
データで検証。就職氷河期世代は本当に割を食ったのか?
就職氷河期世代は本当に「割を食っている」のか
景気回復とともに賃金上昇が進む日本だが、その恩恵は全世代に均等に行き渡っているわけではない。30代後半から50代前半の「就職氷河期世代」と呼ばれる世代は、現在も経済的に厳しい状況にあるという指摘がある。彼らは本当に「割を食っている」のか、そして今後はどうなるのか。第一生命経済研究所の永濱利廣氏が詳細なデータで解説する。

Q. 就職氷河期世代は本当に「割を食っている」のか?
「割を食っている」と言えます。象徴的なデータとして賃金プロファイル(年齢階層別の賃金)を見ると、1998年と2023年を比較した場合、若い世代の賃金は上昇していますが、40代から50代前半(就職氷河期世代)の賃金は低下しています。つま
り、若い時代は年功序列が強く、給料が低く抑えられ、ようやく給料が上がる年齢になった頃には成果主義へと制度が変わり、再び給料が上がりにくくなったという「時代の割を食った」状況です。


Q. 金融資産の蓄積状況はどうなっているのか?
就職氷河期世代、特に50代前半(第二次ベビーブーム世代)の金融資産の状況も厳しいです。2018年から2023年にかけて、50代の貯蓄額は減少しています。一方、40代や20代では貯蓄額が増加しており、世代間格差が見られます。
特に注目すべきは、近年の株高の恩恵をあまり受けていないことです。この調査には投資資産も含まれていますが、就職氷河期世代は若い頃からバブル崩壊後の長期株価低迷期を経験し、積立投資の概念も普及していなかったため、資産形成の機会を逃しました。
Q. なぜそのような状況になったのか?
最大の要因は、就職時の採用人数の激減です。1990年には全産業で約160万人だった新卒採用数が、1993〜94年には約70万人、2002年には約40万人まで減少しました。特に大企業の採用数は、バブル崩壊直後の60万人から1990年代半ばには20万人程度、2002年頃にはさらに減少しました。
同時に、第二次ベビーブーム世代(1学年約200万人)が就職期を迎えたため、需給バランスが著しく崩れました。正社員になれる人が限られ、非正規雇用者の割合が上昇したのです。
Q. 非正規雇用の状況はどうなっているのか?
就職氷河期世代の非正規雇用比率は他の世代よりも高く、時代とともに上昇しています。特に男性の非正規雇用比率の上昇が顕著です。現在、非正規労働者は約2000万人おり、そのうち「不本意非正規」(正社員になりたいが、なれない人)は約200万人います。この数は日本の全失業者数(約180万人)よりも多く、依然として大きな問題です。
特に2002年から2008年のリーマンショックまでの「戦後最長の景気回復局面」と言われた時期にも、派遣労働者の数は増え続けました。この時期、製造業が海外経済に牽引されて好調でしたが、正社員ではなく派遣労働者を多く採用し、リーマンショック後には大量解雇が行われました。

Q. 今後も割を食い続けるのか?
残念ながら、基本的には「割を食い続ける」と考えられます。しかし、最悪の状況からは若干改善しつつあります。政府も就職氷河期世代の雇用環境の厳しさを問題視し、支援策を講じています。2021年から2022年にかけて、就職氷河期世代(39〜48歳)の正規雇用労働者は約8万人増加し、非正規雇用労働者は減少しています。
また、人手不足が進む中で、若いうちにスキルを十分につけられなかった人でも、仕事を選ばなければ就業機会は以前より増えています。
Q. 就職氷河期世代を支援するためにどのような政策が必要か?
1. 定年制の段階的撤廃:欧米の英語圏諸国では年齢による雇用差別は違法であり、定年制がありません。日本も徐々にこの方向に向かうべきです。
2. 中途採用促進への支援:現在、政府は賃上げ企業に対する税制優遇を行っていますが、これは黒字企業にしか恩恵がありません。労働市場の流動性を高めるため、中途採用を積極的に行う企業への支援も必要です。
3. 転職支援の強化:労働市場の流動性を高めることで、就職氷河期世代に限らず、様々な職場にチャレンジしやすい環境を作ることが重要です。
就職氷河期世代は約2000万人と言われ、第二次ベビーブーム世代がまるごと含まれる大きな人口集団です。この世代の活躍と幸福度の向上は、日本経済全体にとっても重要な課題と言えるでしょう。
