
最悪の食習慣 TOP3
「最悪」の食習慣 TOP3: 甘い飲料、古い油、健康食品への盲信
現代社会には健康に関する情報が氾濫し、正しい知識の取捨選択が極めて重要となっている。しかし、その中には誤解や嘘が混じり、私たちの食生活に悪影響を与えかねない情報も少なくない。東京農業大学名誉教授の田中越郎氏は、長年にわたる研究に基づき、健康を破壊する「危険な食事」と、健康を守る「最強の食事」の真実を明らかにしている。本稿では、彼の著書『医者が教える栄養学的に正しい最高の食事術』で語られる内容を中心に、私たちの日々の食選択を見直す上で不可欠な視点をQ&A形式で解説する。

Q. なぜ甘い飲料は健康を破壊する危険な食事とされるのか?
甘い飲料、特に清涼飲料水に含まれる「果糖」は、人間の満腹感を麻痺させる。通常の食事ではブドウ糖によって満腹感が感じられるが、果糖はこの機能を阻害し、いつまでも食べ続けられるような錯覚を起こさせる。これが過食や肥満の主要な原因となる。
この問題の背景には、トウモロコシから作られる安価な甘味料「果糖ブドウ糖液糖」の普及がある。この甘味料は、冷たい状態でも強い甘みを感じやすく、コストが低いため、1980年代以降、飲料や加工食品に広く利用されるようになった。その結果、世界中で肥満が急増し、特に貧困層の健康を蝕んでいる現状がある。
液体の糖は固形物に比べ吸収速度が圧倒的に速いことも危険な理由の一つだ。口にした途端、大量の糖が消化プロセスをほとんど経ずに体内に吸収されるため、内臓、特に肝臓への負担が極めて大きい。甘い飲み物を生活から排除するだけでも、健康度は大きく向上するといわれている。甘い飲み物を抜く習慣が身につけば、半数以上の健康課題が解決するだろう。
Q. 「健康に良い油」がむしろ有害になり得るというのは本当か?

健康に良いとされる油、例えばオリーブオイルや亜麻仁油などに多く含まれる不飽和脂肪酸は、その分子構造上、熱、光、酸素に非常に弱い性質を持つ。これらの油は「良い油」として摂取されることが多いが、保存状態が悪かったり、高温で調理されたりすると容易に変質し、体内では悪玉物質として作用する可能性が高い。
変質した古い油は、その健康効果を失うどころか、元の油以上に有害となる。家庭で天ぷら油を使い回したり、ファストフード店などで古い油を使用したりすることは、動脈硬化や様々な疾患のリスクを高める要因となる。特にファストフードのシェイクなどは、アイスクリームのように見えて実は植物油が主成分であり、使用される油の品質や鮮度には注意が必要だ。
Q. 保健機能食品(トクホ)の持つ「安心感」にはどのような落とし穴があるのか?
黒烏龍茶に代表される特定保健用食品(トクホ)の脂肪吸収抑制効果などは、想像よりもずっと微々たるものだ。例えば、ラーメンのチャーシューを親指の面積ほど食べれば、黒烏龍茶一本分の効果が相殺されるほどである。トクホ自体が悪影響を及ぼすわけではないが、「これを飲んでいるから多少の無茶は許される」という安心感が、結果として不健康な食生活を助長してしまう「免罪符」となる危険性が高い。
効果の乏しい高価な健康食品やサプリメントに投資するよりも、その予算でワンランク上の新鮮で高品質な食材を購入する方が、長期的に見てはるかに健康に寄与する。安易な機能性食品への依存は避け、バランスの取れた自然な食生活を追求することが賢明だ。
また、一般的に動物性脂肪(飽和脂肪酸)は悪者とされがちだが、熱や酸化による変質が少なく保存性が高いという特性がある。むしろ不飽和脂肪酸の「変質しやすい」特性を考慮すれば、飽和脂肪酸が極端に体に悪いと一概には言えない。過剰に避ける必要はなく、食事全体でのバランスと鮮度が重要である。
Q. 「あらゆる食べ物は毒になり、安全なのは量だけ」とはどのような考え方か?

「安全な食べ物」というものはこの世に存在せず、「安全な量」だけが存在するというのが、食と健康の根本原則である。どんなに健康的な食材であっても、過剰に摂取すれば体に害を及ぼす可能性がある。例えば、栄養豊富で健康に良いとされるトマトでさえ、一度に100個も食べれば体に不調をきたすだろう。最も分かりやすい例は塩である。不足すれば健康を害し、過剰に摂取すれば高血圧などの原因となる。食べ物はその適量であれば体に良く作用し、少なすぎたり多すぎたりするとリスクとなり得るのだ。
日々の食事において、カロリーや栄養素を完璧に計算し、毎日厳密に摂取量を守ることは現実的ではない。個人の年齢、体格、活動量によって適切な摂取量は異なる上、現代の多忙な生活や付き合いの中で完璧を追求するのは大きなストレスとなる。そのため、日ごとの完璧さよりも、一週間単位で平均してバランスが取れているかを意識する「ざっくり管理」が現実的で推奨される。飲み会などで食べ過ぎた日があっても、翌日や週末に調整するなど、柔軟な姿勢で食と向き合うことが重要である。
Q. 健康診断で指摘される様々な数値は、究極的に何を防ぐために重要視されるのか?

健康診断でコレステロール値、血糖値、血圧などが重視される究極の目的は、全身の血管で発生する「動脈硬化」を防ぐためである。これらの数値が高い状態が続くと、血管の内壁が硬くなり、プラークが形成されて血流が悪化する。これにより、心臓病(心筋梗塞)や脳の病気(脳梗塞)といった命に関わる致命的な疾患のリスクが大幅に高まる。
特に働き盛りの世代では、動脈硬化が進行しているにもかかわらず自覚症状がないまま、突然心筋梗塞などで倒れるケースも少なくない。そのため、健康診断を通じて早期にリスク因子を発見し、塩分や油分の摂取を見直すなど、食生活の改善を通じて動脈硬化の進行を抑制することが極めて重要となる。
Q. うま味調味料とコーラの歯への影響に関する科学的な真実とは何か?
うま味調味料(グルタミン酸ナトリウムなど)に対する「石油から作られている」「体に悪い」といった批判は、過去の誤解や不正確な情報が根強く残っているためだ。確かに、数十年前にはタンパク質源として石油から作られた時代もあったが、現在のうま味調味料は安全な方法で作られており、安全性に問題はない。しかし、子どもの頃にうま味調味料を過剰に摂取する食習慣があった場合、大人になっても強い旨味や濃い味付けでなければ満足できない「偏った味覚」が形成される可能性がある。これは健康上の直接的な害ではなく、味覚の多様性が失われるという意味で、一種の「弊害」と言える。
また、「コーラが歯を溶かす」という通説は事実であるが、その真の理由は炭酸の酸性ではなく、防腐目的で添加されている「リン酸」という非常に強力な酸である。炭酸は一般的な酸の中でもそれほど強くないが、リン酸は炭酸の数百倍から千倍もの酸性度を持つ。そのため、コーラは炭酸が抜けた後も歯を溶かす力を持つことに変わりはない。歯へのダメージを最小限に抑えるためには、コーラを飲んだ後、すぐに水や薄いお茶で口をゆすぐことが非常に有効な対策となる。これは特に子どもにとって重要な習慣である。
