
“コミュ力”高い人が話しながら考えていること
話す力だけでは足りない!コミュ力が高い人が使いこなす3つの「モード」とその極意
近年、ビジネスシーンで「コミュ力」が重要視される中、その本質を多くの者が誤解している、と指摘がある。本記事は、92万部ベストセラー作家でありワークワンダーズ代表の安達裕哉氏が提示する、コミュ力の核心に迫る。

安達氏はコミュ力を単に会話が上手な能力と捉えるのではなく、相手の真意を理解し、組織や個人が成果を出すための重要なスキルと定義する。その背景には、かつてデロイトのコンサルタントとして培った知見が深く根差している。彼が語るコミュ力の極意とは何か、詳細を見ていこう。
Q. コミュ力の高い人とは、具体的にどのような能力を持つか?
コミュ力の高い人とは、相手の要望を察知し、それに答える能力が高い者を指す。これは、場の空気を読むといった属人的な勘に頼るものではなく、より技術的なスキルが求められる。自分の話術を磨くことよりも、相手の考えや意図を正確に読み取る「受信力」に重点を置く概念だ。相手の求めるものや考えを当てることを本質とし、質問や投げかけによって、相手自身も言語化できていない真のニーズを引き出す力が含まれる。

また、AIが台頭する現代においてもコミュ力の重要性は増している。仕事は複雑化し、人と共同で働くシーンが増えているためだ。AIへの指示出しや、AIから得られたアウトプットを実務に落とし込む過程でも、人間同士の円滑なコミュニケーションが不可欠となる。したがって、現代におけるコミュ力は、組織全体のパフォーマンスを最大化するために必要不可欠な能力なのである。
Q. 優れたコミュニケーターは、状況に応じてどのような「モード」を使い分けるか?
コミュ力の高い者は、会話の目的に応じて「議論」「共感」「提供」の3つのモードを意識的に使い分ける。このモード切り替えは、コミュニケーションの質を劇的に向上させる上で極めて重要である。各モードにおける自身の発言と傾聴の時間配分は、以下の通りだ。

まず、初対面の顧客や相手との関係構築フェーズでは、「共感モード」を重視する。自身が話す割合は2割程度に抑え、残りの8割は相手の話を聞くことに徹する。これにより、相手は心を開きやすくなり、信頼関係の構築が促進される。
Googleの研究では、ディスカッションにおいては参加者が均等に発言する方が生産性が高まるという結果も出ており、これがいわゆる「議論モード」にあたる。双方の発言割合が5割ずつとなるように進行することが理想だ。
さらに、セミナーや講演のように情報伝達が主目的となる場では「提供モード」に切り替える。このモードでは自身の話す割合が8割となるが、聴講者への問いかけや適切な「間」を用いることで、一方通行にならず、参加者のエンゲージメントを高める工夫も必要だ。このように状況に応じてモードを切り替えることで、コミュ力の真価を発揮する。
Q. ビジネスにおける「聞く」という行為は、どのようなレベルで理解されるべきか?
ビジネスシーンにおける「聞く」とは、単に相手に相槌を打ったり、頷いたりする身体的動作のことではない。それは「質問を通じて相手と同じ土俵に立つ」ための情報収集行為であると定義する。表面的な発言を鵜呑みにせず、その裏側にある真意や具体的な事実を深く探る作業が求められるのだ。
例えば、クライアントの社長が「今年は業績が良かった」と述べた場合、コンサルタントはそこで満足せず、「具体的にどの商材が好調だったか?」「特にどの地域での売上が伸びたか?」といった質問でさらに掘り下げる。これを怠れば、相手の状況を誤解したまま、見当違いの提案をしてしまう可能性が高い。提案の「打率」は、いかに相手が共有する「世界」を深く理解し、共通認識を構築できたかに比例する。デロイトでは、この「聞く力」の精度がコンサルタントの成果に直結するため、非常に重視し、詳細な教育が行われていたという。ただ耳を傾けるだけでなく、戦略的に質問を重ね、相手の視座に立つことがビジネスにおける「聞く」の本当の意味なのである。
Q. コンサルタントが「喋りすぎてはいけない」とされる真意は何か?
安達氏がデロイト時代に運用していた「うちのこだわり」と題された約200項目にわたる行動規範マニュアルの中には、「コンサルタントは喋りすぎない」という鉄則が含まれていた。これは、コンサルタントにありがちな「知識のひけらかし」が顧客との関係において逆効果となることを戒めるものだ。

コンサルタントは専門知識が豊富なため、顧客から相談を受けると、つい知りうる情報を網羅的に提供しようとしがちだ。例えば、「離職率が高い」という相談に対し、原因として考えられる5つの要因を矢継ぎ早に説明する、といったケースが挙げられる。しかし、顧客が本当に聞きたいのは、自分の抱える具体的な問題への解決策のみである。それ以外の余計な情報を与えても、「話が長い」「圧が強い」「人の話を聞かない」といったネガティブな印象を与え、信頼を失う結果を招く。「知識がついた直後は危険。つい喋りたくなる」というマニュアルの言葉が示すように、知識欲に駆られて話すことと、顧客の課題解決に貢献することは別物なのだ。真にプロフェッショナルな態度は、まず相手の話に耳を傾け、聞かれたことに的確に答える、という基本に忠実であることで実現される。
Q. コミュニケーション能力は生まれつきの才能か、後天的に習得可能なのか?
コミュニケーション能力は、決して生まれつきの才能やセンスだけに依存するものではない。それは、言語化し、標準化し、反復訓練を積むことで誰でも後天的に習得可能な技術である。デロイトの中小企業向けコンサルティング部隊では、コミュニケーションを含むコンサルタントとしての振る舞いを細分化し、マニュアル「うちのこだわり」として約200項目にも及ぶ行動規範に落とし込んでいた。これにより、新卒であっても半年で一定レベルのパフォーマンスを発揮できるよう、能力に依存しない再現性の高い育成システムを構築していたのである。
具体的には、朝と夕方に毎日ロールプレイングを実施し、顧客との実例を想定したシミュレーションを徹底していた。この継続的な実践を通じて、新人たちは抽象的な概念を具体的な行動として身につけていった。人材育成においては「標準化」「採用」「教育」の三つの柱が同時に機能することが不可欠であり、どれか一つが欠けても人は育たない。コミュニケーションのような定性的なスキルも、このように「仕組み化」することで、組織全体の能力を底上げできる。この考え方は、人材不足に悩む現代のあらゆる企業に応用可能な育成術だと言えよう。
Q. 「明るい人」と「コミュ力が高い人」の違いは何か?
世間一般には、明るく饒舌な人が「コミュ力が高い」と認識されがちである。しかし、安達氏は「明るさ」はコミュニケーションの一側面であり、万能ではないと明確に区別する。真のコミュ力の目的は、状況が求める役割を的確に遂行し、「成果を出す」ことや、相手に「貢献」することに本質があるのだ。

明るさが求められる場であればその特性は輝くが、ビジネスにおいて全ての状況で「明るさ」が最適とは限らない。例えば、クライアントの深刻な問題を話し合う場で、終始明るく振る舞うことは不適切だ。その場に求められるのは、相手に寄り添い、真摯な姿勢で問題解決に導くコミュニケーションであり、自身の明るさを押し出すことではない。コミュ力の高い人とは、自身のコミュニケーションスタイルを場の要請に合わせて柔軟に調整し、最終的な目標である「成果」と「貢献」を達成できる者だ。「言葉より成果、貢献」という安達氏の言葉は、コミュニケーションの手段がどうであれ、目的を常に意識することの重要性を雄弁に物語る。また、「自分にしか関心がない」人間は、他者から見れば浅はかで、協力関係を築くことは難しい。真のコミュ力とは「相手軸」に立って行動できる力だ。
