
岸田後の日本マーケット【エミン・ユルマズ】
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2024年9月3日
地政学リスクが高まる中で、世界と日本のマーケットはどう動くのか?大統領選の分析を含めて、米国と日本の経済・マーケットをエコノミストのエミン・ユルマズ氏に展望してもらった。 <ゲスト> エミン・ユルマズ|エコノミスト トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピオンに。1...
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通貨安こそ日本経済を脅かす 増えゆく物価高の不満がついに政権交代の引き金に
物価上昇が続く日本経済。岸田政権の支持率低下と突然の辞任表明の背景にも、通貨安による生活への影響があると指摘する声が上がっている。株価は上昇していても、国民の大多数は恩恵を感じていない。経済アナリストのエミン・ユルマズ氏に、今後の日本経済と投資の見通しについて聞いた。
Q. 岸田政権が支持されなかった本当の理由は何だったのでしょうか?
物価が上がっていることが最大の要因です。その背景はとてもシンプルに通貨安が原因です。少なくとも為替レートを130円に持っていかない限り、誰が総理になっても支持率は上がらないでしょう。
岸田政権の3年間は無念だったでしょうね。なぜ自分が評価されないのかと考えていたかもしれませんが、理由は単純です。私が以前、為替と支持率の相関関係を調べたところ、2〜3ヶ月のタイムラグがあることがわかりました。円高になると支持率が上がり、円安になると支持率が下がるんです。
本来、これに気づくべきだったのですが、政治家も国民感覚がないのでしょう。普通に買い物をしていれば、ここ1〜2年でどれだけ物価が上がったか実感できるはずです。私が行きつけの店は軒並み10%以上値上がりしています。
Q. 株価が上昇しているのに、なぜ国民は景気回復を実感できないのでしょうか?
日銀の生活意識調査を見れば一目瞭然です。1年前と比べて景気がよくなったと感じている人の割合はわずか1割。つまり株を買っている人だけが景気が良いと思っています。日本では株を保有している人は10人に1人しかいません。残りの9割の人々は株価上昇の恩恵を受けていないのです。
面白いことに、国民全員に関係するのは為替なのに、株価ばかりが注目されます。岸田政権が支持されない理由は通貨安だと思います。これは日々の生活の中で不満が蓄積していくからです。
例えば、毎週外食していたのが2週間に1回、月1回になった。いつも買っていた輸入のおつまみが値上がりして中身が小さくなった。海外旅行も年2回行けていたのに、今は行けない。こうした不満は一つ一つは小さくても、蓄積していくんです。
今の日本は90年代と違って、ほとんどのものを輸入しています。家電製品、スマホ、ガソリン、食料品、アパレル、すべて輸入品です。だから為替は非常に重要なんです。
Q. 円高に戻すにはどうすればいいのでしょうか?
アメリカがこれから1〜1.5%ほど金利を引き下げ、日本も1%程度まで金利を上げていけば、為替レートを130円台に持っていけるでしょう。ただ、先日金利を上げたら株が暴落したので、日銀は怯えているようです。歴史的に2番目に大きな暴落で「植田ショック」と呼ばれるほどでした。
しかし、これは市場の恐喝のようなもので、気にする必要はありません。去年の夏から利上げすべきだったのです。そうすれば円安がここまで進むこともなかったでしょう。
Q. 円高になると輸出企業の利益が減り、株価が下がるのではないですか?
そう思われがちですが、現実を見てください。今146円で日経平均は3万8000円を回復しています。以前は162円まで円安が進んだのに、今は15円も円高になっているのに株価はほとんど変わっていません。つまり、株価と為替はそこまで連動していないのです。
為替は企業利益に全く関係ないわけではありませんが、一定程度を超えると弊害が出てきます。どちらに行き過ぎても良くありません。130円台であれば輸出企業にとっても十分な水準だと思います。
円安のメリットとしてインバウンド効果が挙げられますが、それは日本のバーゲンセールをしているようなものです。このような円安が続くと、例えばカナダの会社がセブン-イレブンを買収しようとするなど、日本の優良企業が外資に買収されてしまう危険性があります。
外国企業に買収されると、サービスの質が低下する可能性が高いです。利益率改善のためにサービスを切り詰めるからです。日本の宝を守るためにも通貨安は良くないのです。
Q. 日本株の今後の見通しはどうでしょうか?
基本的にポジティブです。秋以降に一度大きな調整があるかもしれませんが、来年2月頃には底打ちし、再び上昇トレンドに入るでしょう。そして2026年前半までには日経平均5万円に到達すると考えています。
日本株は基本的に底堅さがあります。今後アメリカ発の要因で大きく下がる局面があれば、それは絶好の買い場となるでしょう。そして130円台の為替水準でも4万円、5万円の株価は十分に可能です。
Q. 日本の経済政策として何が必要だと思いますか?
日本には「経済保守」が必要です。日本の保守は文化や外交の保守であって、経済的には保守ではないんです。小泉政権のように民営化や規制改革を推進し、AI分野や宇宙産業など未来につながる産業に積極的に投資すべきです。
潰れかけたゾンビ企業の延命ではなく、若い人たちのソフトウェア開発など成長分野に力を入れていくべきです。日本はメカニックな部分、アナログの部分では強みがありますが、経済全体の中でそのシェアは小さくなっています。
ソフトウェア分野では日本は弱いですが、これは日本人だからできないのではなく、既存の体制ではできないということです。働き方から何から何まで、違う発想が必要なのです。
Q. 世代交代は日本経済にとって重要なポイントになりますか?
外国人機関投資家から聞いたところでは、日本企業のガバナンスは過去5〜10年で良くなっており、その理由は世代交代だそうです。政治も同様に若い世代に交代した方が良いでしょう。
40代の首相と40代の社長が増えれば、それは投資家にとって好材料です。優良企業を選ぶ条件の一つとして、社長が40代か50代であることが挙げられます。
日本は高齢化社会と言われていますが、人口分布では40代、50代が最も分厚い層です。この世代がリーダーシップを取るのは自然なことです。経済成長の力学において、世代交代は非常に重要な要素となるでしょう。
