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成長を奪う「ホワイトハラスメント」の正体
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2026年6月21日

今、残業しないようにしたり、部下が失敗しないようにして逆に若手が成長の機会を奪われてしまっていると感じてしまうホワイトハラスメントが起きている。 最新の転職業界の動向をマイナビ キャリアリサーチLabの関根貴広氏と紐解く。 <ゲスト> マイナビ キャリアリサーチLab|関根貴広 2006年、中途で...
良かれと思った「配慮」が若手の成長を阻む? “ホワイトハラスメント”の実態と解消法を解説
転職やキャリアへの価値観が多様化する中で、「ホワイトハラスメント」という言葉が話題を集めている。
これは上司や先輩が良かれと思い部下や後輩に過剰に配慮した結果、意図せず彼らの成長機会を奪ってしまう行為を指す。
本稿では、このホワイトハラスメントの実態と、なぜこのような現象が起きるのか、そして成長意欲の高い人材が職場を去ることを防ぐための対策を解説する。

Q. 「ホワイトハラスメント」とは一体何のことか?
ホワイトハラスメントとは、上司や先輩が部下や後輩に対して過剰に配慮し、結果的に相手の成長機会を奪ってしまう行為である。これは決して悪意がある行為ではなく、むしろ部下を守ろうとする善意から生まれる場合が多い。例えば、失敗を恐れて重要な仕事を任せない、残業させないために業務を代わってしまう、体調を気遣って役割を制限するなどが典型的なケースだ。
近年のビジネス環境では、居心地は良いがスキルが身につかない「ゆるブラック企業」に危機感を抱く若手社員が増えている。かつての転職理由がブラック企業からの脱却や年収アップであったのに対し、現代の若手は「成長できないこと」を転職の最大の動機と捉えている。終身雇用の形が変化し、自身の市場価値を高めることへの意識が強まった結果、成長機会を奪われることが彼らの将来への不安に直結するのだ。
実際に、成長を求めて転職した中途入社1年以内の社員の13.6%が、新しい職場でもホワイトハラスメントを経験したというデータがある。この事実は、ホワイトハラスメントが特定の企業文化の問題ではなく、多様な職場で起こり得る現代の普遍的な課題であることを示唆する。

Q. なぜ良かれと思った配慮がハラスメントとなるのか?その4類型とは何か?
ホワイトハラスメントは、法的に問題のある「パワハラ」や「セクハラ」とは異なり、個人の主観が大きく影響するグレーゾーンに存在する。問題の本質は、上司の「配慮の出し方」と部下の「仕事の任せられ方」のミスマッチだ。上司側がどんなに良い意図を持っていても、受け手が成長機会を奪われたと感じればハラスメントとなり得る。
**失敗回避型フォロー**: 部下の失敗を恐れ、過剰に仕事に介入したり、責任を負わせないようにしたりする。上司の親心が、部下の「挑戦したい」という意欲を阻害する。
**制度遵守型フォロー**: 残業規制やコンプライアンス順守などを意識するあまり、上司が部下の仕事を途中で引き取ってしまうケース。制度自体は正しくとも、部下との説明や合意なしに行うと、成長機会の喪失と捉えられる可能性がある。
**制度起因の役割制限**: 休職からの復職者や時短勤務者などに対し、体調や制度上の理由から責任のある仕事を減らすパターン。上司側は良かれと思っているが、十分な説明がなければ部下の意欲を削ぐ結果となる。
**説明のない役割制限**: 最も危険なパターン。合理的な理由や説明がないまま、仕事を任せない状態が続く。これは「静かな排除」にも繋がり、部下は「自分は不要な存在だ」と感じ、エンゲージメントが著しく低下する。コミュニケーション不足が深刻化している状態と言えるだろう。
これら4類型に共通するのは、部下に「責任感を伴う仕事」を与えられない、あるいは与えるのを躊躇している点である。配慮しているつもりが、成長を阻む足枷になっているのがホワイトハラスメントの根源だ。
Q. ホワイトハラスメントを感じやすい人材にはどのような特徴があるか?
ホワイトハラスメントを感じやすいのは、「面倒な若手」というよりも、むしろ企業が定着してほしいと願う、成長意欲の高い優秀な人材である。
**過去の成長停滞経験**: 前職で「周囲の評価は高いのに、自身のキャリアが停滞している」という経験を持つ傾向がある。彼らは現状維持ではなく、常に成長と自己更新を求めている。
**高い成長実感重視度**: 自発的なスキル習得やリスキリングに意欲的であり、出世意欲も強い。現状への不満よりも、さらに役割を広げ、ステップアップしたいという前向きな意識が特徴だ。
**強い成長への期待**: 顧客からの直接的な評価、感謝、新しい挑戦機会、そして自身の働きが報酬に反映されることに対し、大きなやりがいを感じる。このような「成長に直結するフィードバック」が、上司の過剰な配慮によって減少すると、自身の成長が阻害されていると敏感に捉えてしまう。
企業にとって最も憂慮すべき点は、ホワイトハラスメントを放置すれば、このような意欲的で将来有望な人材を失うリスクを抱えることである。彼らは成長機会を求めて転職を決意する可能性が高く、組織にとって大きな損失となるだろう。
Q. 現代の職場でホワイトハラスメントが生まれる背景はどこにあるか?
ホワイトハラスメントが生じる背景には、複数の要因がある。
第一に、若手社員と企業の間に「成長スピードに対する認識のズレ」が存在する。大学生の3割以上が「入社後2年目までに一人前になりたい」と考える一方、企業側は「3年以上」の期間をかけて育成を考えている傾向がある。この期待値のギャップが、若手の焦りや不満に繋がることが多い。
第二に、就職活動における価値観の変化も背景にある。コロナ禍を経て就活生の「安定している会社」志向が高まったが、「安定」の定義は多岐にわたる。単に企業が安泰であれば良いと考えるだけでなく、「市場価値を高めるためのスキルを安定的に習得できる環境」を求める層もいる。こうした人材は、入社後の成長機会が期待と異なれば、企業に失望しミスマッチを感じやすい。
第三に、SNSの普及がハラスメントという言葉を増幅させている側面も無視できない。個人が職場で感じた不快感や違和感を「〇〇ハラスメント」という分かりやすいラベルを貼ってSNSで発信すると、それに共感が集まり、感情が増幅されやすい構造になっている。本来は個別に対話すべき事柄が、一元的に「ハラスメント」として社会に認知されやすい土壌が形成されているのである。
ホワイトハラスメントは法的問題と個人の主観の間に位置するグレーゾーンであり、安易にSNSで「ハラスメントされた」と発信する前に、冷静に状況を分析し対話で解決する姿勢が重要である。

Q. 期待のズレを解消し、ホワイトハラスメントを防ぐためには何が必要か?
ホワイトハラスメントの解決策は、「配慮するか否か」という二者択一的な議論ではない。最も重要なのは、上司と部下が互いの期待を「言語化」し、共有することから始める点だ。期待の方向性がズレている上に、仕事の任せ方や責任の線引きに関する言語化が曖昧な状態が「ホワイトハラスメント発生領域」であり、これは誤解を固定化させ、両者にとって不幸な状況を生む。
このズレを解消するためには、「すり合わせの循環」を継続的に行うことが不可欠だ。
**1. 期待の言語化**: 自身の期待(何をしたいか、どう成長したいか)と企業側の期待(何を任せたいか、どのように育成したいか)を明確な言葉にする。
**2. 業務の設計**: 言語化された期待と意向に基づき、業務内容や裁量、責任範囲を上司と部下双方で具体的に設計する。
**3. 振り返り**: 実行した業務や与えられた裁量について、定期的に「どうだったか」を振り返り、現状と期待値のギャップを共有する。
**4. チューニング**: 振り返りを経て、設定した期待や意向、業務の方向性を常に調整・修正する。一度決めたからといって固定せず、変化に対応していく姿勢が求められる。
現代社会では、リモートワークの普及やデジタルツールの進化により非対面でのコミュニケーションが増えている。これにより互いの意図や感情のニュアンスが伝わりにくく、すれ違いが生じやすくなっている側面もある。だからこそ、意識的に対面の場を設け、「腹を割って話す」ような丁寧なコミュニケーションを通じて、温度感を共有し、お互いの認識を擦り合わせていく姿勢が、ホワイトハラスメントを防ぎ、健全な人材育成に繋がるだろう。