
住宅ローンは変動金利が正解か?【牧野知弘 vs.塩澤崇】
住宅ローンは本当に変動金利がいいのか?賢い資金計画のヒント
「変動金利が常に正解」というのは本当だろうか?マンション価格の高騰が続く中、どのように住宅ローンを組むべきか、専門家の意見を聞いた。


Q. 住宅ローンは変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきですか?
変動金利と固定金利の選択は、金利環境や個人の資金計画に大きく左右される。現在の日本では変動金利は固定金利より低く、金利差は1.4%まで広がっている。しかし、これが35年間続くとは限らない。
金利は経済環境によって変動し、過去には日銀の利上げが不動産バブル崩壊やリーマンショックの引き金になった例もある。金利の変動幅よりも、「宴の終わり」を感じた投資家の心理が市場を急変させることがある。
変動金利を選ぶ場合は、「金利が2〜3%上昇しても返済できる」という余裕を持つことが重要。ただし、多くの人は低金利に慣れて最大限借りてしまい、その余裕がないケースが多い。

Q. 低金利だからこそ変動金利を選び、余った資金で投資するという考え方はどうですか?
変動金利プラス積立投資の組み合わせは理論的には有効だが、実行するには条件がある。変動金利で借りると月々の返済額が少なくなるため、その差額を投資に回すという考え方だ。
しかし現実には、多くの人が借入可能額いっぱいまでローンを組むため、積立投資する余裕がない。また、子どもの教育費や臨時出費など、家計には予想外の支出が発生するものだ。
理想的には、年収の5倍程度までの借入額に抑え、金利が2%上昇しても耐えられる返済計画を立てることが重要。しかし、特に都心部では現実的でないケースも多い。

Q. 東京都内のマンションは高すぎて普通の人には手が届かなくなっているのでしょうか?
現在の東京都内の新築マンション価格は、東京都民の平均年収の約17.8倍にまで上昇している。年収の5倍までの借入れでは到底手が届かない。
中古マンション市場でも「4000万円の壁」があり、これを超えると一般の人にとって厳しい状況になる。年収800万円でようやく届く水準であり、東京都の平均年収が500万円台では難しい。
パワーカップルでも世帯年収1500万円で1億円の住宅ローンを借りると返済比率が高くなり危険。さらに、生活物価の上昇やマンションの管理費・修繕積立金の増加も家計を圧迫する。
Q. 高級物件を購入して価格上昇を狙う投資戦略についてはどう考えますか?
利便性や希少性の高い都心の物件は価値が下がりにくいという考えから、背伸びしてでも購入し、キャピタルゲインを狙う戦略もある。しかし、この考え方は平成バブル崩壊の原因の一つとなった。
不動産投資の黄金期は、物件価格が安く、家賃収入(インカムゲイン)とキャピタルゲインの両方が見込める時期だ。しかし現在は、物件価格の上昇に対して家賃収入が追いついておらず、投資利回りは3年前と比べて半分以下になっている。
このような状況では、投資家は「今後も価格が上がる」というキャピタルゲイン狙いになりがちだが、これは危険な兆候。日銀の利上げなど金融環境が変われば、市場は急変する可能性がある。
Q. 家賃上昇が物件価格をサポートするという見方はどうですか?
インフレにより家賃も上昇する可能性があるが、不動産価格の上昇と家賃上昇には時間差がある。契約更新のタイミングでしか家賃は上がらないため、1〜2年のタイムラグが生じる。
また、日本の借家法は借主を強く保護しており、大家が一方的に大幅な家賃値上げをすることは難しい。借主が値上げに同意しない場合、大家は裁判で争うしかなく、裁判官も借主寄りの判断をすることが多い。
最近では定期借家契約が増えているが、通常より契約期間が長く設定され、賃料も抑えられる傾向がある。このため、家賃上昇による投資収益の改善には時間がかかる。
Q. 結局、住宅ローンはどのように組むべきでしょうか?
住宅ローンを組む際は、以下の点を考慮すべきだ:
1. 年収倍率:理想的には年収の5倍まで、最大でも7倍までに借入額を抑える
2. 返済負担:金利が2%程度上昇しても耐えられる返済計画を立てる
3. 物件選び:無理して高額物件を購入するよりも、自分の収入に見合った物件を選ぶ
4. 金利タイプ:現状では変動金利が有利だが、将来の金利上昇リスクも考慮する
5. 余裕資金:変動金利で借りる場合は、差額を投資に回せる余裕を持つ
東京都心の物件を狙うなら、世帯年収2000万円以上が望ましい。それが難しい場合は、エリアを郊外に広げるなど、現実的な選択をすべきだ。
何より重要なのは、自分の収入や将来の見通しに合わせた無理のない計画を立てること。住宅ローンは長期間の負担になるため、慎重な判断が求められる。
