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【カギはドーパミン】脳疲労を解消する生活習慣
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2025年10月18日

現代人を悩ます「脳疲労」。最新の研究で、脳疲労を引き起こす細かなメカニズムがわかってきた。鍵を握る「グリア細胞」や脳疲労を解消する生活習慣などについて、脳科学者の毛内拡氏に聞いた。 ▼プロフィール 毛内拡|脳科学者 お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系 助教。2013年、東京工業大学大学院総合理工...
脳疲労を科学的に解消する秘策:パフォーマンスを最大化し、「疲れ知らずの脳」を作る
情報過多の現代社会では、知らず知らずのうちに脳が疲労しているケースが少なくない。ただ休息をとるだけでは、この脳疲労は解消しないことが明らかになっている。
では、脳のパフォーマンスを最大限に引き出し、疲れ知らずの状態を維持するにはどうすればよいか。本記事では、脳疲労のメカニズムを解明し、日常生活で実践できる具体的な対策をQ&A形式で解説する。
「加齢だから仕方がない」「もっと休めば治る」といった漠然とした考えは捨て、科学的なアプローチに基づいて脳のコンディションを最適化する方法を探求しよう。
Q. 脳疲労を解消するためにまず何から始めるべきか?
脳疲労の解消に向けた第一歩として、スマートフォンの通知設定の見直しが極めて重要だ。通知が頻繁に届く状態では、自分の意思に反して注意が途切れてしまう「やらされてる感」が生じる。このような感覚の積み重ねは、「自分の時間をコントロールできていない」というストレスを脳に与え、疲労を蓄積させる原因となるのだ。
通知が悪いのではなく、その受動的な受容が問題である。自分が情報を能動的に見たいときにスマホを見るのは問題ない。だが、緊急性の低い連絡までリアルタイムで通知される必要はないだろう。家族からの緊急連絡など必要最小限の通知以外はオフにすることで、脳への不要な刺激を減らし、主体的に時間をコントロールする感覚を取り戻すことが、脳疲労解消の最も簡単で即効性のある策と言える。
Q. 6時間睡眠でも大丈夫だと思っていたが、本当に脳に良くないのか?
6時間睡眠が常態化しているなら、それは脳に深刻なダメージを与えている可能性がある。2週間にわたる6時間睡眠は、脳のパフォーマンスを2日間徹夜した状態まで低下させることが示されている。これは「睡眠負債」と呼ばれ、まるで借金のように脳に蓄積していくのだ。

例えば、適切な睡眠時間とされる8時間に対し、毎日2時間不足すれば、2週間で合計28時間もの睡眠負債が生まれる。この膨大な負債を、週末に数時間長く寝る「寝だめ」だけで解消することは不可能である。
「最近、物忘れがひどい」「集中力が続かない」といった脳のパフォーマンス低下は、安易に加齢のせいにすべきではない。多くの場合、その根本原因は返済されずに積み重なった睡眠負債にある。脳の本来の機能を取り戻すためには、2週間程度、毎日8時間の睡眠を確保することを試す価値がある。これは、脳をリセットし、記憶力や集中力といった認知機能を劇的に改善する可能性を秘めている。
Q. 加齢によって脳のパフォーマンスが落ちるのは仕方がないのか?
加齢によって脳のパフォーマンスが落ちると考えるのは、必ずしも正しくない。加齢は時間の経過を指す客観的事実だが、老化は機能の低下を示す。つまり、加齢は避けられないが、老化は適切な対策によって防ぎ、さらには超越できる。
これは「ビヨンドエイジング」という概念に表される。パフォーマンス低下の原因を加齢のせいだと諦めるのではなく、睡眠負債や後述する脳への刺激不足など、生活習慣に隠された原因を探ることが重要だ。
脳はいくつになっても、掃除し、活性化させることで、若い頃以上の輝きを取り戻せる可能性を秘めている。年齢を言い訳にせず、脳の潜在能力を最大限に引き出す努力を続けることで、人生はより豊かで活動的なものとなるだろう。
Q. ドーパミンを増やす活動「ドパ活」とは何か?注意すべき点は?
脳疲労が蓄積すると、脳の清掃係であるグリア細胞の一種「アストロサイト」の機能が低下する。これにより、思考のループが止まらなくなったり、衝動的な行動にブレーキが効かなくなったりする。このような状態から抜け出し、アストロサイトを活性化するには、ドーパミンを適度に放出する活動、いわゆる「ドパ活」が効果的である。

健康的なドパ活の柱は、自身の意志に基づく「行動」だ。特に有効なのは以下の2つ。
新奇体験: 普段の自分なら決してしないような、予測不可能な体験を取り入れること。例えば、知らない場所へ一人旅に出る、近所の普段通らない道を選んで帰るなど。これらはノルアドレナリンの分泌を促し、脳のアストロサイトを最適化する。
情動喚起: ドキドキ、ワクワクするような体験を意識的に作り出すこと。例えば、ボルダリングのような適度な緊張感を伴う運動は、意識を「今ここ」に集中させ、過去の後悔や未来の不安といった反芻思考を断ち切る効果がある。心拍数が上がるような運動もこれに含まれる。
社会的な活動:社会的な活動や公共的な活動をすることによって愛情ホルモンとも言われる「オキシトシン」が分泌され、アストロサイトが活性化される。
ただし、ドーパミンを増やす活動には注意が必要だ。アルコールやニコチン、ギャンブルといった依存性の高いものは、ドーパミンの過剰な放出を引き起こし、脳のブレーキ機能が効きにくい疲労状態では、制御を失いやすい。特にカフェイン摂取後、ドーパミン受容体が活性化した状態でアルコールを摂取すると、快感が過剰に増幅され、飲酒量がコントロールできなくなるリスクがあるため、避けるべきだ。
運動や旅行が難しい場合でも、「To-Doリスト」を細かく作成し、「カーテンを開ける」「皿を洗う」といった小さなタスクを完了させるたびにチェックすることで、脳に「自分で計画通りにできている」という自己コントロール感を与え、達成感を促す。これは脳を「騙し」、ドーパミン放出を促す簡単なドパ活だ。
Q. 五月病や燃え尽き症候群は脳の仕組みと関係しているのか?
五月病や燃え尽き症候群、さらには失恋による精神的落ち込みも、ドーパミンが関係する脳の生理的な仕組みによって説明できる。新生活の始まりや情熱的な恋愛など、一時的にドーパミンが急激に多量に放出される期間は、脳は興奮状態にある。
しかし、このドーパミンの急増に適応するため、脳はドーパミンを受け取る側の受容体の数を一時的に減らしてバランスを取ろうとする。その後、刺激が落ち着き、ドーパミン放出が通常レベルに戻っても、受容体が減少しているため、脳は物足りなさを感じ、意欲の低下や抑うつ状態、いわゆる「離脱症状」を呈してしまうのだ。
この種の不調は、受容体の数が徐々に元のレベルに戻るにつれて、自然と改善することが多い。普段から、ドーパミンの放出を急激に上げ下げせず、適度なドパ活を通じて緩やかに維持することが、これらの急激な精神的落ち込みを防ぐ上で極めて重要である。
Q. 脳のパフォーマンスを高めるために、食事で意識すべきことはあるか?
脳のパフォーマンスを支える根本的な要素の一つに、脳細胞を構成する「膜」の質がある。神経伝達物質の受容体はこの膜の表面に存在し、膜が柔軟であるほどその機能が最適に保たれる。この脳細胞の膜は、私たちが食事で摂取する「脂肪酸」から作られるため、食生活は脳機能に直結する重要な要素である。

ジャンクフードに多く含まれる飽和脂肪酸などは、細胞膜を硬くし、受容体の働きを妨げる可能性が指摘されている。その代わりに意識して摂取したいのが、「不飽和脂肪酸」、特に魚の油に含まれるDHAやEPAだ。これらは細胞膜の柔軟性を高め、脳の健全な機能維持に貢献する。魚油の摂取は直接的に脳に働きかけるわけではないが、日頃からバランスの取れた摂取を心がけることで、脳の基礎体力を向上させることが期待できる。
日々の食事で魚を積極的に摂ることが理想だが、サプリメントの活用も有効な手段だ。大量摂取よりも、毎日少しずつ継続的に摂取することが重要であり、質の高い油を選ぶことが脳の健康を長期的に支えることにつながるだろう。
Q. 「腸活」は脳疲労の解消に役立つのか?
脳の疲れを癒やす上で、腸内環境を整える「腸活」が注目されている。幸福感をもたらすと言われる神経伝達物質「セロトニン」の約90%は、実は腸で生成されていることが分かっている。腸でつくられたセロトニンは直接脳に届かないが、その前駆体であるトリプトファンをセロトニンに変え、脳へ供給する役割を担っているのが腸内細菌だ。

セロトニンは単に「幸せホルモン」であるだけでなく、私たちの睡眠サイクルや食欲など、日々の生体リズムを調整する「リズムホルモン」としての側面も持つ。腸内細菌が活発に働く良好な腸内環境は、セロトニンの前駆体生成を促進し、結果として脳が適切なリズムを刻むためのサポートをする。これは脳疲労の解消だけでなく、日中の集中力向上や良質な睡眠にもつながる。
具体的な腸活として、発酵食品(ヨーグルト、納豆など)を積極的に食事に取り入れることが挙げられる。さらに、公共性のある活動に参加したり(愛情ホルモン「オキシトシン」放出)、趣味のコミュニティ(サードプレイス)を持つなど、社会的つながりを持つことも脳に良い影響を与える。サウナによる温冷刺激で自律神経を整えることも、ドーパミン放出を促すドパ活の一種だが、心臓への負担を考慮し、運動の方がより安全で持続可能なアプローチであると言えるだろう。