
マネジメントの100の技術:権限委譲と関与の技術
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2025年3月11日
キャリア採用の増加、価値観や文化の多様化などで、ますます難易度が増すマネジメントの仕事。そこで大切になるのが、マネジメントの技術だ。マネージャーの道標となる「マネジメントの100の型」を、EVeMの長村禎庸社長に聞いた。
「マネジメント100の型」技術を体得する 〜EVeM × PIVOT 共創ワークショップ〜
マネジメントの技術ってどうやって身につける?専門家が教える業務効率化の秘訣
マネジメントは感覚的なものではなく、具体的なスキルと体系化された技術の集合体だ。今回は「マネジメントの技術」をテーマに、EVeMの長村禎庸社長が語る現場で即実践できる効率的なマネジメント手法を紹介する。「物事は知っている、できるの2ステップあるが、マネジメントの場合は知っているという部分がすごく大きい」と長村社長は指摘する。何をどう管理すべきか、その基本を知ることで誰でもマネジメントの質を高められる可能性があるという。

Q: マネジメントの現場ではどんな悩みが多いですか?
最も多い悩みは、メンバーとの関わり方だ。年齢、能力、価値観が異なるメンバーに対してどう指示を出し、どのような距離感で接すればいいのか分からないというものだ。マイクロマネジメント(細かく管理)しすぎると文句を言われ、距離を置きすぎると「放置している」と思われる。
また、自分の業務が常に多すぎて処理しきれないという悩みも多い。マネジメントの問題は、従来は教養や心構えとして語られることが多く、具体的な「業務としてのマネジメント」が言語化されてこなかった点にある。「なにをどうすればいい」という明確な指針がないまま、各自が手探りで実践している状況だ。
Q: マネジメントの業務がなぜ体系化されてこなかったのですか?
特に大手企業では、体系化する必要性が薄かったことが背景にある。先輩からの指示や見様見真似の「徒弟制度」的なアプローチで何とかなっていた。しかし現代では、多様な働き方やリモートワークの浸透により、そうした「なんとなく」のマネジメントが機能しなくなってきている。
プロダクトマネジメントの分野では「バリュープロポジション」や「リーンキャンバス」といった具体的なフレームワークがあるのに、組織マネジメントにはそれに相当するものがなかった。これはおかしいという問題意識から、長村社長は約100の技術を体系化した。ポイントは、「知っていれば、誰でもできる」技術にすることだった。

Q: メンバーとの適切な関わり方をどう決めればいいですか?
メンバーとの関わり方を決める際に有効なのが「観音法身」と呼ばれる手法だ。これは、メンバーの「業務に対するスキル」と「業務の重要度」という2つの軸でマトリックスを作り、最適な関わり方を見つけるフレームワークだ。
1. スキル十分×重要度高: 定点確認(週1回の定例ミーティングで確認する程度)
2. スキル十分×重要度低: お任せ(報告だけでOK)
3. スキル不十分×重要度高: 共同ワーク(2日に1回くらいのペースで密に協働)
4. スキル不十分×重要度低: トライ(成長機会として任せる)
このマトリックスを使えば、何となく感覚で決めていた関わり方を客観的に整理できる。これにより、好き嫌いや気分によって関わり方が変わるという問題も防げる。

Q: 具体的にどう活用すればいいですか?
まず、各メンバーの業務について「業務重要度」と「メンバーのスキルレベル」を評価し、それぞれの業務に対する最適な関わり方を決める。例えば、外部ライターの開拓プロジェクトでスキル十分・重要度高のメンバーには「週1回の定例ミーティングで確認」という関わり方を設定する。
KPI分析でスキル不十分・重要度高のメンバーには「2日に1回の30分ワンオンワン」という密な関わり方を設定する。この表を作成するだけでも、メンバーとの関わり方が明確になり、マネジメントが効率化される。
なお、この分類はマネージャー自身の判断のためのものであり、必ずしもメンバーに共有する必要はない。ただし、特に「共同ワーク」のように密に関わる必要がある場合は、その理由を明確に伝えることが重要だ。「あなたの成功のために協力したい」というポジティブな意図を伝えれば、多くのメンバーは理解してくれる。

Q: 自分の業務を減らすにはどうすればいいですか?
マネージャーの業務は基本的に「決める」か「実行する」の2種類しかない。これらを効率化するためには、以下の観点から整理すると良い。
「決める」業務の場合
- 不可逆性: その決定は後戻りしにくいか?
- 事業インパクト: その決定は事業に大きな影響を与えるか?
「実行する」業務の場合
- 重要度: その業務はどれくらい重要か?
- 関与インパクト: 自分が関与することでどれだけ成果が変わるか?
例えば、メンバーの評価は不可逆性が高く、事業インパクトも高いので、自分が関与すべき業務となる。一方、あまり重要でない顧客との解約判断は、不可逆性は高いがインパクトが低いため、チームリーダーに任せることができる。
会議参加についても、「自分が出ることで会議の成果が変わるか」という観点で判断する。ただ情報共有のために参加しているだけなら、議事録で情報をキャッチアップする方が効率的だ。
Q: 業務を任せる際の注意点は?
業務を任せる際に陥りがちな罠が「合格点で任せる」という考え方だ。自分が120点でできる業務を80点しかできないメンバーに任せるのをためらうケースが多い。しかし、その業務に必要な「合格点」が80点なら、80点できるメンバーに任せても問題ない。特に自分がプレイヤーとして優秀だったマネージャーは、この罠に陥りやすい。
また、大きな責任を伴う業務を任せる際は「撤回条件」を明確にしておくことが重要だ。ただし、「売上がXX円に達しなければ撤回」といった明確なアウトプット条件は過度なプレッシャーになり、不正行為やバーンアウトの原因になる可能性がある。
代わりに、「成果が出なかった時にリカバリー方針を自分で立てられるか」「ユーザーとのやりとりが丁寧か」といった、成果を出すために必要な能力や行動を撤回条件にすると良い。これにより、過度なプレッシャーを与えることなく、うまく委任と管理ができる。
Q: プレイングマネージャーはどこまで現場に関わるべきですか?
プレイングマネージャーの関わり方については、「プレイングマネージャーはダメ」という極端な意見もあるが、それは間違いだ。特に不確実性が高く、イノベーションが必要な場面では、マネージャー自身が前面に出て推進することも必要になる。
重要なのは「自分が関与することでインパクトがあるか」という観点だ。自分の関与が大きな差を生む場面では積極的に関わり、そうでない場面では権限委譲することが効率的なマネジメントとなる。
例えば、創業者が成長した企業でも特定の分野で現場に関わることがあるが、そのインパクトが大きければ批判すべきことではない。むしろ、決断力のある人間が前に出ることで、不確実な状況での意思決定スピードを上げられる場合もある。
Q: 今回紹介した技術を使う際のポイントは?
これらのフレームワークは「型」として理解し、状況に応じて「型破り」することが重要だ。例えば、基本的には撤回条件は能力や行動ベースにすべきだが、特定のメンバーには明確なアウトプット条件の方が合う場合もある。
また、自分の判断だけで重要度や関与インパクトを評価すると、客観性を欠く可能性がある。自分の業務をよく知っている他者(右腕や同僚のマネージャー、HR担当者など)に相談し、客観的な視点を取り入れることが重要だ。
マネジメントの技術は、知っているだけで大きく改善できる部分が多い。これらの技術を身につけ、実践することで、マネージャー自身の負担軽減とチームの生産性向上を両立できるだろう。
