
芦屋市長・髙島崚輔「対話型リーダーシップ」
"1回もらえるかもらえないかの祝金より、いつでも相談できるパスポートがいい" - 市長×芸人・野田クリスタルの対話型リーダーシップ論
日本最年少市長の高島崚輔氏が語る、地方行政における対話の重要性と実践方法。行政のトップとして市民との関係構築に挑む姿勢と、そこから生まれる政策の変化について、野田クリスタル氏との対話から紐解く。

Q. なぜ政治の世界に入ろうと思ったのですか?
実は政治の世界に入った気はしていない。行政をやりたかった。市役所に就職するかどうかは考えたが、市長という役所の就職方法もあると気づいた。
ビジネスには競争があるが、行政は100%目の前の社会をどう良くするかを考えられる。そこに魅力を感じた。
Q. 行政のトップとして対話をどのように位置づけていますか?
リーダーとして分かりやすいビジョンを持ち、それを伝えることは大事だが、社会が変わる中でずれることもある。対話を通じてチューニングしつつ、軸となるものを伝え続けることを大事にしている。
行政の意思決定の前段階として、市民の声を聞くことを重視している。統計データは持っているが、一人ひとりが具体的にどこに困っているかは分からない。それを知るために対話が必要だ。

Q. 対話集会はどのように行われているのですか?
30人ほどの市民に集まってもらい、市長である自分も参加する形で開催している。従来の行政と市民の対話の場は一方的な要望の場になりがちだったが、双方向の対話を目指している。
自分も質問し、市民同士の対話も促す。例えば「Aさんはこう言ったけど、Bさんはどう思いますか?」と問いかけることで、様々な視点が出るようにしている。
Q. 対話から生まれた政策変更の具体例はありますか?
高校生から「中学時代は不登校だった。先生に相談したかったが忙しそうで相談できなかった」という話を聞き、全校に子どもたちの心のケアを担当する人材を配置した。
また、産後ケアについても「使いたいけどハードルが高い、料金も高い」という声が複数あり、制度を見直して料金を下げるなどの変更を行った。

Q. 予算には限りがあります。何かを増やせば何かを減らすことになりますね?
その通り。予算の分配の話なので、何かをやれば何かを削らなければならない。減らすことによって影響を受ける人に対しても、きちんと説明することが大事だ。
例えば子育て教育に予算を振る場合、高齢者からは「私たちにも」という声が出る。だが、若い世代への投資が地域の基盤となり、それが高齢者の暮らしも支えているということを説明すると、理解してくれる方も多い。
Q. 具体的に予算配分を変更した例はありますか?
敬老祝金制度をやめた。これは88歳の方に2万円、100歳の方に3万円を給付する事業だが、年間1200万円ほどかかっていて持続可能ではなかった。
代わりに高齢者が安心して相談できる支援窓口を新設した。「一生涯に2回もらえるかもらえないかの祝金よりも、いつでも相談できるパスポートの方がいい」と説明した。
Q. 制度を変える際、反対意見にはどう対応していますか?
まず話を聞くことから始める。論理的に説明してもあまり意味がなく、気持ちに寄り添うことが大切だ。
また「自分は61年後にもらう権利をなくしている」と説明することで、「若い人の勝手」ではなく全ての世代のための決断だと理解してもらえることもある。

Q. 行政からの情報発信はどのように行っていますか?
行政の広報は多くの人が見ないので、SNSを積極的に活用している。TwitterやInstagramなど、気軽に見てもらえる媒体を使っている。
長文になることも多いが、「なぜこれをやっているのか」という理由までしっかり説明するようにしている。目的を説明しておけば、後に変更が必要になった場合も理解されやすい。
Q. SNS発信のリスクはないですか?
リスクはあるが、それ以上にメリットがあると思っている。細心の注意を払いながら、全て自分で管理している。
また、政策に興味を持ってもらうには、まず自分自身に興味を持ってもらう必要がある。選挙前にはAmazonの入社試験問題を解く動画をTikTokに投稿していた。
Q. 市民からのポジティブな反応はありますか?
行政には基本的にポジティブな声はほとんど来ない。電話の99%はお叱りの声だ。だからこそSNSでの反応や、地域のイベントでの直接の声が励みになる。
外部のイベントや会合に出ると「これ最近やってもらってよかった」「頑張っているね」と言ってもらえることがある。わざわざ市役所に電話はしないが、直接会えば言ってくれる人もいる。
Q. 高島市長にとって最重要課題は何ですか?
学校の教育の質を上げることだ。現在の評価のあり方も見直す必要がある。偏差値だけでなく、個人がどれだけ成長したかを評価する仕組みも考えている。
中学生が自分たちで問題を考え、乗り越えていくような成功体験を作ることが大切だと考えている。
