
注目の東南アジア経済:期待の国はここだ
東南アジア経済の今後:成長する国と直面する課題
今後の経済成長が期待される東南アジア。人口ボーナス期を迎える国がある一方で、少子高齢化が進み成長が鈍化する国もある。専門家に東南アジア経済の現状と今後の見通しについて聞いた。

Q. 東南アジアで今後最も熱い国はどこですか?
インドネシアが最も期待できる国だろう。域内最大の2億3,000万人の人口を抱え、平均年齢も20代後半と若い。人口増加が中長期的に期待できる点で潜在力は高い。経済的にも政治的にも東南アジアの中心であり続けるだろう。
かつては経済的にタイが中心的存在だったが、タイは人口ボーナス期が終わり、少子高齢化が進行している。製造業を中心とした成長モデルの実現も難しくなっている。一人当たりGDPが1万ドルに達し「中所得国の罠」に陥りつつある。政治的にも不安定で、GDPの回復もコロナ禍からの戻りが東南アジア諸国の中で最も弱い。
Q. インドネシアはどのような産業が伸びる可能性がありますか?
近年は製造業を中心に発展させてきた。鉱物資源が豊富なことも強みだ。ジョコ・ウィドド前政権では、鉱物資源の二次産業化を推進した。単に資源を輸出するだけでなく、国内で加工して製品化してから輸出する政策を取り、特にニッケルでは成功している。

EVバッテリー分野では世界的な需要の高まりもあり、川上から川下までの製造業と国内メーカーの育成に余地がある。国内マーケットも大きい。
ただし、インドネシアは1万3,000以上の島々からなる国であり、産業の集積化が難しい。ジャワ島が経済の中心だが、西部では過激派が活動するなど治安の問題もある。首都機能の移転計画も進行中だが、完全移転には課題も多い。
Q. フィリピンの成長可能性はどうですか?
フィリピンも1億人を超える人口に平均年齢は20代中盤と若く、伸び代はある。南部のミンダナオ問題も表面的には収束し、治安面での問題も落ち着いている。

しかし、人口の多さが貧困の原因となっている面もある。国民の多くがキリスト教徒で出生抑制に消極的だ。また人口の約1割が海外で働く移民労働者で、GDPの1割相当が彼らからの送金だ。国内の産業や雇用機会が十分育っていない。
近年は半導体などの電子デバイス産業が育ちつつあるが、交通渋滞や電力インフラなど課題も多い。
Q. 日本企業と東南アジアの関係はどうなっていますか?
これまで日本車が東南アジアで強い競争力を持っていたが、近年はEVへのシフトが進む中で中国メーカーが台頭している。中国メーカーは東南アジアでも工場を建設し始めている。
日本メーカーは1960〜70年代からタイなど東南アジアに進出し、系列の部品メーカーも含めて産業の裾野を広げてきた。一方、中国メーカーは主要部品のほとんどを中国国内で生産し、現地では組み立てだけを行うケースが多い。
このような状況で、東南アジア諸国の製造業の空洞化が進む可能性がある。米中摩擦により各国からアメリカへの輸出が難しくなる一方、中国からの輸入は増え続けており、製造業の立ち位置が厳しくなっている。
最近ではトヨタも中国から部品を調達するなど、サプライチェーンの再編が始まっている。EVに関しては中国国内の普及が急速に進み、技術面でもコスト面でも優位性を持つようになっている。
Q. 東南アジアの不動産市場はどうなっていますか?
東南アジアへの移住を考える日本人の中には、子どもの教育環境を重視して移住する人が増えている。シンガポールは物価が高いため、隣接するマレーシアのジョホールバルやタイなどが人気だ。

不動産開発は盛んに行われているが、日本と東南アジアでは不動産に対する考え方が異なる。例えばフィリピンは大家族主義で大きな住居が好まれる。日本のようなワンルームマンションの需要は限られる可能性がある。
人口が増えるから不動産需要も増えるという単純な発想ではなく、現地の社会文化的背景や実際のニーズを理解することが重要だ。
Q. 東南アジア全体の今後の見通しは?
米中対立により板挟みになる機会が増えている。ASEAN(東南アジア諸国連合)は伝統的に「ASEAN中心性」を重視してきたが、米中との距離感によって各国の立場が分かれ、結束が弱まる可能性もある。
東南アジアは近年の世界経済の成長原動力だったが、これが維持できるか、あるいは米中の板挟みの中で弱体化していくかは重要な分岐点だ。
日本としては安全保障面ではアメリカとの関係を重視しつつも、経済面では中国との関係も維持する必要がある。その中で東南アジアとの関係をどう再構築していくかが課題となる。
ASEANの枠組みは、アメリカや中国との交渉においても重要な意味を持つ。各国がバラバラに交渉するよりも、塊になった方が有利だと再認識される可能性もある。CPTPP(包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(地域的な包括的経済連携)といった枠組みを通じた交渉の重要性が増している。
