
日経平均7万円台はまだ序章
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2026年10月5日
デフレからインフレへの劇的な転換期を迎え、日本株は歴史的な転換点にある。なぜ2030年に日経平均は10万円に到達するのか。AI時代に覇権を握る「重い経済」とは何か。ひふみ投信を育てたレオス・キャピタルワークスの藤野英人氏に徹底解説してもらった。 <ゲスト> 藤野英人|レオス・キャピタルワークスファ...
日経平均10万円時代が到来する理由と「重い経済」を勝ち抜く資産防衛術
日経平均株価が2030年代に10万円の大台へ到達するという予測は、決して荒唐無稽な夢物語ではない。
長年デフレに沈み眠り続けていた日本企業は劇的な構造変革を遂げ、いまやウォーレン・バフェットをはじめとする世界中の機関投資家から再評価を受けている。
さらに歴史的なインフレ転換と、急速なAI普及に伴うインフラ需要の爆発が、この株高の流れを後押ししている。
これからの時代において、株式投資は単にリターンを狙う「攻め」ではなく、インフレによる資産の目減りを防ぐための不可欠な「守り」の手段となる。
本稿では、レオス・キャピタルワークス創業者の藤野英人氏の見解を基に、日本株が10万円を目指す構造的要因と、激動の時代に個人が実践すべき投資戦略を解説する。

Q. 2030年に向けて日経平均株価が10万円へ到達すると言える根拠はどこにあるのか?
日経平均株価が2030年までに10万円に達する確率は約7割であり、2035年まで見据えればほぼ確実に達成可能な水準であると考えられる。
その第1の根拠は、長年停滞していた日本の大企業が成し遂げたドラスティックな経営改革と稼ぐ力の覚醒にある。
契機となったのは2014年に策定された「伊藤レポート」であり、ROE(自己資本利益率)8%超の達成や資本効率の改善が強く提唱された。
当時30代から40代だった官民の中堅エリートたちが現在50代前後の経営トップや意思決定層となり、改革の種が本格的に結実し始めている。
企業は現金の溜め込みをやめ、積極的な自社株買いや増配、将来を見据えた設備投資へと舵を切った。
PBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正に向けた本気の姿勢を、ウォーレン・バフェットをはじめとする海外投資家は見逃さなかった。
日本企業が株主価値重視へと覚醒した事実が世界に認知されたことが、長期的な上昇相場を牽引する強固なエンジンの1つとなっている。
Q. なぜインフレの加速によって「投資が守りの時代」へと変化するのか?

日経平均10万円到達を裏付ける要因の7割から8割を占める最大のドライバーは、デフレからインフレへの構造転換である。
日本のコンビニで200円台で販売されているたまごサンドが、米国では安くても700円から1300円前後で取引されている現実は、内外の巨大な価格格差を物語る。
海外投資家が日本の安さと品質の高さに驚嘆しているように、国内のインフレ調整圧力はまだ始まったばかりの初期段階にすぎない。
今後5年から10年のスパンで国内物価が数倍の水準へと修正されていく流れは、構造的な必然と捉えるべきである。
ここで深刻な課題となるのが、日本の硬直的な雇用制度によって賃金の上昇ペースが物価高に追いつかない点である。
解雇規制が厳しく雇用の流動性が乏しい日本では、企業が人件費を固定費として警戒し、大胆なベースアップを躊躇しがちになる。
給与収入だけに依存していては、物価上昇によって現金の実質購買力が奪われ続け、生活が困窮するリスクが高まる。
制約なく物価連動で価値が拡大する株式などのリスク資産を保有することこそが、資産価値を守り抜く唯一の防御策となる。
Q. AIの普及に伴って浮上した「軽い経済から重い経済への大転換」とは何を意味するのか?
世界の先端市場では現在、知能産業を中心とした「軽い経済」から、物理的な実体インフラを重視する「重い経済」への大転換が起きている。
これまでの相場を牽引してきたのは、ソフトウェア、ITプラットフォーム、コンサルティングといった無形資産を軸とする軽い産業であった。
しかし、生成AIをはじめとする高度なデジタル社会を現実世界で機能させるには、莫大な電力と物理インフラが絶対的に欠かせない。
最先端の21世紀型テクノロジーは、皮肉にも20世紀に築き上げられた重厚長大な基礎技術と設備の土台の上に成り立っている。
AIデータセンターの稼働には桁外れのエネルギーが消費され、それを支える発電プラントや送電網の整備が急務となった。
その結果、発電設備、電線、素材、防衛、建設といった実体経済の基盤を担うセクターへ急速に資金が回帰している。
AIそのものを開発する米国企業だけでなく、それを物理面で支える装置や部材を供給するハードウェア産業の存在感が急上昇している。
Q. なぜ今、電線メーカーや重工業といった重厚長大企業が再評価されているのか?

重い経済への回帰を如実に示す代表例が、電線大手のフジクラをはじめとするインフラ関連銘柄の驚異的な株価上昇である。
データセンターの爆発的な新設に伴い、大量の電力を効率的に届ける銅線や高密度光ファイバーの需要が世界規模で逼迫している。
かつて成熟産業と見なされていた伝統的技術が、AI社会のボトルネックを解消する戦略的基盤として不可欠な存在となった。
さらに、地政学リスクの高まりや地域紛争の頻発により、グローバル企業のサプライチェーン戦略が根本から見直されている。
無駄を削ぎ落とした従来の「持たない経営」から、有事の寸断に備えてバックアップ設備や部品在庫を潤沢に積み増す方針へと転換した。
この「在庫重視」の潮流は、三菱重工業のような総合重機企業やプラントエンジニアリング会社、大手商社に巨額の商機をもたらしている。
泥臭い現場力と高い技術信頼性を誇る日本のものづくり企業群こそが、重い経済の時代において持続的な優位性を発揮する。
Q. 株式投資で資産を確実に増やすために最も必要な「ガチホ力」とは何か?

多くの個人投資家が株式市場で失敗を繰り返してしまう根本的な原因は、知識不足ではなく「今すぐ儲けたい」という短期的な焦りにある。
目先の利益を追い求める投資家は、話題化して急騰した人気銘柄の天井付近に飛びつき、高値掴みをしてしまいがちである。
その後の健全な調整局面や一時的な下落に耐え切れず、最悪の底値で狼狽売りを敢行して損失を確定させてしまう。
日本株が中長期的に10万円へと向かうメガトレンドに乗るならば、投資の基本姿勢は「原則ガチホ(継続保有)」に徹することである。
優れたマクロストーリーと企業のファンダメンタルズを見定めたならば、日々の細かな値動きに惑わされて手放してはならない。
株式投資の成否を分ける決定的な要素は、高い学歴や偏差値ではなく、一時的な下落局面でも保有し続ける精神的な粘り強さである。
有望なインフラ銘柄や重厚長大企業を信じて忍耐強く持ち続ける「ガチホ力」こそが、インフレ時代を勝ち抜く最大の武器となる。