メンタルお悩み相談/うつっぽい時の対処法/職場の人間関係はどうでもいい
現代社会が抱えるメンタルヘルスや人間関係の悩みは尽きない。
今回、様々なメディアで活躍する精神科医の益田裕介氏とTomy氏が、視聴者から寄せられた具体的な相談に応じた。夫のモラハラや精神的不調、医学部不合格によるコンプレックス、職場の人間関係における派閥といった多岐にわたる問題に対し、二人の医師が実践的なアドバイスを提供している。
彼らが提唱する心のケアと生きづらさへの対処法を深く掘り下げていこう。


Q. 夫のモラハラに悩んでいます。ADHD傾向もあり精神的に不安定な中、どうすれば良いですか?
ADHD傾向やうつ状態を抱える相談者に対し、富井先生はまず「脳の疲労」がうつの本質にあると指摘した。忘れ物が多いことや家庭の問題を抱え、絶えず緊張感を強いられる状況が脳を酷使しているという。脳の疲労は心の状態を不安定にし、ネガティブな思考を加速させる原因となる。長期的視野に立つことで過度な不安を抱え込む傾向があるため、未来への不安から一度距離を置き、今取り組むべき目の前のタスクや自身のコンディション調整に焦点を当てることが重要である。
このような状態を打開するには、現状を変える物理的な行動と環境の変化が有効である。立ち上がって買い物に出かけたり、別の部屋に移動したりするだけでも意識を切り替えることができる。新たな刺激によって、ネガティブな思考から一時的に離れられると富井先生はアドバイスしている。自身のメンタルを守るためには、無理に精神論で乗り切ろうとせず、環境や行動を変える具体的な一歩を踏み出すべきだ。
Q. モラハラや暴言を目の前にした場合、具体的にどう対処すべきですか?
モラハラへの対処法として、富井先生は「I(アイ)メッセージ」での冷静な意見表明を勧める。相手を責める「あなたはひどい」といったYou(ユー)メッセージではなく、「私はそう言われると傷つく」のように主語を自分にして不快感を伝えることで、相手との角を立てずに主張できる。これを感情的ではなく、その場で即座に行うことで、嫌な言動のエスカレートを防ぐ効果が期待できる。
また、特に職場などで高圧的な人物からの嫌味や不当な言動に対しては、「心の中で反応しない」という方法が有効である。表面的には相槌を打つなど相手に合わせていても、内面では相手の言葉を深く受け止めない「無」の状態を保つ。これにより、精神的なダメージの蓄積を防ぎ、自己の心の防御壁を築ける。益田先生は、怒鳴ったり物に当たったりといった明らかな暴力行為があった場合、決して一人で抱え込まず、躊躇なく第三者を介入させるべきだと強調する。警察やDV相談窓口など、外部機関に協力を求めることで、相手に事の重大性を認識させ、それ以上の事態悪化を防ぐ抑止力となり得るからだ。
Q. うつ状態の原因は脳の疲労だと言いますが、なかなか休めない状況で心のコンディションを整えるにはどうしたら良いですか?

うつの根源が脳の疲労にあると理解することは重要だが、現代社会において仕事や家事、子育てから完全に解放されて休むのは現実的ではない場合が多い。そこで提案されるのが「頭の中の整理」である。散らかった部屋では心が休まらないのと同じように、脳内の情報が混乱しているとストレスがたまる。抱えている悩みやタスク、懸念事項などを可視化し、一覧にまとめるだけでも心の負担は大きく軽減されるという。
自分一人で問題を整理するのが難しい場合は、カウンセリングを受けるなど第三者の支援を積極的に利用すべきだ。客観的な視点から物事を整理してもらうことで、一人では気づけない解決策や見落としにアクセスできる。また、他人の性格や言動を変えることは困難であるため、相手を変えようとして生じる不必要なストレスからは解放されるべきだと富井先生は言う。「言いたいことは言った」と自分の課題と他者の課題を切り離し、自分が納得できる選択をすることが、精神的安定に繋がる。
Q. 医学部不合格という過去の挫折が医師との対面時にコンプレックスとなり、自己肯定感を下げるのですが、どう考えるべきですか?
医学部に受からなかった過去や、現状(無職など)からくるコンプレックスに悩む相談者に対し、富井先生は「引きこもりエンジョイ勢」を目指すというユニークなアプローチを提案する。現状を否定したり、無理に高い目標を課したりするのではなく、まず自身の置かれた状況を楽しむこと。目の前の生活を楽しむ姿勢を確立することが、次のステップへ進むための土台となる。先進国では、人口の1〜2割が無職の状態にあるという統計もあり、これはAI時代の流れの中で今後減るどころか増加する可能性も示唆される。こうした現実を踏まえれば、無職である現状を過度に自責する必要はないのだ。
医者や成功者に対しコンプレックスを感じる時、それは多くの場合、自分の心の中で問題を大きく育ててしまうからだ。解決策として富井先生が提唱するのは、「コンプレックスをあえて口に出す」という方法である。他者に言えない弱みは内に秘めれば秘めるほど増大し、自分を苦しめる。そこで思い切って「実は〇〇にコンプレックスがある」とオープンにすることで、心のざわつきが収まり、かえって関係性が良くなることもあるという。
Q. 挫折やコンプレックスはどのように乗り越えていくものですか?
挫折やコンプレックスは人生におけるネガティブな要素と捉えられがちだが、益田先生はこれを「人生のスパイス」と表現する。カレーにおけるニンニクや胡椒のように、単体では苦く臭くても、それらがあるからこそ料理全体の味が深まるように、挫折経験が後に人生を豊かにする深みと個性をもたらすという考え方だ。一時の苦しさや辛さを乗り越えた時、振り返れば「あれがあったからこそ今の自分がある」と肯定的に捉えられるようになる。焦らず、自身の挫折経験が「スパイス」として機能する時を待つ視点が必要だ。
さらに、他者との比較を手放し、自分の生き方を「個別化」することも重要である。多くの人は同年代や同じ分野の人間と自分を比較しがちだが、益田先生は「全員がアウトローだ」と言う。それぞれの人が持つ経験や資質、興味を掛け合わせ、独自の生き方を追求すれば、他者と比較すること自体が無意味に感じられるようになる。自分がどうありたいかという「自分軸」が明確になれば、周囲への嫉妬やコンプレックスといった感情は薄れ、より自由で充実した人生を送れる。益田先生自身も、自衛隊員としての挫折を経験した後、精神科医として作家、YouTuberと多角的に活動することで、自身の生き方を個別化し、隠したいことは何もない生きやすさを獲得したと語る。
人生において無駄な経験は何一つない。一見マイナスに思える挫折やコンプレックスも、年齢を重ねるごとに意味を持つようになる。10代、20代の頃は外見や地位で比較しがちだが、30代以降は課題が変化する。さらに時が経てば、当時の「勝ち負け」や「劣等感」も気にならなくなり、「生きててよかったね」という普遍的な感情に行き着くはずだ。
Q. 職場の派閥に属すべきか悩んでいます。家族の確執を経験しグループに入ることに抵抗があるのですが、孤立せずに深い人間関係を築くにはどうしたら良いですか?

過去に家族の板挟みを経験したことで、グループに属することに抵抗を感じている相談者に対し、益田先生は「派閥にリスクを背負わず深い関係を築くのは難しい」と指摘する。本質的な深い人間関係には、時間や秘密、あるいは「意地悪な部分」さえも共有する覚悟が必要だという。同時に、職場での人間関係を単なる「仕事」と割り切るのも一つの手であり、トラブルを避けたいのであれば、派閥に深入りせず、給料分の働きをするだけに徹するという選択肢もある。寂しさを乗り越えて深い関係を築きたいのか、それとも気楽さを優先するのか、自身の価値観と照らし合わせて判断すべき問題である。
もし派閥やグループに属する必要が生じた場合、その判断基準は「誰を人として好きか」という純粋な好意に基づくべきだと、両先生は語る。打算的に有力な人物につくのではなく、心から尊敬できる人物と行動を共にすること。これは仮にキャリアアップに繋がらなくても、後悔のない選択となるだろう。表面的な集団への所属は真の深い人間関係を生まず、本物の繋がりは、自然な化学反応によって偶然に生まれるものだからだ。学術界の教授選のような特殊な状況を除けば、無理に派閥に属する必要性は低い。
孤立せず、良好な人間関係を築くための最も普遍的なコツは「人を褒めること」と「不義理をしないこと」である。上司や同僚に対し、良い点を見つけて素直に感謝や賞賛を伝える姿勢は、相手からの好意を引き出す。また、徳川家康のように長期的な視点を持ち、ずるい行動や他者を裏切る「不義理」を徹底して避けること。誠実な態度を貫けば、たとえ一時的に成功への道が遠回りになっても、やがては信頼できる人々と出会い、深い人間関係を築ける機会が訪れる。焦らず、自分の足元を固める地道な努力が、最終的には良い結果を招くのだ。
