
デンマーク流の教育・恋愛・婚姻・子育て
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2025年5月8日
世界最高レベルの生産性を誇るデンマーク。その効率的な働き方を日本は真似ることができるのか?幸福な生活を送るためのヒントは何か?デンマーク研究家の針貝有佳氏と、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏に対話してもらった。 <ゲスト> 針貝有佳|デンマーク文化研究科 早稲田大学大学院にてデンマークの労働市場政...
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デンマークのフレキシブルな働き方と生き方:「やってみなはれ」精神の秘密
リラックスした働き方で有名なデンマークの文化に、日本人が学べることはあるのだろうか。デンマーク研究家の針貝有佳氏と雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が語る「やってみなはれ」精神と自由な生き方の魅力を紹介する。


デンマーク人は「落第」という概念を持たない?
Q: デンマークの教育制度では落第が多いと聞きましたが、それをどう捉えているのでしょうか?
デンマークでは落第という概念自体がありません。現地の人たちは「自分のペースに合わせて1年送らせた方がいい」と考えるのです。幼稚園から小学校に上がる時も、小中学校から高校に上がる時も、1年ずつのギャップが多くあります。しかしそれを「遅れている」とは考えず、「自分のためにこのペースがいい」「今自分にはこの時間が必要」という考え方をします。
欧州の25歳未満の若年層失業率はフランスやイタリアで20〜30%、OECD平均でも20%弱あるのに対し、デンマークは10%を切っています。日本や韓国と並ぶ低さです。
デンマークの職業訓練システムの特徴とは?
Q: デンマークの若者が就職しやすい理由は何ですか?
デンマークにはジワルシステムという職業訓練システムがあります。これは高校卒業後、職業訓練校に1/3の時間を通い、残りの2/3は企業実習として過ごします。
高校生は卒業年になると「トレイン」に行き、訓練生の求人広告を見て応募します。面接を受け、エントリーシートを書き、合格すると職業訓練生として認められます。この仕組みは新卒一括採用と似ています。
訓練生は2〜3年間企業で働きますが、態度が悪い人や仕事ができない人は弾かれ、最終的に残るのは7割程度です。その7割はほぼ大学に進み、卒業後はその企業に就職することが多いのです。

「やってみなはれ」精神が日常に根付いている
Q: デンマーク人の「やってみなはれ」精神とは具体的にどのようなものですか?
デンマーク人は基本的に「とりあえずやってみよう、うまくいかなかったらその時に考えよう」という思考を持っています。これは仕事だけでなく、生活全般に通じる考え方です。
針貝氏によれば、デンマーク人は「準備している時間の間に状況は変わっていくかもしれない」と考え、変化の激しい時代にはこの考え方が合っていると感じています。これはまさにベンチャー的な思考と言えるでしょう。
デンマーク人の前向きな姿勢
自分のペースを大切にする社会
Q: 日本とデンマークの働き方の大きな違いは何ですか?
デンマークでは本人の意思が尊重されます。例えば人事異動も本人の意思がなければ従うという形です。自分の意思が通れば元気が出るという考え方です。
一方、日本では「お前は何がやりたいんだ」と言われても、そもそも自主的に考える訓練がされていない場合もあります。また、指示された方が働きやすいと感じる日本人も多く、マイクロマネジメントで何をやるか決まっている方が働きやすい人もいます。
これは日本とデンマークの組織の成り立ち方の違いかもしれません。デンマークではメンバー個人の意思が先にあって組織ができています。

失敗を恐れないのはなぜ?
Q: なぜデンマーク人は失敗を恐れないのですか?
針貝氏によれば、デンマーク人は非常に楽観的で、危機的状況でも「なんとかなる」「なんとかする」という勢いがあります。
海老原氏は「リーンスタートアップ」の考え方に近いと指摘します。プロジェクトを進める際、ウォーターフォール型(段階的に完璧に進める)ではなく、ゴールを決めてから様々な道筋を試し、うまくいった部分を繋いでいく方法です。
「色々最初にばっと試して、うまくいく線を見つける。この線が間違っていたらそこから先をやる意味がない」という考え方は、準備に時間をかけてもダメになる可能性も含めて、最初からどんどん試してみるというアプローチです。
プライベートも「やってみなはれ」
Q: 仕事以外の面でも「やってみなはれ」精神は表れていますか?
デンマークでは恋愛や結婚においても「やってみなはれ」精神が表れています。同棲して結婚せずに子供を持つカップルも多く、未婚の人で同棲している率は4割ほどです。
日本では「会社に入る」「家庭に入る」という感覚があり、結婚したらずっと一緒にいなければいけない、就職したらその会社でしばらく働くといった固定観念があります。しかしデンマークでは「ダメだったらやめればいい」という考え方が一般的で、これが行動の自由度を高めています。
また、デンマークではDIYが非常に人気です。やり方がわからなくても調べて自分で試し、うまくいかなくても自分でできたという満足感を大切にします。
子育ても社会全体で
Q: デンマークの子育て環境はどのようなものですか?
デンマークでは子供をとても大切にする文化があります。「子供が欲しい」というカルチャーが社会に根付いており、子供を育てることは福祉国家の継続のためにも重要と考えられています。
経済状況に関わらず子供を持てるという点も大きく、失業していても子供を持つことに不安を感じにくい環境です。これは教育費の心配が少ないことも関係しています。
電車の中で大きなベビーカーを持っていても、みんながにこやかに笑い、「頑張っているね」「かわいいね」という温かい空気感があります。子供を家でしつけるというより、社会全体で育てているという感覚があるのです。
日本に取り入れられること
Q: デンマークの良さを日本に取り入れるとしたら、どのようなことから始められますか?
まず考え方として「やってみなはれ」精神を取り入れることが考えられます。失敗を恐れず、とりあえずやってみて、ダメなら修正すればいいという考え方です。
また、個人の意思や興味を尊重し、それに合わせた仕事や生活スタイルを選択できる柔軟性も重要です。組織のために個人が我慢するのではなく、個人が活き活きと活動できる仕組みを考えることが大切でしょう。
ただし、デンマークの高い社会保障は75%の国民負担率に支えられているため、いいとこ取りはできません。何を優先するかを社会全体で考える必要があります。
ワークライフバランスを重視する文化
キャリア成功のための考え方
Q: デンマーク的な考え方でキャリアを成功させるコツはありますか?
ハーバード大学のクランボルツ教授の「計画的偶発性」という考え方が参考になります。人生は思った通りにはならないため、「やってみながら」進むことが大切です。
その際に必要な3つの要素は「好奇心」「柔軟性」「冒険心」です。これらはまさにデンマークの「やってみなはれ」精神に通じるものです。
準備に何時間もかけるよりも、「やってみてダメなら直せばいい」という考え方の方が、現代の変化の激しい時代には適しているのかもしれません。

