
ハーバード博士・林英恵氏が教える健康新常識/感情とストレスの影響
感情とストレスの正しい付き合い方─元フジテレビアナウンサー三田友梨佳が公衆衛生学者に学ぶ
いつも怒りや悲しみ、幸せといった感情に振り回されていませんか?実は感情が健康習慣に大きな影響を与えていることがわかっています。また、仕事や家庭でのストレスの感じ方には男女差があり、それぞれに適した対策が必要です。

Q. 感情が健康に与える影響とは?
感情が健康に影響を与えることは以前から知られていました。例えば怒ると血圧が上がるといった現象です。しかし最近の研究では、感情が健康習慣を取れるかどうかにも影響していることがわかってきました。
怒りの感情を持つと、目の前の健康リスクを過小評価してしまう傾向があります。イライラした状態では「このくらいのお酒を飲んでも健康に影響はない」「タバコを吸っても病気にはならないだろう」と考えてしまいがちです。
悲しみを感じているときは、環境を変えたくなるため、より衝動的な行動を取りやすくなります。アメリカの映画でよく見られる「失恋したときにアイスクリームを大量に食べる」シーンはまさにこれです。悲しいときは自分を甘やかしたくなり、「これくらい食べても良いだろう」という気持ちになりやすくなります。

Q. 意外なことに、幸せな感情も注意が必要?
実は幸せの感情も注意が必要です。嬉しいときや喜びを感じているときは気持ちが大きくなり、怒りと同じように目の前の健康リスクを低く見積もってしまう傾向があります。
調子に乗っているときはリスクを取りすぎる傾向があり、「自分はできる」と思ってしまうのです。怒り、悲しみ、幸せといった感情は健康習慣の観点からは注意が必要だと言われています。
Q. 健康的な習慣形成に良い影響を与える感情はある?
健康習慣にプラスに働く感情として「感謝」と「誇り」があります。
感謝の気持ちを持つことで、人がしてくれたことに対して価値を認めることになり、他人の意見を聞き入れやすくなったり、人への信頼が増したりします。そうすると良いことを素直に取り入れようと思えるようになります。周囲との人間関係がうまく回っていることも健康習慣を取るうえで重要な要素なのです。
誇りについては、自分自身に誇りを持っているときは人と違った行動をすることを恐れなくなります。例えば、周りがみんなタバコを吸っていても自分は吸わない、みんながお酒を飲んでいても「明日は早いから今日は飲まずに帰ろう」と思いやすくなります。
感謝と誇りは、大会で賞を取ったような大きなことだけでなく、「今日は子どもをうまく寝かしつけられた」といった小さなことでも意識することができます。

Q. ストレスと仕事のタイプの関係は?
仕事のタイプごとに感じやすいストレスがあります。アメリカのマサチューセッツ大学の教授ロバート・カラセック氏が開発したモデルでは、仕事を「裁量度」と「要求度」の2軸で分類しています。
裁量度とは自分で何をするかや締め切りなどを決められる決定権があるかどうか、要求度とは締め切りが短期間で早いなど、どのようなペースで仕事を要求されるかを表します。この2軸で仕事は4つのタイプに分けられます。
例えば、会社の社長や幹部、医師、看護師、学校の先生などは裁量度も要求度も高い「能動的な仕事」に分類されます。このタイプは仕事が生きがいになりやすい反面、常にプレッシャーがかかりやすく、仕事中毒になりやすい傾向があります。このような仕事をしている人は、休息を取ることも仕事の一部だと意識することが重要です。
一方、ノルマのある営業職やレストランのウェイター、電話オペレーターなどは裁量度が低く要求度が高い「高ストレスの仕事」に分類され、常に緊張感との戦いになります。
Q. 男女でストレスの感じ方に違いはある?
男性は仕事での裁量権が少なくなるとストレスを感じやすいのに対し、女性は家庭での裁量権がなくなるとストレスを感じやすいという傾向があります。
さらに女性は仕事で裁量権が上がるとストレスも増してしまうという研究結果もあります。つまり女性は家庭と仕事の両方で負荷がかかると、二重のストレスを感じやすくなるのです。
このことから、女性の活躍を促進するためには仕事だけでなく、家庭での役割も考慮する必要があります。例えば、女性の家庭でのストレスを軽減するには、パートナーの男性が手伝う時間の長さよりも、頻繁に手伝うことが重要だとわかっています。
高いところの電球を交換するなど「名もない家事」を男性がちょっとでも手伝うことで、「家事負担が自分だけではない」という共同感が生まれ、女性のストレスが軽減されるのです。
Q. 職場でのストレス軽減法はある?
職場でのストレス軽減には、自分の仕事に意味を見出せるようにすることが重要です。例えば、ボルボ社での実験では、自動車の組み立てを1人で行うグループとチームで行うグループを比較しました。
チームで作業する人たちには、その仕事の意味を説明し、他のメンバーの作業も見えるようにしたところ、1人で作業するときよりも家に帰ってからのストレスが軽減されました。興味深いことに、生産性は変わらなかったそうです。
このことから、チームで仕事をさせて、ある程度の裁量権を与え、「あなたの仕事はこの会社にとって意味があるんだよ」と伝えることが重要だとわかります。

Q. ストレスを感じたときの対処法は?
ストレスを感じたときは次のことを意識しましょう。
1. 自分がどのような状況でストレスを感じるか知る(例:睡眠不足のとき、疲れているときなど)
2. 自分に合ったストレス解消法を見つける(深呼吸、その場を離れる、お風呂に入るなど)
3. 悪い習慣を良い習慣に置き換える(ストレスを感じたら甘いものではなく、果物やナッツを食べるなど)
「何かをしない」というよりも「何か別のことをする」という発想で対処するとより効果的です。また、瞑想も効果的なストレス解消法です。難しければ「アクティブメディテーション」と呼ばれる、ピアノを弾いたり料理をしたりといった活動の中で頭を空っぽにする方法も良いでしょう。
感情とストレスを上手にコントロールすることで、より健康的な生活習慣を身につけることができます。
