PIVOT TALK HEALTH
医療×統計 健康な人の共通点
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2025年4月3日

日本人にとって健康は最も重要な幸福の要素だ。しかし疫学のエキスパート・大平哲也氏は「健康は”べき論”では手に入らない」と語る。小さな習慣から健康寿命を伸ばすにはどうしたらいいのか?60年分のデータから日本の健康を徹底解説。
1万人を60年間追跡調査で分かった!「健康寿命」を延ばすための秘訣
長い人生、健康に過ごせることが何よりの幸せ。しかし、意外と知られていないのが「20代から健康寿命が決まり始める」という事実。今回は疫学のエキスパート・大平哲也氏に「健康な人の共通点」について聞いた。

Q: 疫学とは何ですか?
疫学とは人を対象として、たくさんの人の中で健康に関係する情報を得る学問です。動物実験ではなく人間から直接データを集め、最終的に人の健康のために役立てます。医療や治療に関しても、この疫学というデータがないと薬も作れないし、ガイドラインも作れません。
疫学の始まりは1850年代、イギリスのジョン・スノーが手がけたコレラの調査です。彼はロンドンでコレラが流行した際、亡くなった人の家を地図上に印をつけたところ、ある1カ所に集中していることが分かりました。そこには井戸があり、その井戸を閉じたところコレラの発生が減少。それまで空気感染すると思われていたコレラが水を介して感染することを初めて証明したのです。
Q: 生活習慣病はどれくらい予防できるのですか?
生活習慣病は大体5割から8割ぐらい予防できると言われています。遺伝的要因だけでなく、日常の習慣が大きく影響するのです。

Q: 日本人の健康状態はどうなっていますか?
日本人は世界的に見ても長寿ですが、問題は健康寿命と平均寿命の差です。男性では健康寿命が本当の寿命よりも9年短く、女性では12年以上短いのが現状です。つまり、最後の約10年間は健康でない生活を送ることになります。
日本人にとって幸福の最大の要因は「健康であること」です。若いうちから生涯幸せになりたいと思うなら、健康を維持することがとても大切です。
Q: 若いうちからできる健康対策はありますか?
実は20代ごろから将来、健康寿命が短くなるかどうかの要因が出てきています。例えば女性の場合、将来的に骨粗しょう症になるリスクは20代の骨密度がピークなので、この時期に骨密度をいかに高くしておくかで将来の骨折リスクが決まってきます。
特に骨密度を上げるには「重力を感じる運動」が効果的です。歩く、走るなど、しっかり体に刺激を与える運動が理想的です。運動は骨折リスクを6〜7割ほど予防できるというデータもあります。
Q: 健康寿命を短くする最大の理由は何ですか?
健康寿命を短くする最大の理由は高血圧です。高血圧は脳卒中の最大の原因であり、血圧を正常にすれば脳卒中の4割が予防できます。また、現在は認知症が日本人の健康寿命を短くする主要因となっていますが、認知症も血圧が高いとなりやすいというデータがあります。
日本人の血圧レベルは戦後から徐々に下がってきましたが、ここ10年ほどはほぼ変わっていない状態です。高血圧の主な原因は塩分摂取量の多さです。波の島に住む人々は塩分摂取量が少ないため、将来的に高血圧になる人はほとんどいません。
若いうちから薄味に慣れることが重要で、小学校や中学校の頃から薄味にしていかないと、長期的な高血圧予防は難しくなります。
Q: 健康のために実践すべき基本的なことは何ですか?
健康的な生活のために重要なのは次の5つです:
1. タバコは一切吸わない
2. 適正体重を維持する
3. 塩分を減らし、カルシウムを増やした和食を取る
4. 座っている時間を減らして適度な有酸素運動をする
5. 肥満を解消する
これらは多くの人が「分かっているけどできていない」ことが多いですが、小さな習慣の積み重ねで実践できます。

Q: 日本食の良さとは何ですか?
世界7カ国の調査で、心筋梗塞が起こりにくい食事は「ギリシャ(地中海式ダイエット)」と「日本食」でした。しかし、日本食の欠点は塩分が多いという点です。日本人は心筋梗塞は少ないけれど脳卒中が多いのはそのためです。
カルシウムを多くして塩分を減らした日本食が、地中海式ダイエットと同様に「最強の食事」と言えます。日本人は昔から心筋梗塞が少なかったのは和食の効果です。

Q: 塩分を減らすコツは何ですか?
塩分を減らすには「だし」の活用が効果的です。だしをたくさん使うと塩分量が少なくても十分味が濃く感じられます。例えば、だしをたっぷり使った味噌汁と、だしを使わない味噌汁では、同じ塩分量でもだしを使った方が味が濃く感じられるのです。
また、国レベルでの取り組みも重要です。イギリスでは10年かけて食パンの塩分量を誰も気づかないように少しずつ減らし、最終的に20%削減することに成功しました。日本の福島県の一部スーパーでも、惣菜の塩分量を徐々に減らしていったところ、売上は減らず、味もちょうどいいと評価されました。
外食する時は塩分量を確認し、減塩醤油や減塩味噌を積極的に活用することも有効です。厚生労働省は男性は7.5g、女性は6.5g以下の塩分摂取を推奨していますが、実際には男性は11g近く、女性は9g以上摂取している現状があります。
Q: コレステロール値を下げるにはどうしたらいいですか?
日本人のLDL(悪玉)コレステロールが高い主な原因は「肉の脂身」です。動物性脂肪(肉の脂身やバター類)を減らすことが効果的です。魚卵は直接的にLDLコレステロールを上げることはありません。
昔、日本人は世界で最もコレステロール値が低い国民でしたが、西洋化に伴い1970〜80年代に急激に上昇。現在はアメリカ人とほぼ変わらないコレステロール値になっています。
Q: 朝食は健康にどう影響しますか?
朝食を食べないことは、将来的に肥満になりやすく、糖尿病になりやすいというデータが日本人でも確認されています。これは食べない分、昼食や夕食を多めに食べてしまうことで、一度に大量に食べることになり、すい臓に負担がかかって糖尿病リスクが高まるためです。
朝食におすすめなのは、タンパク質をしっかり摂取できる食事です。納豆、卵、サバ缶などがいいでしょう。魚は干物だと塩分が多いので注意が必要です。
Q: 健康を測定することにはどんな効果がありますか?
測定するだけでも健康になる効果があります。例えば毎日血圧を測っていると、1年後の血圧値が下がるというデータがあります。測ることで自分の状態を把握し、「昨日お酒を飲みすぎたかな」などと意識するようになり、自然と健康的な習慣が身につくのです。
体重計と同じ原理で、可視化することで無意識のうちに改善されていきます。
また、健康診断では空腹時の血糖値や中性脂肪を測りますが、実は食後の血糖値や中性脂肪値の方が、空腹時の値よりも心筋梗塞リスクをより正確に予測できるというデータもあります。
Q: 人間関係と健康にはどんな関係がありますか?
男性は妻と一緒にいる時に最も笑うという調査結果があります。健康状態を長く保ちたいなら、配偶者を大切にすることが大事です。
また、「ありがとう」と言う習慣のある人は健康度が高いことも分かっています。感謝される側だけでなく、感謝を表現する側も健康になるのです。
Q: 適切な運動量はどれくらいですか?
激しすぎる運動は健康寿命を伸ばさないことが分かっています。理想的なのは週150分の有酸素運動です。朝の運動は体重が減りやすく、健康にも良いというデータが多いようです。
健康な生活には強制力も必要です。例えば住む環境を歩く機会が多い場所に選んだり、スーパーでもなるべく遠い駐車スペースに停めて歩く量を増やすなど、日常生活の中で小さな工夫をすることが大切です。