
町田浩樹に聞く、今後のキャリア
サッカー選手の"頭の良さ"とは?町田浩樹が考える、規律の重要性と学問との両立
サッカー選手にとって「頭の良さ」とは何か。欧州でプレーする町田浩樹選手は、大学の通信課程を卒業しながらプロとして活躍。規律の大切さから監督との関係性、キャリアプランまで多岐にわたる考えを語った。

Q. プロ選手として活躍しながら、通信課程を卒業できた理由は?
大学の通信課程は、自分で全てやらなければならない点が最も大変だった。特に学期末のテストがプレシーズンのキャンプと重なった時期は苦労した。宮崎でキャンプで疲れ切った後にレポートを書くのは本当に大変だった。普通に大学に通う場合は友達と協力できるが、通信だと全て自分でやらなければならない。
Q. 続けられた理由は?どんな授業が面白かった?
自分にとって面白い授業があったから続けられた。特に体の使い方に関する「神経制御論」や現代芸術論など、自分が知らない分野を勉強できたのが良かった。身体に関する学問や心理学は自分のプレイにも繋がるので、特に興味を持って取り組めた。自分の好奇心が向く分野だったので楽しく学べた。一方で、建築などの授業は自分の興味が向かなかったため難しく感じた。
Q. サッカーと学問の距離は、日本と欧州ではどちらが近い?
部活と学業を両立するシステムは、世界的に見ても日本とアメリカ、カナダ、韓国くらいにしかない珍しいもの。

韓国も最近はKリーグが優先になってきて部活組が減っている。ヨーロッパではトーマス・ミュラーの例のように、大学に行くかバイエルン・ミュンヘンのユースに行くか、どちらかを選ばなければならない「オール・オア・ナッシング」の状況。両方は選べない。
Q. プロのサッカー選手は学ぶべきだと思う?
サッカーしかやってこなかったサッカー選手ばかりだと、それはどうなのかと思う。最近のサッカー選手は昔と比べて頭が良くなっている印象。ある代理人の話では、「東大を目指すか日本代表を目指すか」という選択をするような、運動神経の良い家庭が増えているとのこと。
Q. 後輩に通信課程を勧めることはある?
特に勧めはしない。本当に大変だから。結局続くかどうかは自分次第。自分の場合は好奇心が旺盛で、新しいことや面白いと思える分野があったから続けられた。それは性格の問題だと思う。
Q. クラブチームでは戦術的にどれくらい覚えることがある?
覚えることは確かにある。特にユニオンでは毎年監督が他クラブに引き抜かれるため、一から新しい戦術を覚え直さなければならない。プレシーズン中は、ホテルに帰ってからも頭の中で整理する必要がある。監督から口うるさく言われることも多い。資料化はされず、主に映像でのフィードバックが中心だ。
Q. 監督が変わると大変なのはどういう点?
前の監督はレッドブル出身で、オールコートマンツーマンというかハイプレスを好む監督だった。一方、現在の監督はビルドアップに重点を置き、守備も引いたブロックで守るスタイル。そこは大きく変わった点だ。今シーズンの監督は37歳で初めてのプロ監督としてのシーズンだったが、人間性も素晴らしい人だった。
Q. 監督の人間性の良さを感じたエピソードは?
今シーズン、コンディションを崩して出られない時期が1カ月ほどあった。その時に監督は常にコミュニケーションを取ってくれて、「全然気にすることない」と声をかけてくれた。監督からの信頼を感じられたのが大きい。信頼とは積み重ねだと思うが、自分が必要とされていることを素直に伝えてくれることが一番大事だと感じた。
Q. チーム内の規律はどう保たれている?
以前は遅刻などに対して罰金だけだったが、現在の監督になってからは試合に使わない、メンバーにも入れないといった厳しい対応になった。
その結果、チームの規律に対する意識が大きく変わった。
去年のシーズンはレギュラーリーグで勝ち点20差でトップだったにもかかわらず、プレーオフで4連敗して優勝を逃した。最後の緩さは規律の乱れから生じるものだと実感した。今シーズンはタイトルを獲得できたが、その理由の一つはチームの団結力にある。
Q. 規律が守られることでチームにどんな変化が?
試合に出ていない選手も出ている選手をサポートするようになった。心の中で悔しさを持つのは当然だが、見た目での団結力が今年は特に感じられた。

規律を守らない選手対監督という構図よりも、規律を守らない選手対守っている選手という構図になりがちだ。規律を守っている選手を守る意味でも、規律は間違いなく大事だと思う。
Q. ブライトンとユニオンの関係とデータ活用について
ブライトンとユニオンの関係はすごいと思う。優勝した翌日のパーティーにブライトンのオーナーであるトニー・ブルームが来ていて、少し話す機会もあった。彼らは選手を見る目があり、カオル、シモン・アディングラ、ボニフェス、アムラなど、優秀な選手を次々と発掘している。
聞いた話では、選手をスカウトする際に340ページものレポートを作成してプレゼンするという。自分もユニオンのスカウトから「日本人の誰かを獲得したい」と相談されたことがあるが、その際「結婚しているのか」「趣味は何か」など細かいところまで質問された。キャラクターのスカウティングも重視しているようだ。
Q. 今後のキャリアプランは?
サッカー選手としては、できるだけ高いレベルで長くプレーしたい。最終的にはプレミアリーグでプレーすることが目標。ただ、チャンピオンズリーグなどのヨーロッパの大会にも出場したいという思いもある。
現役選手としての価値がある今のうちに、いろんな人と会って様々な分野に触れておくことも大事だと考えている。引退すると価値がガクンと下がるので、需要がある時にいろんな分野の人と会うことが重要だ。
サッカー留学の会社の創設に携わったり、ファンタジースポーツのシステムを構築している会社に投資したりしている。ヨーロッパと日本の最大の違いの一つはスポーツベッティングの存在で、ヨーロッパではそこで集まったお金が施設やチームに還元されるエコシステムがある。日本にはそれがないので、ファンタジースポーツを通じてそのきっかけになればと思っている。

スポーツで稼いだお金はスポーツに還元するのが大事だと考えている。世界を見ると、フェデラー、セレナ・ウィリアムス、タイガー・ウッズ、ステファン・カリーなど、スポーツ選手として成功した人たちが投資を通じてスポーツに貢献している。日本では投資に悪いイメージがまだあるが、本田圭佑さんなどが変えてくれているかもしれない。
