
80万人突破。日本に住む中国人のリアル
「日本人の友達1人もいません」中国人の"日本での生活"に迫る
ジャーナリストの中島恵氏が著書『日本の中の中国』で紹介した、新たな波の中国人移住者たち。日本に増え続ける中国人コミュニティの実態とは?

Q. 日本に住む中国人の人口はどれくらい?
日本に住む中国人は2023年末時点で約82.2万人。人口規模で言えば山梨県や佐賀県と同じくらいだ。外国人全体の約3分の1を占め、この6年間で約9.2万人増加している。最も多いのは東京都の25万人で、年齢層は20〜39歳が半数を占める。男女比はほぼ半々で女性がやや多い。近年は高度専門職や経営管理ビザの取得者が増加傾向にある。
Q. 中国人が日本に移住する理由は?
中国人の日本への移住は歴史的に3つの時期に分けられる。1990年代は、日本が断然豊かだったため出稼ぎ目的での移住が多かった。2000年代から2010年代は、中国も豊かになり始め、必ずしも日本に来なくても稼げるようになったが、留学や日本でのより良い就職機会を求めて来る人が増えた。2020年代以降は、政治的な自由を求めて中国から逃れてくる人々が増加している。中国国内の激しい競争環境も、日本への移住を促す理由の一つだ。
Q. 最近の中国人移住者にはどんな特徴がある?
最近の移住者の特徴的な存在として「ガチ文化人」と呼ばれる人々がいる。彼らは日本と何の縁もなく、中国では超文化人・知識人だった人たちだ。以前は日本に留学したり、日本企業に就職したりする「日本に馴染む」タイプの中国人が多かったが、最近は中国の主流であった人たちが来ている。彼らは政治的な自分のポリシーを持ち、在日中国人コミュニティに大きな影響を与えている。
また、中国の大企業のCEOクラスや経営層も日本に移住してきており、その数は100人レベルで存在すると言われている。彼らは老後をのんびり過ごしたい、子どもに愛国主義教育を受けさせたくないといった理由で日本を選んでいる。
Q. 在日中国人はどのようにコミュニティを形成しているのか?
中国人は独自のコミュニティを形成するのが上手い。元々中国では政府を信用できない環境で、人と人との信頼関係で物事を動かす共同体的な活動が根付いていた。外国に行っても同様のコミュニティを作り、日本語がわからないことなどをカバーし合っている。
特にSNS、特にWeChatを通じた活動量は非常に多く、メッセージがすぐに500〜700件も溜まるほどだ。また、銀座の「単行外書店」や神保町の「局外人書店」といった中国語の書店では、様々な講演会や交流会が行われ、文化的な活動の拠点となっている。
さらに、LINEのグループを作って政治的な話題についても活発に議論している。日本にいることで中国の情報統制から逃れ、自由に意見交換できる環境を作り出している。
Q. 日本での不動産投資はなぜ人気なのか?
中国人は不動産投資に対する関心が強い。以前は投資目的で日本の不動産を購入する人が多かったが、最近は実際に住むために購入する人も増えている。中国の不動産に比べて日本の不動産は「激安」と言えるほど安い。「上海のマンション1軒分の値段で日本のビル1棟買える」という例もある。
東京の都心部はまだ価格が上昇する可能性があり、投資先として魅力的だ。ワンルームから高級物件まで様々な物件を購入し、マンションの賃貸収入で老後を日本で暮らす計画を立てている人も多い。中国系の不動産会社は東京だけで500社以上あるとされている。
Q. 在日中国人の子どもたちはどのような教育を受けているのか?
親の世代によって教育方針は異なる。80年代から2000年代に日本に来て根付いた親世代の子どもたちは、すでに日本語がネイティブレベルで、日本の有名私立学校への進学を目指している。教育熱心な親が多く、優秀な生徒も多い。
一方、最近来日した家族の子どもたちは日本語ができないため、インターナショナルスクールを選択するケースが多い。親も日本語ができないため、日本の学校に入れるハードルが高いからだ。六本木ヒルズや虎ノ門など、中国人居住者の多いエリアの近くにインターナショナルスクールが次々と開校しているのも、こうした需要を見込んでのことだろう。
Q. 日本での生活に満足している中国人は多いのか?
取材した中国人の多くは日本での生活に満足している。その理由として、中国のような激しい競争がないこと、安心・安全であること、平和であることが挙げられる。特に2000年代以前に来日した人々は日本が好きな人が多い。
一方で、「生きた心地がしない」「エネルギーが湧いてこない」と感じる人もいる。日本人は喜怒哀楽が少なく、刺激が足りないと感じる中国人もいるが、それは「贅沢な悩み」とも言える。
文化面では、東京の文化レベルは世界有数の高さだと評価されている。中国には大きな国家図書館や国立劇場はあるが、日本のように全ての市町村に図書館があり、安価に文化に触れることができる環境は中国にはない。
Q. 将来的に在日中国人コミュニティはどうなっていくのか?
第2世代、第3世代は日本社会に同化しやすい傾向がある。親が教育熱心なため、日本人以上に日本語が上手になり、作家や小説家も出てくる可能性がある。
一方で、中国人コミュニティ内での経済圏が拡大しており、将来的には日本企業に就職せず、中国系企業で働くケースも増えるだろう。「同じ日本という国の中にいて、お互いに雇用関係もなくなる」という状況も予想される。
このように、「日本の中の見えない中国」という状況が進んでいく可能性があり、相互理解のためにはこうした状況をより見える化していくことが重要だ。
