
中国から日本へ脱出。中国人富裕層のリアル
「中国から日本へ移住するルンリーの実態」舛友雄大ジャーナリストに聞く
日本に住む中国人が増加している。特に近年は「ルンリー」と呼ばれる新しいタイプの中国人が日本へ移住するケースが注目されている。この現象の背景や特徴について、中国・東南アジア専門ジャーナリストの舛友雄大氏に話を聞いた。

Q. 「ルンリー」とは何ですか?
中国語で「ルン」は「潤う」や「繁栄する」という意味がありますが、発音が英語の「Run(逃げる)」に似ていることから、「国外に脱出する」という意味合いも持つようになりました。「リー」は日本を意味する「日本」の「日」です。つまり「ルンリー」は「日本に脱出してくる中国人」を指します。
この言葉が流行し始めたのは2022年、上海ロックダウンがあった年です。厳しい制限に対する反発から、海外移住を希望する人が急増しました。

Q. ルンリーの規模はどのくらいですか?
コンサルティング会社のレポートによると、2023年だけで1万3500人が日本へ移住しています。中国側の非公式な推計では、世界全体では約800万人が中国から脱出していると言われています。
日本への移住者は、ここ6〜7年で累計数万人から10万人程度と見られています。数字だけ見ると少ないように感じますが、在日中国人の総数が約84万人であることを考えると、その影響力は非常に大きいです。
Q. これまでの中国人移民とルンリーは何が違うのですか?
私の取材に基づく仮説では、以下の点で違いがあります:
1. グローバルな視点を持っている:世界中の選択肢を比較検討した上で日本を選んでいます。
2. 出身地の違い:従来の中国人移民は遼寧省や東北地方などの出身者が多かったのに対し、現在は北京や上海などの大都市出身者が増えています。
3. 職業の変化:以前は留学生や実習生が中心でしたが、現在は企業家、エンジニア、メディア関係者、知識人、アーティストなど専門職の方々が増えています。
4. 居住地域の変化:従来は池袋や高田馬場などに集中していましたが、現在は港区や江東区の豊洲など、より高級な地域に住んでいます。
5. 資産規模:1億円から2億円程度の資産を持つ人が多いです。中国での不動産価格上昇で蓄えた資産を持っています。
6. 生活スタイル:以前は「サバイバル」モードでしたが、現在は「ライフスタイル」を楽しむ傾向にあります。
7. 言語能力:最近の移住者は日本語ができない人が多いです。30代以上の家族連れが多く、新しい言語習得が難しい傾向にあります。
8. 政治的立場:中国政府と距離を置く、あるいは反政府的な立場の人も増えています。

Q. なぜ日本が人気なのですか?
いくつかの理由があります:
1. 物価の安さ:円安の影響で日本の不動産や生活費が中国人にとって「白菜価格」と言われるほど安く感じられています。
2. 地理的な近さ:中国からわずか2〜3時間のフライトで行き来できるため、ビジネスパーソンにとって便利です。時差もほとんどないので、リモートワークもしやすいです。
3. ビザの取りやすさ:欧米諸国がゴールデンビザ(投資家ビザ)を縮小・廃止する傾向にある一方、日本は拡大・緩和の方向にあります。
4. 生活環境:中国人コミュニティが既に形成されており、日本語を学ばなくても中国語で生活できる環境があります。
5. 安全性:米中対立が続き、アメリカではアジアヘイトも発生している中、日本は比較的安全で人種差別も少ないと認識されています。

Q. 日本の教育へはどのような影響がありますか?
文京区の公立小学校(通称「3S1K」)に中国人家庭が集中して移住する現象が起きています。これは中国の「学区房」(名門校の学区内に住居を購入する習慣)の概念が日本にも持ち込まれているためです。
ある学年では中国人生徒の割合が10%を超えており、日本名を名乗っている生徒を含めるとさらに多いと思われます。この勢いが続けば、首都圏の中学受験にも中国人富裕層が参入してくると予想されます。
また、中学受験塾のサピックスにも中国人生徒が増加しており、教育熱心な中国人家庭の影響で日本の教育環境も変わる可能性があります。
Q. 典型的なルンリーはどのような人ですか?
例えば、28歳でAIスタートアップを経営している方がいます。アリペイやバイトダンスなどの中国IT大手で働き、ストックオプションなどで資産を築いた後、経済的自立(FIRE)を達成して日本に来ました。
また、エンジニアも増えています。以前は優秀な中国人エンジニアが日本に来ることは少なかったのですが、中国のスタートアップ環境が冷え込んでいるため、日本で新たな機会を求める人が増えています。
Q. ルンリーは中国政府との関係をどう維持していますか?
完全に移住するのではなく、時々中国に帰国する「準移民」的な人も多いです。そのような人たちは政治的発言を控え、目立たないようにしています。
日本にいても中国当局から監視されているという意識があり、反政府的な活動に参加すると中国から警告の電話がかかってくることもあります。場合によっては家族への脅しめいた言葉もあるため、難しい立場に置かれています。
Q. 日本社会にどのような影響を与えると予想されますか?
教育分野では、すでに中学受験などに影響が出始めています。また、医療や美容整形分野にも中国資本が流入しており、ゲーム業界にも中国からの投資が増えています。
将来的には、アメリカのように移民や移民2世が企業のCEOになるなど、社会的影響力を持つ可能性もあるでしょう。
