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決勝トーナメント展望:強すぎるフランスに勝つチームは?
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2026年6月29日

6月29日に開始したW杯の決勝トーナメント。注目点と合わせて、優勝国、MVPを予想してもらった。 <ゲスト> ミムラユウスケ|スポーツライター 2006年7月にスポーツライターとしての活動をはじめ、2009年1月にドイツへ渡る。ドイツを中心にヨーロッパで取材。2016年9月22日より、拠点を再び日...
W杯2026 決勝トーナメント徹底分析:優勝国とMVP、識者が見据える大会の行方
決勝トーナメントは一層白熱し、世界中が熱狂の渦に巻き込まれている。
特に注目すべきは、前回大会を凌駕する展開を見せるチーム、驚きのパフォーマンスを披露する個人、そして戦術的妙味やコンディション管理の重要性である。
本稿では、識者の見解を基に、2026年ワールドカップ決勝トーナメントの展望をQ&A形式で深掘りする。

Q. なぜフランスは「強すぎる」と評され、その対策は生まれるのか?
フランスは今大会、攻守においてほとんど隙がないとの評価だ。守備面ではセンターバックにウパメカノやサリバのような計算できる選手が揃っており、簡単にゴールを許さない。攻撃面ではエムバペやデンベレといった個の能力が際立つ選手たちが、手数をかけずにカウンターからゴールを奪えるほか、相手が引いて守っていても1対1の打開力で理不尽なゴールを奪うことができる。

かつて懸念された中盤のゲームメイク能力不足も、ワールドカップのような短期決戦では、個の打開力がそれ以上に重要であるため問題にならない。デシャン監督はエムバペにキャプテンという大役を任せることで、かつての「わがまま問題」を解消し、精神的に大人へと成長させチームをまとめ上げた。現在のフランス代表は、さながらエリート大学生のように自律し、高い機能性を保っていると言えよう。
しかし、あまりに盤石すぎるがゆえに、勝ち進む中で思わぬ落とし穴にはまる可能性も識者からは指摘される。特にドイツは、過去の対戦でフランスに対し意外と良い相性を示しており、粘り強い「水漏れ上等」サッカーでフランスの隙を突くかもしれない。いずれにせよ、現状のフランスに対する明確な戦術的対策は困難を極めるものと思われる。
Q. メッシ率いるアルゼンチンの「省エネ戦略」はトーナメントで有利に働くのか?
アルゼンチンはスカローニ監督の巧みなチーム設計により、メッシの負担を極限まで軽減しつつ、最大限のパフォーマンスを引き出すことに成功した。メッシは重要な崩しの局面でだけ関与し、過度な運動量を避ける「省エネ」スタイルで得点を量産している。チーム全体のパスワークとワンタッチフリックは精度が高く、相手にボールを持たせながらも密集地帯を効果的に脱出し、効果的なカウンターに繋げることができる。この流動的なサッカーは、スカウティングによる対策が極めて困難なのだ。

さらにアルゼンチンは、比較的有利なトーナメントの山に入り、準決勝までワールドカップ優勝経験国と対戦しない組み合わせになっている。これにより、主力を温存しつつ体力を温存しながら勝ち進むことが可能となるだろう。この盤石な勝ち上がりは一見有利に思えるが、逆に厳しい試合を経験しないまま決勝まで進んだ場合、土壇場でギアを上げられるかが不安材料となる可能性も識者は示唆する。
Q. 中堅国や開催国の「真の躍進」はワールドカップにどのような影響を与えるのか?
今大会は、ノルウェー、エクアドル、そしてホスト国であるアメリカやメキシコといった中堅国の躍進が顕著だ。グループステージを突破し、決勝トーナメントに駒を進めたこれらの国々は、過去のモロッコのようにベスト8やベスト4まで食い込む可能性を秘めている。
特にコロンビアはその筆頭に挙げられる。ハメス・ロドリゲスを巧みに起用しつつも、守備面での穴を作らず、中盤の強度の高さと縦への素早い攻撃を特徴としている。ポルトガル戦ではその戦術が十分に機能し、内容的には相手を凌駕していた。ルイス・ディアスをはじめ、多くの選手が有機的に連動し、両サイドバックも積極的に攻撃参加する南米らしい勢いのあるサッカーを展開する。準々決勝でアルゼンチンと対戦すれば、大いに苦しめることが予想される。こうした中堅国の活躍は、大会にさらなる興奮とドラマをもたらし、サッカーファンを魅了するだろう。
Q. 走行距離や戦術スタイルの違いは、今大会の勝敗を分ける要因となるか?
今大会は二つの対照的な戦術スタイルが勝敗に大きく影響を与えている。「走行距離上等」でリスクを厭わないドイツの「水漏れサッカー」と、失点リスクを抑える「省エネサッカー」を展開する日本やアルゼンチンだ。
現代サッカーではゲーゲンプレスのような激しいプレッシングが主流だが、過密日程と高温環境下ではその精度を保つのが難しい。アルゼンチンのように、ワンタッチやショートパスで相手のプレスを回避する「密集脱出」の技術は、その分疲労を軽減しつつ攻撃へと転じられるため、現代戦術の肝と言えよう。
データを見ると、走行距離ランキング1位のアメリカ、2位のドイツと対照的に、日本は36位、アルゼンチンは45位と低位に位置する。日本の高速走行(40位)やスプリント(38位)が少ないのは、意図的な戦術によるものだけでなく、度重なる移動によるコンディション不良の影響も考えられる。現地取材陣もブラジルワールドカップ以上の肉体的な疲労を訴えており、特に国境をまたぐ移動が選手に与えるダメージは大きい。
日本対ブラジル戦は、この「移動による疲労」と「暑さによる疲労」という、今大会特有のコンディション要因が勝敗にどう影響するかを測る試金石となる。日本は移動を犠牲にし涼しい環境を選んだ一方、ブラジルは移動を抑えたが暑い中での試合を強いられた。どちらの戦略が最終的に奏功するのか、その結果は今後のサッカー界にも影響を与えるだろう。
Q. ワールドカップの「死の山」と「楽な山」、どちらが優勝に導くか?
今大会の決勝トーナメントの組み合わせは、まさに「死の山」と「楽な山」の様相を呈している。フランスが位置する左上のブロックにはドイツ、オランダ、スペインといった強豪がひしめき、決勝までの道のりは険しい。苦しい試合を乗り越えることでチームが成長し、自信を深めるという考え方もある。
一方、アルゼンチンが位置する右下のブロックは、準決勝までワールドカップ優勝経験国と当たらない有利な組み合わせだ。主力を温存しつつ体力的な消耗を抑えて勝ち進めることが可能だ。どちらの戦略が最終的に優勝へと繋がるのか。過酷な戦いを経験した方が強いのか、それとも体力温存が賢い選択なのか、今大会の大きな見どころの一つと言える。
Q. 識者たちは今大会の優勝国とMVPをどのように予想するのか?
識者たちの優勝国予想は三者三様だ。小澤一郎氏は「負ける絵が描けない」圧倒的な完成度と選手層の厚さを持つフランスを挙げる。ミムラユウスケ氏は2021年コパアメリカでの苦しい戦いを乗り越えた経験を評価しアルゼンチンを推す。木崎伸也氏は、フランスに対する相性の良さと「水漏れ上等」サッカーで大穴のドイツを予想した。

MVP予想も優勝国と連動する。小澤氏はデシャン監督からの絶対的な信頼と開放的なプレーでフランスを牽引するエムバペを本命とする。ミムラ氏は得点王争いをリードし、たとえ優勝を逃しても準優勝で受賞例があることからメッシを予想。木崎氏はドイツが優勝した場合、複数のポジションをこなす貢献度の高さを評価しカイ・ハヴァーツを大穴で選出した。
イングランドは、引いた相手を崩す戦術に課題があるものの、オープンな展開となる決勝トーナメントでは強みを発揮する可能性を秘める。しかし、メキシコシティでの高地順応という大きな障壁を抱えている。識者らは、今大会がメッシ、エムバペ、ハーランドといったスター選手が順当に活躍する「王道ワールドカップ」としての側面を持ちながらも、予測不能なドラマが生まれると見ている。
今大会は試合数増加によるレベルの差が見られるものの、決勝トーナメントでのジャイアントキリングへの期待も高い。SNSでの動画投稿解禁や、優れた音響効果を持つスタジアムが、ファンの熱狂をさらに加速させている。
さらに、AIによる自動翻訳機能の進化は、メディア分析の新たな地平を切り開いた。言語の壁が劇的に低くなったことで、海外メディアの緻密な分析がリアルタイムで各国のファンに届けられ、サッカー観戦と情報共有は新たな次元へと突入している。このような多層的な要素が絡み合い、今大会はサッカーの歴史に深く刻まれるであろうドラマチックなワールドカップとなるだろう。