
日経平均 来年どうなる?
日経平均株価の乱高下に市場が翻弄される中、日本企業の真の稼ぐ力が問われている。日経平均は本当にバブルなのか。AI関連銘柄の行方と最適な投資戦略とは何か。ニッセイ基礎研究所 研究理事の井出真吾氏に聞いた。 <ゲスト> 井出真吾|ニッセイ基礎研究所 研究理事・チーフ株式ストラテジスト - 1993年東...
日経平均はバブルではない?業績主導の上昇相場とAI時代を勝ち抜く資産運用術
日経平均株価の上昇が加速する中、市場では過熱感やバブル崩壊を懸念する声が少なくない。
だが、企業業績のファンダメンタルズを冷徹に分析すれば、足元の株価上昇は極めて合理的な実体に基づいていることが見えてくる。
世界のAIサプライチェーンを支配する日本のニッチトップ企業の強みから、積立投資を凌駕する一括投資の優位性、金利上昇局面での資産防衛まで、相場に振り回されずに資産を堅実に増やすための必須知識を解説する。

Q. 日経平均株価の急上昇はバブルではなく企業業績に裏打ちされた動きと言えるのか?
日経平均株価の上昇ピッチに対して警戒感を持つ投資家は多いが、ファンダメンタルズの観点から見れば決してバブルではない。
最大の根拠は、日本企業の純利益が今期26パーセント増益、来期も10.8パーセント増益と、2年連続の2桁増益が見込まれている事実である。
企業の利益が2割以上も拡大するのであれば、それに比例して株価水準が切り上がるのは極めて自然な市場原理である。
株価の適正水準を示す指標として株価収益率(PER)14倍から16倍のレンジを「身の丈」と定義すると、現在の株価はおおむねその標準レンジ内に収まっている。
一時的な過熱でレンジ上限を突き抜ける局面はあるものの、標準レンジの下限まで調整したとしてもそれは割安な絶好の押し目買い場にすぎない。
1989年のバブル崩壊期には身の丈の倍以上に膨らんでいた株価も、2012年頃には約30年におよぶ調整を完全に完了させた。
現在の日本企業は無駄を削ぎ落とし、海外市場へ果敢に進出して稼ぐ力を劇的に強化している。
Q. 急速に進化する世界のAI市場において日本の製造業が欠かせない理由はどこにあるのか?

株式市場ではAI関連銘柄が次々と脚光を浴びているが、その背景にはAIの技術フェーズが移行するごとに日本の高い技術力が求められる構造がある。
AIの開発は、並行処理を行うGPUを活用した「学習」フェーズから、実環境で高度な計算を行う「推論」フェーズへと進化を遂げた。
推論には膨大なデータ処理が伴うため大量のメモリーが必要となり、さらに巨大データセンターの電力消費を抑制する省電力技術が不可欠となった。
ここで村田製作所の積層セラミックコンデンサ(MLCC)や、フジクラが培ってきた高度な光ファイバー技術、アドバンテストの半導体検査装置など、世界シェアの7割から8割を占める日本企業の独壇場が現れる。
日本企業が長年蓄積してきた精密な部素材や製造装置がなければ、世界のAIインフラそのものが成立しない。
国内企業の純利益ランキングにおいても、半導体産業が長年首位だった自動車産業を逆転する歴史的な主役交代が起きている。
この産業構造の地殻変動こそが、日本株の持続的な上昇トレンドを強力に牽引している。
Q. 長期的な資産形成において毎月の積立投資よりも早期の一括投資が推奨される理由は何か?
積立投資と一括投資のどちらが資産を増やせるかという問いに対する結論は、早期の一括投資である。
中長期的に相場が右肩上がりに成長する前提に立つならば、資金を可能な限り早い段階で市場に投じる方が、複利と成長の恩恵を最大化できる。
過去20年以上の市場データを検証すると、S&P500などのインデックスにおいて年初一括投資は毎月積立投資に対して6割から7割の確率で勝利している。
投資家心理としては相場の底値を正確に見極めて最安値で買いたいと願うものだが、プロのファンドマネージャーであっても底値を正確に当てることは不可能である。
買い場を計るあまり現金を寝かせておく機会損失は、相場の一時的な下落リスクよりもはるかに大きい。
年間で投資に回す予定の資金があるならば、タイミングを細かく分散させるよりも年の前半や年初に思い切って投入することが、データに裏付けられた最も合理的な選択となる。
Q. 保有する銘柄の利益確定を急がずに長期保有を徹底すべき根拠とは何か?

相場が上昇すると利益を確定させたい衝動に駆られるが、個人投資家が勝ち残るための基本方針は徹底した長期保有である。
日本は少子高齢化による人口減少に直面しているものの、日本企業は国内市場に依存せずグローバル市場で利益を稼ぎ出す体質へと脱皮した。
さらに定着し始めたインフレ環境は、企業の製品価格転嫁を通じて売上高と純利益を名目ベースで押し上げる強い追い風となる。
売買タイミングを計って頻繁に売り買いを繰り返すと、売却後のさらなる上昇局面を取り逃がすリスクが極めて高い。
売却判断に悩むくらいであれば、利益確定という概念を一旦忘れ、企業の長期的な利益成長に資産を委ねて放置する姿勢が最も効率的である。
また、企業の応援や寄付と資産運用は明確に区別し、感情を交えずに冷徹に期待リターンを追求することが長期運用の鉄則である。
Q. 国内の金利上昇は株式相場にどのような影響を与えどう捉えるべきか?
教科書的には金利が上昇すると債券の魅力が高まり、リスク資産である株式は売られやすくなる。
実際に長期金利が上昇して株式の平均配当利回りに迫ると、機関投資家を中心に株式から国債へ資金をシフトさせる動きが出始める。
しかし、配当利回りというインカムゲインだけでなく、企業の持続的な成長に伴う値上がり益を合算したトータルリターンで比較すれば、依然として株式の優位性は揺るがない。
重要なのは、金利上昇の質を冷静に見極めることである。
経済が活性化し、賃上げと適度な物価高が好循環を生む中で金利が上がる「良い金利上昇」は、企業の稼ぐ力を強めるため株式相場にとって追い風となる。
警戒すべきは、野放図な財政拡大や国債乱発によって国の信用が揺らぎ金利が跳ね上がる「悪い金利上昇」である。
日銀の追加利上げ余地はあるものの、極端な高金利政策に舵を切ることは困難であり、過度に金利動向を恐れて投資の手を止める必要はない。
Q. NVIDIAの一強体制を脅かす競合出現や技術革新のリスクは現実的なのか?

市場ではNVIDIAに対する懸念として、安価な競合半導体の台頭と、GPUを必要としない革新的なAIモデルや中国製AIの進化という2大リスクが挙げられる。
しかし、いずれのリスクも現時点で同社の覇権を崩す決定打にはなり得ない。
NVIDIAの強みは単なるハードウェアの処理速度にとどまらず、顧客企業の基幹システムや開発環境に深く組み込まれたソフトウェアエコシステムにある。
同等の性能を持つ安価な競合チップが登場したとしても、開発環境全体を乗り換える莫大な移行コストとリスクを顧客企業が背負う合理性は薄い。
また、中国製AIが低コストで進化を遂げたとしても、西側諸国の政府機関や巨大企業が情報漏洩や国家安全保障の懸念を無視して採用することは考えにくい。
当て推量で次の大化け銘柄を探し回るよりも、参入障壁を強固に築き上げた本命企業を信じて腰を据えて保有し続ける戦略の方が勝算は極めて高い。
Q. 今後の日経平均株価の展望と新NISAを活用した具体的な投資戦略はどうあるべきか?
日本企業の堅調な利益成長ペースを前提とすれば、日経平均株価は近い将来に7万5千円から8万円の節目を捉え、2030年頃には10万円の大台に到達するシナリオも現実味を帯びている。
世界一の覇権を維持し続ける米国企業を中核とするS&P500は資産形成のコアとして外せないが、稼ぐ力を抜本的に高めた日本株を組み合わせる価値は極めて高い。
実践的な新NISAの活用戦略としては、毎月均等に積み立てる手法に加え、年間の投資可能資金を1月から初夏にかけて集中的に投入し、市場に晒す時間を長く確保する手法が有効である。
年間枠の前半投入を基本としつつ、手元に残した余剰資金は相場が一時的に急落した際の買い増し用として待機させておく。
オルカンやNASDAQ、半導体株指数のSOXなどを自身の好みに応じて組み合わせ、短期の乱高下に動じることなく規律ある運用を継続することこそが、資産を飛躍的に成長させる鍵となる。
