
NASDAQ100vsFANG+ プロの答え
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2026年9月7日
新興国投資の主役とされたインド株が足踏み状態にある。なぜ期待通りの成長を描けないのか。一方でフィリピンが急浮上する構造的理由とは何か。世界経済のパラダイムシフトについて、松井証券シニアファンドアナリストの海老澤界氏に聞いた。 <ゲスト> 海老澤界|松井証券シニアファンドアナリスト 日本証券アナリス...
攻めの投資信託から注目の新興国、そして日本株の未来まで徹底解説
投資戦略は多様化しており、「守りの投資」から一歩踏み込んだ「攻めの投資」が注目されている。本記事では、米国株式市場における注目の攻め投資から、成長の期待される新興国、そして私たち日本人にとっての日本株の意義まで、専門家の知見をQ&A形式で深掘り解説する。
将来を見据えた資産形成のためには、多角的な視点から市場を捉えることが不可欠となるだろう。

Q. オルカンやS&P500に加え、攻めの投資信託として何があるのか?
主流の守備的なインデックス投資に加え、大きなリターンを追求するなら、米国株式アグレッシブ・ポートフォリオ「ジオマックス」が面白い選択肢となる。
このファンドは米国株全体への感応度が強い銘柄約20種に厳選投資し、トレンドを効率的に捉えることを目指す。過去2年間で90.4%という高パフォーマンスを記録し、これはFANG+やS&P500を上回る。
ジオマックスは半導体やAIなど特定のセクターに縛られず、純粋な値動きの勢いに注目している。NISAの成長投資枠も利用可能であり、高ボラティリティを許容できれば、大きなリターンを狙うことができる。
ただし、その変動は激しく、S&P500の約2倍に達し、短期間で大きく下落する可能性もある。
そのため、リスクを愛し変動を苦にしない投資家が、ポートフォリオの一部、つまり「サテライト」として組み入れることが推奨される。あくまで長期保有が推奨されるが、トレンドに応じて機動的に売買する「短期・中期的な楽しみ方」も選択肢の一つとなるだろう。
Q. FANG+とナスダック100、ポートフォリオの核としてどちらを選ぶべきか?

長期的な資産形成の核(コア)には「ナスダック100」のインデックスファンドが適している。
ナスダック100は金融を除く時価総額上位100社の加重平均で構成され、企業規模に応じた分散投資が可能であり、信託報酬も低い。一方、FANG+は主要6社と成長性で選定された4社を均等ウェイトで投資するため、特定の少数株価の騰落に大きく影響され、変動が大きいという特性を持つ。
専門家がナスダック100をコアに推す理由は3つ挙げられる。
時価総額加重平均というオーソドックスで歪みのないインデックス構造
FANG+に比べて明確に低い信託報酬によるコスト効率の高さ
100社への適切な分散効果によるポートフォリオの安定性
FANG+は売上高成長率やPSR(株価売上高倍率)など、利益よりもシェア拡大を優先する新興プラットフォーマー向け指標に偏重している。利益創出力が厳しく問われる現在の市場環境では、市場の変化に対して脆弱になるリスクがある。
さらに、中国企業(例:EVのBYD、スマートウォッチのHUAWEIなど)の台頭は、これまで米国プラットフォーマーが享受してきた独占的な優位性を揺るがしつつある。コストパフォーマンスの高い海外製品が米国の市場シェアを脅かし、AI開発におけるライバル関係も深化している現状を考慮すると、10年後の長期的な視点では、特定の企業群への偏重はリスクを伴う。より幅広いイノベーションを取り込むナスダック100へシフトすることは、適切な資産防衛策と言えよう。
Q. インド株は長期保有に値するのか?また次なる新興国の有望株は存在するのか?
インド株は2024年末にかけてバリュエーションの過熱感(センセックスPER25倍超)が見られ、2025年には株価の調整局面を経験した。しかし、これは健全なスピード調整と捉えるべきであり、過度に集中していたグローバルマネーがAI関連から新興国へ再流入し始めている。
インド経済は、強力な人口動態と確実な成長見通しに裏打ちされている。短期的な株価の微減に惑わされず、「ガチホ」(長期保有)を続けることが、将来的な大きなリターン獲得の鍵となるだろう。インドは数少ない「ガチホして良い国」の一つと評価できる。
インド以外にも、注目すべき新興国は存在する。フィリピンはインドと経済構造が非常に似ており、高いポテンシャルを秘めている。両国は英語を公用語とし、英語力がビジネスの強みとなっているが、その反面、製造業の育成が遅れるという共通の弱みも抱えている。両国の課題克服が、次なる成長を導くドライバーとなるはずだ。
Q. フィリピン株が持つ、インドとは異なる投資妙味とは何か?

フィリピンの経済は、インドと類似した特徴を持つ。自国でのエネルギー調達が困難なため経常赤字に陥りがちだが、コロナ禍でも「英語を活かしたサービス輸出」(ITやコールセンター)と「海外からの送金」が経済を支えていた。
この高い英語力は強みである一方で、手軽に外貨を獲得できるため、国内の本格的な製造業育成が遅れた側面がある。しかし、現在フィリピンは外資規制の緩和やインフラ整備を通じて、製造業強化への転換を図っている段階にある。まさに「ピンチをチャンスに変える」過渡期と言えよう。
フィリピンの最大の武器は「人口ボーナス期」の真っただ中にあることだ。15~64歳の生産年齢人口が非常に多く、経済を活発化させる原動力を抱えている。
さらに、株価のバリュエーションはインドの約半分(PERが10倍割れ)と非常に割安な水準にある。過去のパフォーマンスだけで評価するのではなく、「これからのストーリー」、すなわち若年層の労働力が製造業の成長と結びつき、国全体が発展していく夢に投資する視点を持つことが重要だ。
Q. 国の経済成長をもたらす確実な要因は存在するのか?そして投資に「ロマン」は必要か?
国の持続的な成長をもたらす確実な要因は、現代経済学をもってしても未だ解明されていない。歴史的には「勤勉なプロテスタント文化説」「地理的な優位性説」「民主的な制度説」などが提唱されたが、非キリスト教国の日本の成長や、同一地理にありながら格差の大きい南北朝鮮、一党独裁下で台頭する中国など、全ての説には例外が存在する。
確実な成長式が存在しないからこそ、投資活動は「100%の計算」ではなく「不確実性を伴うロマンへの挑戦」と捉えるべきである。宇宙開発(SpaceXなど)のような未来を描ける領域や、特定の有望な新興国への投資など、「未来への確固たる期待感と夢を描けるストーリー」に資金を投じることこそが、投資の本来の醍醐味だ。
ちなみに、サッカーにおける強豪国の強さも、経済成長と同様に「人口規模」「資本力」「過酷な実戦経験を通じたイノベーション」が組み合わさることで維持される。また、メキシコやフィリピン出身の移民が米国で経済的成功を収め、その資金や知識が母国へ還流しイノベーションを誘発する現象も、国の成長において見過ごせない要素である。
Q. 日本株の未来は明るいのか?我々はどう向き合うべきか?

日本は現在、一人当たりGDPにおいて韓国や台湾に劣後し、貿易収支の大幅な悪化やGAFAMなどのデジタルサービスに対する多額の赤字に直面している。
かろうじて先進国の地位を保てているのは、過去の海外投資で得た利子や配当などの第一次所得収支に依存している状況である。日本円の主要通貨としての地位も、稼ぐ力の低下とともに弱体化しており、先進国としての転落の瀬戸際に立たされていると言えよう。
この状況を打開するためには、政府が提唱する「戦略17分野」のような、日本の強みを活かした産業への特化が不可欠となる。
政治主導の産業政策には非効率性も伴う懸念があるが、外貨を自力で稼ぎ出すための「やらざるを得ない」生存戦略であることは確かだ。
このような背景から、現代の日本株投資は、純粋な高リターンを求める「利己的」なものではなく、稼ぐ力を維持する優良企業と自国経済を応援する「貢献的」な行為と捉えるのが適切である。コアとなるナスダック100や新興国株でロマンを追求しつつも、ポートフォリオの一部に「日本を広く応援する」意味でのTOPIXなどのインデックスを組み込むことは、感情と合理性を両立させた賢明な分散投資手法である。
