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大麻成分:THCとCBD
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2025年9月4日

世間を騒がせた新浪氏の辞任。大麻成分のTHCとCBDはどう違うのか、日本の法制度の現状はどうなっているのか。精神科医の松本俊彦氏が徹底解説。 <ゲスト> 松本俊彦|精神科医 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年佐賀医科大学卒業後、精神科医としてキャリアを重ねる...
THCとCBDの違いとは?大麻関連成分をめぐる法律と医療活用の現状
最近、ニュースでも話題になることの多い大麻(タイマー)関連成分。サントリー会長辞任の原因となった「THC」と、日本でも多くのショップで販売されている「CBD」の違いは何なのでしょうか?その医学的な特性から法規制、世界における合法化の状況まで、精神科医の松本俊彦氏に詳しく解説していただきました。

Q. THCとCBDの医学的な違いとは?
大麻(タイマーソウ)には120種類以上のカンナビノイドと呼ばれる成分が含まれています。その中で主要なものが「THC(テトラハイドロカンナビノール)」と「CBD(カンナビジオール)」です。

これらは人体への作用が大きく異なります。THCは主に中枢神経系に作用し、精神状態を変化させる「ハイ」な状態を引き起こす効果があります。一方、CBDは全身に分布する受容体に作用し、炎症を抑制したり免疫機能に好影響を与えたりすると言われています。
気分を変える効果という点では、THCの方がはるかに強力です。CBDは気分を変えるというよりも、リラクゼーション効果をもたらす傾向があります。「ハイ」になる作用はTHCによるものだと考えられています。
Q. 日本の法律ではTHCとCBDはどのように扱われているのか?
日本では2022年12月に新しい法律が施行され、CBD製品に含まれるTHC濃度が厳格に規定されました。オイルの場合は0.001%、グミや化粧品は0.0001%という厳しい基準が設けられています。
これは従来、日本で流通していたCBD製品(THC濃度約0.02%)と比べると20倍も厳しい規制です。国際的に見ても、アメリカでは0.3%、イギリスでは0.2%、さらに緩やかな国では1%未満という基準であり、日本の規制の厳しさが際立っています。
この背景には、THCが大麻の依存性や精神状態を変容させる主成分として麻薬に指定されていることがあります。また、大麻取締法の改正によって「使用罪」が新設されたことで、CBD製品の使用を言い訳にTHCの使用を隠す可能性を排除する意図もあるようです。
Q. THCは検査でどのように検出されるのか?
THCの尿検査は非常に特殊で、他の薬物と異なり長期間検出される特徴があります。例えば覚醒剤は早い人で2日、遅くても1週間程度で尿から検出されなくなりますが、THCは体内の脂肪組織に蓄積されるため、少なくとも1か月程度は尿から検出され続けます。
太っている人はさらに長く検出される可能性があり、自分は使用していなくても周囲の人が使用していた場合に微量が血中に移行する可能性も否定できません。
このような特性があるため、海外で使用して帰国した人や、過去に使用したことがある人が、日本で検査を受けるとTHCが検出されてしまうケースもあります。現在、大麻使用で逮捕された人は、科学捜査研究所での詳細な検査結果が出るまで長期間勾留されることもあり、3〜5ヶ月拘留されるケースも見られます。
Q. CBDにはどのような健康効果が期待されているのか?
日本で一般に流通しているCBD製品は医薬品ではないため、明確な効果効能を謳うことはできません。しかし、利用者からはリラックス効果や、肌荒れ・アトピーの改善、便通の改善、睡眠の質向上などの報告があります。

医療用の大麻由来医薬品については、例えばCBDを主成分とする「エピディオレックス」が難治性てんかんの発作コントロールに効果を示しています。また、海外では多発性硬化症の神経痛に対して「サティベックス」(THCとCBDが1:1)という薬も使用されています。
Q. THCの有害性はアルコールと比べてどうなのか?
薬物依存症の専門医としての臨床経験からすると、一般的にはアルコールの方が粗暴になったり運動能力が低下したりする効果は強いと考えられます。依存性という観点でもタバコの方が強い印象があります。
ただし、THCを高濃度で摂取した場合には錯乱状態が生じることも報告されています。純粋なTHCの致死量については明確な報告はなく、一説には致死量が存在しないという研究者もいます。アルコール、カフェイン、ニコチンには致死量があることを考えると、命を奪う危険性という点ではTHCにアドバンテージがあるかもしれません。
Q. 世界の大麻合法化の動きはどうなっているのか?
アメリカでは50州のうち24州とワシントンDCで合法化され、医療目的では38州で使用可能です。カナダ、ドイツ、タイなども近年合法化に踏み切りました。
しかし「合法化」といっても無制限に使用できるわけではありません。カナダでは未成年への販売を禁止し、使用可能な品種を限定して品質管理を徹底しています。ドイツでは密売人を駆逐するために国が販売権を管理し、営利目的の販売を禁止しています。

一方、タイの場合は観光客誘致を主目的に急速に合法化したため、品種の規制や税収確保が不十分で社会問題となっており、規制強化に向けた動きも出ています。合法化と一言で言っても、国によってアプローチが大きく異なります。
Q. 日本での大麻関連の法規制や議論はどうあるべきか?
日本では大麻使用者が少ないため、積極的に使用者を増やす政策は必要ないでしょう。しかし、現行の規制や罰則が使用の害に比べて過剰ではないかという問題があります。
特に海外留学経験者や優秀な人材が、一度の使用で人生を棒に振るような事態になっています。大学生などが実名報道されることで、デジタル社会では数十年にわたって「デジタルタトゥー」として影響を受け、アパートが借りられない、就職できないといった事態につながっています。
人体への害に比べて刑罰が重すぎるのではないかという懸念があります。グローバルな人材育成が国策として推進される中で、海外での研究コミュニティに属していた人が帰国後に活躍の場を失うことは、日本全体の損失になる可能性もあります。
大麻関連の物質に対する社会の見方をより冷静で科学的な視点から考え直す必要があるのではないでしょうか。