
くら寿司 創業社長が明かすグローバル戦略
絶対に驚く くら寿司の"革新性" 海外店舗で日本より厳しい衛生基準、最先端技術で成功
世界に広がる日本の食文化の中でも、回転寿司は特に人気だ。「くら寿司」は国内だけでなく、米国、中国、台湾などグローバルに展開し、2019年には米国で上場も果たした。大阪・関西万博への出店も決まり、世界に向けた新たな挑戦を続けている。くら寿司の創業者・田中邦彦社長に、成功の秘訣や今後の展望について聞いた。

Q: くら寿司のグローバル旗艦店はどんなコンセプト?
グローバル旗艦店は、ブランド力を向上させるために「もう一段高級な感じの」店舗として開発しました。回転寿司に「安い・悪い」というイメージがついてしまうと困るので、デザイナーの佐藤可士和さんに依頼してロゴも刷新しました。
店舗はエンターテインメント性があり、自動的に天ぷらが出てくるシステムなど、体験としても面白い仕掛けがたくさんあります。寿司はもう世界的な食べ物になったので、そこに付加価値をつけて、持続可能なレストランを目指しています。
Q: くら寿司はどのようなグローバル戦略で展開していますか?
私たちは「回転寿司」という呼び方を変えて「回転レストラン」というコンセプトで展開しています。先進国では人件費が上がり、物価も上昇し、働く人も不足してくる。そういった課題を補うのが、私たちが開発してきた最先端のプラットフォームです。
寿司だけでなく、様々な商品を提供したいと考えています。日本ではすでにうどん、ラーメン、スパゲッティも提供していますが、それぞれの商品を専門店に負けないレベルで提供することに自信を持っています。アメリカでは特にラーメンが人気で、どの商品も単品で比べた時に一流と言われる専門店に負けない自信があります。
Q: アメリカ全土で展開できているのは、他のチェーンとどう違うからですか?
他のレストランではできないサービスを提供できているからです。例えば、レーン上を商品が流れてくるというシステムは魅力的ですが、これを続けられているのは私たちだけです。
他のチェーンでも迷惑行為が問題になり、レーンを廃止した店もありますが、私たちは2011年に「寿司カバー」(商品カバー)を導入し、特許も取得しました。事業における戦略戦術を大事にし、差別化を図っています。現在、特許件数は60件、申請中が100件、商標は600件持っています。このような知的財産がバックヤードにあることが強みです。

Q: アメリカでの衛生基準は日本と違いますか?
アメリカの衛生基準は非常に厳しいです。例えば、寿司カバーを70度の温度で洗わなければならず、乾かす際も手で拭いてはいけません。日本の基準は実は甘く、むしろアメリカの方が当然の対応を求めています。
Q: メニューは各国で変えていますか?
ローカライゼーションは当然重要です。日本で評価の高いメニューが現地で全く受け入れられないこともあります。定期的に日本の調理責任者がアメリカに行き、現地スタッフと意見交換しています。
アメリカではロール寿司、特にカリフォルニアロールなどが主力商品になっています。これは日本ではほとんど提供していないメニューです。現地のニーズを掴んで商品化することが重要です。価格設定も異なり、アメリカでは1皿3.5ドル(約500円)で提供していますが、これは現地の回転寿司の中ではまだ安い方です。

Q: 大阪・関西万博ではどのような出店を予定していますか?
1970年の大阪万博で回転寿司が日本に広まったという歴史があります。当時、大阪の原六さんが出店して回転寿司を広げ、それから50年が経ちました。今では日本国内では「流すだけでは満足できないお客さんが増えてきた」ため、新しいパフォーマンスを考えています。
万博では世界に向けた新しい回転寿司の形を発信したいと考えています。70カ国の代表的な食べ物と寿司をセットにした「ハンズハンズ」という形で提供します。寿司だけでなく、各国の代表的な食べ物を日本の食文化と融合させる新しい形の回転寿司レストランになります。

Q: くら寿司は最先端技術を早くから導入していますが、どのような考えがあるのですか?
私は「文明とは機械である」と考えています。新しい機械が出たら必ず関心を持ち、世の中の変化をいかに早く取り入れられるかがビジネスの要点になります。
例えば、水回収システム、製造管理システム、携帯予約システム、タッチパネル注文などは全て業界初の取り組みでした。タッチパネル注文の前はインターホンを使用し、その後工場で使っていた図を区画分けした装置を導入し、最終的にディスプレイになりました。当初7インチの白黒ディスプレイは1台20万円もしましたが、今は5万円程度に下がっています。
QRコードの導入も同様です。最初は皿の裏にバーコードを付けていましたが、破れると読み取れないという問題がありました。次にQRコードを導入し、少々破れても読み取れるようになりました。技術革新により、以前は使えなかったものが使えるようになっています。
Q: 新しい技術はどのようにして導入しているのですか?
初期の頃は私自身がアイデアを出していましたが、今はDXチームという30人ほどのチームがあります。私自身は元々パソコンにも興味があり、初期のNEC PC-98を使って原価計算のアプリケーションを自分で作りました。
新しい機械や技術が出たら必ず関心を持ち、それが活用できるかどうかを検討することが大切です。世の中の変化がどう売上や利益に繋がるかを感知する能力が重要です。日本人は元々そういった感覚が優れていると思います。例えば落語の世界は、普通の人が見過ごすことを笑いに変える文化であり、そこから学ぶことも多いです。
私自身はスマホを1日3回ほど充電するほど頻繁に使い、常に新しい情報を収集しています。新聞も読みますが、様々な情報源から情報を得ることが大切です。

Q: サービス業としての大切なことは何ですか?
最近は利益や数値ばかりが先行しがちですが、サービス業で一番大切なのは「どういうサービスでどういう商品を出してお客さんに喜んでいただけるか」です。例えば、子供が入学した時や退院した時などに、お店でお祝いのメッセージを注文すると、千寿くんがパッと開いて「おめでとう」という演出をするプレゼントシステムなど、お客様に喜んでいただける工夫を常に考えています。
Q: 今後の展望を教えてください
寿司、回転寿司が世界で当たり前になりつつある現状は、日本が最高するチャンスだと思っています。これからもお客様が拍手するような様々なサービスを提供し、世界中、108カ国すべてにくら寿司があるような世界を作っていきたいです。
次世代の回転寿司は、毎日商品が変わり、常に美味しいものを提供できるレストランを目指しています。難しい挑戦ですが、そういった持続可能なレストランを作っていきたいと考えています。
