健康新常識
ニオイ対策/悪臭は健康の危険信号/4大体臭/40~50代は全ニオイ発生/若くても疲労臭・ストレス臭に注意
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2026年7月3日

体臭が気になる夏。ニオイ対策はビジネスパーソン必須のマナーだ。「ニオイは健康のバロメーター」と語る内科医・認定産業医の桐村里紗氏が、「4大体臭」が発生するメカニズムと対策を徹底解説する。 <出演> 桐村里紗 内科医/認定産業医/天籟株式会社 代表取締役医師 三田友梨佳 MC/フリーアナウンサー 森...
体臭は健康のバロメーター?悪臭を危険信号と捉えよ
ビジネスシーンで、体臭や口臭の悪臭が契約打ち切りにまで至るケースがあるのをご存じだろうか。体臭は個性を表現するものである一方で、時に人間関係やビジネス成果にまで影響を及ぼす厄介な問題となる。表面的な匂い対策だけでは不十分なのはなぜだろうか。本稿では、医師である桐村里紗氏の知見に基づき、体臭が単なるエチケットの問題ではなく、体の内側からの「健康のバロメーター」として、どのように捉え、適切に対処すべきかを解説する。

Q. なぜ体臭はビジネスシーンで問題となるのか?
体臭が「悪臭」と化した際、それはビジネスにおいて看過できないネガティブな影響をもたらす。あるデータによれば、悪臭が原因で契約を打ち切ったり、仕事関係を控えた例も少なくない。人間は無意識のうちに相手の匂いを評価しており、それが第一印象や信頼感にもつながる。特に注意したいのが40~50代である。この年代は、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、そして疲労・ストレス臭といった複数の体臭が同時に発生しやすい「匂いのパーフェクトストーム」に陥りやすい。これはまさに体からの危険信号であり、自身の健康状態や生活習慣を見直す機会と捉えるべきである。決して他人事ではなく、全てのビジネスパーソンが意識すべき課題である。
Q. 特に40~50代が注意すべき4つの代表的な体臭とは何か?
体臭は、その種類によって特徴や発生源、そして不快に感じる年代が異なる。特に気をつけたい代表的な体臭は以下の4つだ。

汗臭:ピークは10〜20代。汗に含まれる乳酸などが分解されて生じる酢酸のような酸っぱい匂い。脇や足の裏から発生するが、男性は年齢を重ねても汗量が減りにくく、対策が必要な場合が多い。
ミドル脂臭:30〜40代、特に40歳頃がピーク。「枕が臭い」と表現されることが多い、後頭部や首の後ろから発生する、使い古した油のような匂い。汗の中の乳酸が菌により分解され、中鎖脂肪酸と合わさることで発生する。
加齢臭:50代頃から目立つ。胸や背中といった体幹部から発生し、古本や枯れ草、ロウソクのような独特のひなびた匂いが特徴。皮脂の酸化が原因で「2-ノネナール」という成分が生じる。男性特有と思われがちだが、女性も閉経後に女性ホルモンの減少により皮脂の酸化を抑えられなくなり発生する。20〜30代でも生活習慣の乱れから「早期加齢臭」が発生する可能性があるため油断できない。
疲労臭・ストレス臭:年代を問わず発生する体臭。肝機能や腸内環境の悪化によって起こり、主にアンモニア臭が主原因となる。ストレスが加わると交感神経が優位になり皮脂の酸化が進むため油臭く、緊張により足裏の汗が増えるため納豆のようなイソ吉草酸系の匂いも混じる。これら複合的な悪臭が、激論を交わす会議室などで感じられることもある。
これらの中で、男女共に最も不快と感じ、若い世代ほど許せないと回答したのは汗臭であった。特に25〜34歳の女性の100%が汗臭を「許せない」と回答している事実は衝撃的だ。一方で、ミドル脂臭も非許容度が高く嫌われやすい。意外なことに、古本のような匂いの加齢臭は、油臭い体臭と比べて許容度が高い結果となっている。「人の奥行きを感じる」と捉える向きもあり、一概に悪とする必要はないかもしれない。しかし、疲労や生活習慣の乱れによる悪臭化した場合は、その変化に気づき、生活習慣を見直す良い機会となるだろう。
Q. 自分の体臭に気づきにくいのはなぜか?
自分の体臭は非常に気づきにくいものだ。これは人間の嗅覚の特性である「馴化(じゅんか)」によるもので、常に自分のテリトリーにある匂いは、脳が危険ではないと判断し、感知しないようにプログラムされている。動物が自分の匂いを無意識に無視することで、他者の匂いの変化に敏感に反応し、敵の接近などを察知するための本能的な機能である。このため、どんなに強い体臭を発していても、本人は全く気づいていないという状況が起こり得る。香水のように後から付着する匂いは認識しやすいが、体内から発生する持続的な体臭は感知されにくいため注意が必要である。そのため、自己診断は困難だ。

自分の体臭の変化に気づくためには、信頼できる他者の助けが必要だ。配偶者や親友など、何でも言い合える関係の相手と「匂い協定」を結び、悪臭を放っていたら率直に伝えてもらうことを推奨する。その際、単に「臭い」と指摘するのではなく、「最近ちょっと疲れてない?」と相手の健康状態を気遣う言葉で伝えることで、不快感を与えることなく、お互いを思いやる文化を育むことができる。特にビジネスシーンでは、直接的な指摘は人間関係を損ねる恐れがあるため、普段から家族間でそのような気遣いの会話を持つことが、自身の悪臭を社会に放出しないための有効な手段となるだろう。
Q. 「良い香り」が他人には「香害」になるのはどういう状況か?
自分の好きな香りでも、他者にとっては必ずしも好意的に受け止められるとは限らない。匂いは極めて主観的な体験であり、人それぞれ快・不快の感じ方や体の反応が異なるからだ。特に、香水や柔軟剤の強い香りが、他人の体調に悪影響を及ぼす「香害(こうがい)」の問題が指摘されている。頭痛、吐き気、集中力低下といった症状を訴える人も少なくない。
さらに、よかれと思って使った香りが体臭と混ざり、「変調」して予期せぬ悪臭に変化するリスクもある。例えば、ある匂い(A)と別の匂い(B)が組み合わさることで、全く異なる悪臭(Z)になる現象である。これは、人の体から数百種類もの匂い分子が放出されており、そこに外部の香りが加わることで化学変化を起こすためだ。合成香料や、香りを長持ちさせるフタル酸エステルなどの化学物質が使われている製品も多く、これらが化学物質過敏症の引き金となったり、内分泌を撹乱する作用を持つ可能性も指摘されている。匂いはパーソナルなものであると同時に、他者への「エチケット」でもある。香りの選択と使用量においては、常に他者への配慮を忘れないようにすることが重要である。可能であれば無香料の製品を選ぶか、香りを控えめに使用することを心がけるべきだ。
Q. 体臭を根本から改善するためにできる対策はあるか?
体臭の根本的な改善には、表面的な対策だけでなく、体の内側からのアプローチが不可欠である。体臭の変化は、腸内環境の悪化、肝機能の低下、ストレス過多といった体のサインであるため、それらの原因を見つけて対処することが重要だ。

生活習慣の改善:規則正しい食生活、十分な睡眠、適度な運動は腸内環境と肝機能の改善に直結し、結果として体臭の悪化を防ぐ。
腸活:腸内環境が整うと、若い女性特有の甘い香りである「ラクトン」の生成が促進される。ラクトンはピーチやココナッツのような香りで、加齢臭やミドル脂臭をカモフラージュする効果が報告されている。ラクトンを配合した石鹸なども市販されているが、根本的には腸活を通じて内側から香りを引き出すことが望ましい。
疲労・ストレス対策:ストレスは疲労臭や油臭を引き起こす。自身のストレス発散法を見つけ、こまめにストレスを解消することが体臭対策にもつながる。
ワキガへの対応:ワキガは日本人の約1割に見られる体質で、欧米人やアフリカ系の人種ではより一般的である。これはエクリン汗腺とは異なるアポクリン汗腺から発生する匂いであり、体質によるものが多い。気になる場合は、市販の制汗剤でピンポイントに汗を抑えたり、皮膚科などで専門的な治療を受けることも選択肢となる。
体臭対策は、自分の体を労り、健康的な生活を送ることと密接に関わっている。一時的な対処法ではなく、長期的な視点で体の内側からの改善を目指すことが、真に心地よい自分を作り出すことにつながるだろう。