じたリスクとリターン特性を持つ資産で運用する。この方法により、例えば生活費は流動性の高い現預金で確保し、短期資金は値動きの少ない債券などで運用する一方、長期資金は積極的に株式投資で増やすといった戦略が可能になる。
このような多角的なアプローチは、資産運用における心の安定にも繋がる。仮に積極的な投資で含み損が出たとしても、生活に必要不可欠な資金は安全なポケットに隔離されているため、焦って売却する必要がなくなり、冷静な判断を保つ助けとなる。NISAのような税制優遇制度は、このゴールベース運用のための「箱」として最大限に活用すべきである。積立投資枠で堅実に長期的な成長を目指し、成長投資枠で特定目標に向けた積極的な投資を行うなど、それぞれの目的に応じて柔軟に活用すると良いだろう。
Q. 年齢やリスク許容度に応じた最適なポートフォリオ構築の指針はあるか?
資産配分の目安として、シンプルな経験則が存在する。「年齢=安全資産の割合」というルールがそれで、例えば35歳ならば資産の35%を現金、債券、金などの安全資産に、残りの65%を株式などのリスク資産に配分すると良い。これは年齢が若いほど、回復に使える時間が長いため、より多くのリスクを取れるという考えに基づいている。また、近年の米国株の高い年率リターン(25%など)は異常値であり、株式投資の長期的な期待リターンは年率7〜10%程度と現実的に捉えるべきである。

リスク許容度は年齢だけでなく個人の性格や職業によっても異なるため、自身に合った配分を見つけることが肝要だ。極めて保守的な人であれば2〜3%の期待リターン、バランス型であれば4〜5%を目標とし、積極的な投資家でも10%弱の期待リターンが現実的とされる。もしポートフォリオのリスクが高すぎると感じた場合、値上がりした株式や仮想通貨の一部を売却し、市場の動きとは異なる値動きをする米国債などの安定資産を組み入れることでバランスを調整できる。債券をポートフォリオに加える場合は、投資信託形式ではなく、証券会社で直接現物債券を購入すると満期償還や利回りが明確になり、初心者でも扱いやすい。
ポートフォリオを一度設定したら終わりではなく、定期的な「リバランス」が極めて重要だ。市場の急落は避けられない事態と認識し、目標の資産配分からずれが生じたら、例えば年1回程度、資産の再調整を行う。増えすぎた資産を一部売却して目標比率に戻すことで、リスクを管理しつつ利益を確定し、長期的な資産形成を着実に進められるだろう。安易な売買に走らず、仕組みと計画に基づいた行動を心がけることが、成功への鍵となる。
