
【決勝トーナメント展望:フランス】銀河系軍団の死角
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2026年6月30日
6月29日から始まったW杯の決勝トーナメント。優勝候補に挙がる8カ国の強豪チームについて最新分析してもらった。 <ゲスト> Leo the football|シュワーボ東京監督 1986年福島生まれ。YouTubeのチャンネル登録者数は30万人を超える。自身で立ち上げた東京都社会人サッカーチーム「...
フランス代表:完璧な強さの裏に潜む不安要素とは?
圧倒的な個人技と破壊的な攻撃力でグループリーグを全勝したフランス代表。一部ではすでに優勝が決まったかのような論調すら見られた。しかし、その「強すぎるが故の不安」が、決勝トーナメントで足元をすくう可能性を秘めている。
識者の視点から、一見死角のないフランス代表が抱える真のリスクと、それが大会の行方にどう影響するかを深く掘り下げる。

Q. フランス代表のグループリーグ評価は妥当なものだったか?
フランス代表はグループリーグをセネガルに3対1、イラクに3対0、そしてサブメンバー中心のノルウェーにも4対1と、全勝で突破した。この圧倒的な成績は、100点満点中90点と評価されている。
しかし、この高評価の裏には「マイナス10点」の懸念がある。グループリーグの相手が弱く、フランス代表が本気を出す必要がなかった点が指摘された。チームが課題と向き合い、修正する機会を得られないまま決勝トーナメントに進んだことは、強すぎるが故の不安要素として残っている。
強敵との対戦がなかったため、フランス代表の真の課題が表面化せず、チーム内で危機意識が醸成されなかった。これにより、自分たちのプレーを改善・進化させるモチベーションも十分に生まれていない可能性があるのだ。
Q. 死角はないとされるフランス代表にも不安要素は存在するのか?
完璧に見えるフランス代表にも、確かに不安要素は存在する。一つは、左サイドバックに起用されるテオ・エルナンデス選手の守備である。彼は攻撃面での貢献が大きい一方で、1対1の対応で容易に突破を許したり、センターバックとの連携で生まれるスペースを使われたりする場面が目立つ。

現在、この守備の穴は、サリバ選手やウパメカノ選手といった世界トップレベルのセンターバックの個の能力によってカバーされている状況だ。しかし、これらは対戦相手が格下だから通用するのであり、決勝トーナメントで強豪と当たった際には致命的な失点に繋がりかねない。テオ選手がディニュ選手よりも起用されるのは、フランス代表の選考基準が技術とフィジカルの「個の能力」を重視しているためだと見られる。しかし、彼のプレースタイルがミラン時代のピーク時より落ちているという指摘もあり、明確なリスクと化している。
もう一つの大きな不安要素は、攻守両面における「セットプレーの緩さ」である。フランス代表の選手たちはセットプレーでの守備タスクを軽視する傾向があり、組織的な動きが見られない。デシャン監督が定めた戦術があるにも関わらず、選手たちが100%の集中力で遂行しようとしないのは、「俺が本気でそんなことをやるのか?」というレアル・マドリードのスター選手に見られる「レアル病」に近い状態と言える。普段は個の力で何とかできるため問題が表面化しないが、集中力が極めて重要な決勝トーナメントでは、この緩さが命取りとなる可能性が高い。
Q. エムバペ選手を軸とした戦術はフランス代表に何をもたらすか?
フランス代表の戦術は、「王様」エムバペ選手を攻撃に専念させることを前提に構築されている。アルゼンチンのメッシ選手やポルトガルのC.ロナウド選手のように、エムバペ選手には守備タディフェンス面での負担がほとんどかからない。チーム全体が彼の決定力を最大限に引き出すために機能しているのだ。
守備時には4-4-1-1や、場合によっては前線の守備を放棄した4-2-4のような形になることもある。それでも相手に得点を許さないのは、サリバ選手やウパメカノ選手らセンターバック陣が驚異的な個人守備能力を発揮するからこそ成り立つ戦術である。彼らは「前線の選手が守備をしないのは当たり前、それを個人で解決してこそフランス代表DF」という強い自負を持ってプレーしているのだ。

また、フランス代表は選手層も非常に厚い。控えにはシェルキ選手やカンテ選手といった「主役級」の選手が控えているため、怪我や疲労が蓄積する激しい戦いにおいても、質の高い交代選手を投入できる点は大きな強みとなる。特に、ハットトリックを記録するほどの攻撃力を持ちながら、エムバペ選手をサポートするために献身的な守備もこなすデンベレ選手の存在は、チームの攻守バランスを保つ上で欠かせない。さらに、2列目の選手たちは全員がウイングとトップ下の両方をこなせる万能型であり、エムバペ選手の動きに合わせて流動的にポジションを変えても攻撃力が落ちない点が、相手守備陣を大いに混乱させる。
Q. 相手チームがフランス代表の強力な攻撃を止めるにはどうすべきか?
フランス代表の最も得意とする攻撃パターンは、ボールを奪ってから素早く仕掛けるカウンタースタイルだ。エムバペ選手やデンベレ選手のような高速アタッカーに広いスペースを与えれば、彼らを止めることは極めて難しい。

したがって、フランス代表を抑えるためには、彼らの得意な速攻をさせないことが絶対条件となる。自陣を固めてスペースを消し、意図的に試合のペースを遅らせる戦い方が求められるだろう。具体的には、高いラインを保ってアタッカーをオフサイドにかける、あるいは常に数的優位を作ってカウンターの起点をつぶすといった戦術が考えられる。
今後の対戦相手の中では、戦術を徹底的に割り切って実行できるドイツ代表や、組織的な守備を特徴とするオランダ代表が、フランス代表の攻撃を封じる可能性を秘めている。逆に、ボール保持に固執し、オープンな展開を望むスペイン代表のようなチームは、フランスの速攻に格好の餌食となる危険性があるだろう。
Q. “国版レアル”と称されるフランス代表の優勝確率はどれくらいか?
フランス代表は、そのプレースタイルやスター選手たちの特徴から「国版レアル・マドリード」と評される。これは、組織的な戦術よりも、個々の選手の爆発的な能力に大きく依存して勝利をもぎ取るスタイルを意味する。この特性ゆえに、その日のコンディションやモチベーション次第でチームパフォーマンスに大きな波があり、安定性に欠ける側面がある。強大な「個の力」を持つがゆえに、「フランスは強いから強い」という説明にしかならないことも少なくない。
このような状況から、フランス代表の優勝確率は25%程度と見られている。イングランド代表やポルトガル代表、オランダ代表といった強力なライバルも存在し、フランスが圧倒的な優勝候補というわけではない。個人のひらめきで勝ち進むか、組織の脆さから足元をすくわれるか、予測が難しいチームなのだ。
対照的に、ライバル国の一つであるポルトガル代表には、C.ロナウド選手の起用を巡る明確な課題が見られる。ロナウド選手個人のパフォーマンスもさることながら、彼をチームの中心として扱うべきか、それとも戦術における「一つの駒」として機能させるべきかという、チーム内の戦術方針が定まっていない点が問題だ。ベルナルド・シウバ選手やブルーノ・フェルナンデス選手ら他のスター選手との共存が難しく、チーム全体としての統一性が損なわれている状況が、優勝の可能性を下方修正させる要因となっている。
