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【原油100ドル突破】備蓄と迂回路が限界に
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2026年9月14日

原油価格が1バレル100ドル台を突破し、世界経済に暗い影を落としている。中東情勢の緊迫化はサプライチェーンのコストをどれほど押し上げるのか。サウジアラビアの迂回ルートへの攻撃が意味するものとは何か。日本エネルギー経済研究所顧問の小山堅氏に徹底解説してもらった。 <ゲスト> 小山堅|日本エネルギー経...
中東緊迫化で原油価格高騰、市場の不確実性が加速
原油価格が再び高騰し、1バレルあたり100ドルの大台を突破した。この価格上昇は世界経済に広範な影響を及ぼし始めており、日経平均株価の急落など市場全体に不安が広がっている。中東における地政学リスクの急激な再燃が主な要因とみられるが、その背景には何があり、今後どのようなシナリオが想定されるのか。日本エネルギー経済研究所顧問の小山堅氏の見解を基に、価格高騰の背景と今後の見通しを深く掘り下げる。

Q. なぜ原油価格は急騰し、1バレル100ドルを突破したのか?
今回の急激な原油価格高騰は、8月末に始まった米国によるイラン軍事施設への攻撃とその報復の応酬が発端だ。わずか2週間余りでWTI原油価格は80ドル台前半から100ドルを超える水準へと押し上げられた。これは地政学リスクの市場への影響が改めて鮮明になった証左である。特に価格を押し上げたのは、先週末以降に報じられたサウジアラビアの石油インフラ、具体的にはホルムズ海峡を迂回する主要パイプライン(国際輸送ラインの安全性の代替案である、重要性がこれまでも強く国際社会で認識されてきた供給経路でもある)に対する攻撃と、それによる輸出ルート支障という懸念だ。この状況が供給不安を格段に高め、1人バレル100ドル超えの価格変動を主因と思われる形で煽動させた要因となっている。
Q. ホルムズ海峡情勢の中、世界の供給源を支えていたサウジアラビアの「迂回ルート」の重要性とその現状は?

サウジアラビアは通常、原油輸出にホルムズ海峡を利用していた。しかし、ウクライナ戦争勃発後の情勢不安からホルムズ海峡の安全な航行が保証されなくなると、同国は以前から保有していた紅海方面への迂回パイプラインへの輸出を戦略的に進めてきた。この迂回パイプラインは日量700万バレルの輸出能力を持つ巨大供給路だ。これまで数カ月間、ホルムズ海峡を巡る地政学的変動が深刻化する中で、国際石油市場の需給バランス維持に極めて重要な役割を果たし、まさに世界の「生命線」として機能してきたのである。
しかし今回、国際市場にとって不可欠であったこの迂回パイプラインがフーシ派の攻撃対象となったことで、石油の安定供給への甚大な懸念が市場全体に広がっている。中東の安全保障と原油供給において、通常ルートと代替ルートの両方に機能不全の可能性が生じ、市場はより予測困難な状態に陥っているのが現状だ。
Q. ホルムズ海峡だけでなく、紅海にも不安要素が出て、二つの主要供給路が機能不全に陥る可能性はあるのか?
イランとそれに連なるフーシ派が軍事行動をエスカレートさせる行為は、中東における主要な石油輸送ルートを機能不全へと誘う可能性が高い。従来の懸念がホルムズ海峡の閉鎖だったとすれば、現在の脅威はそれに限定されない。フーシ派過激組織の軍事行動により紅海のバブ・エル・マンデブ海峡制圧も視野に入るほどに緊張が高まり、サウジアラビアは紅海につながるパイプライン操業の一時停止を余儀なくされた事実も踏まえる必要がある。
紅海ルートも遮断されれば、スエズ運河経由の石油輸送も大打撃を免れない。両ルートから同時に石油供給が困難となる最悪のシナリオも想定され始めており、市場はパニック状態に陥り、供給能力そのものへの不安心理はさらに深刻化するだろう。先行きは極めて不透明だと言わざるを得ない。それゆえ、週明け以降の市場の動きには最大限の警戒が払われる必要がある。さらなる価格高騰は避けられない可能性も高く見えてきた。
Q. 低水準にある世界石油在庫と、変動要因でもある中国の石油事情、これらが今後市場にどこまで影響するのか?

中長期的に見ると、世界の石油在庫は極めて予断を許さない状況にある。過去の世界危機時では比較的高水準の備蓄が存在し、各国が在庫を取り崩して市場の過度な衝撃を緩衝できた。しかし、この半年間の供給不安により大量の在庫が放出され、現在、世界全体の石油在庫は著しく低い。国際エネルギー機関(IEA)も大幅な低下を報告しており、新たな供給ショック発生の際、市場がそれを吸収する余力はほぼないだろう。現行の厳しい状況が続けば、原油価格が急騰する危険性を孕んでいる。
市場の不確実性を高める主要因として、中国の石油需給動向が挙げられる。過去半年間、原油価格が120ドルあたりで抑えられていた一因には、中国が高値での購入を自制し、国営備蓄の余剰油を放出して国内需要を賄い、これによって価格安定に貢献していたことがある。しかし、専門家は既にこの動向に変化の兆しがあることを示唆している。今後中国が国内製品輸出制限を解除したり、貯蔵品を再び積み増したりするとなれば、過去半年間とは全く異なる動きとなる。その場合、世界的に枯渇し始めている在庫状況と相まって、石油需要を一気に加速させ、市場を一段と高い価格へと押し上げる可能性が高い。中国の動向は、世界の石油市場の安定性を大きく左右すると見る専門家も少なくない。
Q. 今後の原油価格市場についてどのような見通し(シナリオ)が考えられるか?
複数のシナリオが示されている中で、最も可能性が高いとみられているのは「不安定化シナリオ」であると専門家は予測する。これは、米国とイランの全面的な戦争・紛争にまでは発展せずとも、緊張状態が継続し、散発的な軍事応酬が続く状況を指す。このような状態が続けば、原油価格は以前の予測であった80ドルから90ドル前後の乱高下を継続し、さらに時には今のような100ドルを超える高値圏での激しい変動にさらされることになるとの見解がある。すでに100ドルに達している現状から、このシナリオに既に入りつつあるか、あるいはより悪質な段階への移行の予兆すら含んでいる可能性があるだろう。
もちろん、両国は全面的な戦争は回避したい意向であり、自制が働くとも見られるが、偶発的な衝突や交渉の計算違いが、予期せぬエスカレーションを引き起こすリスクも常に存在する。故にこの問題の動向予測は非常に難しい側面を持っている。今後の原油価格を大きく左右する分水嶺となるのは、サウジアラビアやUAEが国際市場への石油出荷のために利用しているホルムズ海峡代替の迂回パイプラインが、安定的に運用を続けられるかの一点に集約される。この主要迂回ルートの安全性と機能の維持こそが、世界経済の石油市場において現段階で最も重要な指標だと言えるだろう。