
結婚は技術だ【植草美幸】
結婚は「技術」が9割:婚活プロが語る「高望み」の現実と成婚を呼ぶ「客観視」の極意
多くの人々が結婚を恋愛の延長線上にあるものと考えがちである。しかし、結婚相談所のプロは「結婚は恋ではなく技術だ」と断言する。
長年連れ添うパートナーを見つけたいと願う人々が相談所に訪れる中、そこには、約9割の人が実践できていないある重要な能力、そして磨くべき複数の「技術」の不足が横たわっているのだ。
本記事では、婚活のプロである植草氏が語る「結婚に不可欠な技術」をQ&A形式で深く掘り下げていく。

Q. 結婚は「恋」ではなく「技術」だと言うが、どういうことか?
これまで結婚できなかった者は、同じ生き方を続けても結婚はできないと語る。だからこそ、不足している「技術」を身につける必要があるのだ。
自分に何が持ち合わせていないのかを理解し、それを習得することこそが、「技術が必要」と結論付ける。
この「技術」には様々な側面が含まれるが、婚活市場で自身の希望に見合う相手を探し、実際に結ばれるためには、自らの状況を客観的に判断し、適切な行動をとることが求められる。単なる感情に任せるだけでは、理想の結婚には到達できない。
Q. 婚活における「高望み」の実態とは? 男女別の具体的な例も知りたい。
婚活で結婚に至らない人の9割は、自分を客観視できておらず、「高望み」をしていると指摘される。
例えば、年収100万円の女性が年収800万円の男性を望んだり、50代の男性が20代の女性との結婚と子宝を夢見たりするケースだ。特に後者は、自身の年齢や状況を鑑みない「本物の高望み」に他ならない。

さらに、過去の結婚経験があり成人した子どもがいるにもかかわらず、自分の子どもと同年代の女性を求める男性も存在する。これは極めて現実離れした願望と言える。
女性側では、年収400万円でありながら倍以上の年収を相手に求める例や、「有名人と結婚したい」と相談所に現れ、札束で交渉しようとするような極端な勘違いも存在した。これは、自身の市場価値を誤解し、結婚をビジネスと同一視する危険な思考に他ならない。
かつて言われた「玉の輿」願望も現代に存在するが、それが実現できるのは、多くの場合、女性の「若さ」という武器が男性の「年収」や「社会的地位」と合致する場合のみである。同年代での「玉の輿」は極めて稀で、多くの女性が、友人やSNS上の情報を基準にして「高望み」をする傾向にあるという。
Q. 相手に響く「コミュニケーションの技術」とは? 具体的な会話のNG例や効果的な方法を教えてほしい。
コミュニケーション力不足は、成婚を阻む大きな要因である。特に男性に多い失敗として、女性が悩みを打ち明けた際に、解決策やアドバイスを与えがちなことが挙げられる。
女性は多くの場合、「共感」を求めており、解決策は「否定された」「ケチをつけられた」と感じてしまう。そのため「大変だったね」「偉かったね」と共感を示すことが重要である。
一方、女性のNG会話パターンには二つある。一つは「サイレントウーマン」と呼ばれる、一問一答でしか返答せず会話が続かないタイプだ。これは男性を疲弊させる。
もう一つは、目の前の相手が全く知らない友人関係の話などを一方的に長々と話すタイプだ。これは自己中心的と受け取られ、男性を辟易させる結果となる。
効果的な会話の技術は「同調と褒め」の繰り返しだ。相手の言葉の全てを受け止め、ポジティブな言葉で肯定し、具体的に褒めることが大切だ。例えば「料理した」と聞けば「八百屋でわざわざ買って料理するなんてすごい」といった具体的な賞賛が、相手の心を強く開かせると述べた。
Q. 結婚において「見せ方」や「決める技術」とはどのようなものか?また、得意な職種と苦手な職種があるのか?
自分を「どう見せるか」という見せ方の技術も不可欠だ。初対面時の外見から、交際時の言葉遣いまで、あらゆるシーンで「自分はどう見られているか」を意識し、適切に調整する必要がある。
プロフィール作成においても、ストーリーを巧みに盛り込むことで、多くの申し込みを引き出すことが可能である。座り方や姿勢なども、相手への印象を左右する重要な要素だとされる。

職業によっては、この対人スキルや見せ方の習得に差が出ることがあると指摘した。
技術職や研究職は、普段人と向き合う機会が少ないため、コミュニケーションに苦戦する傾向がある。初デートで「飯でも食うか」と発言し、相手を不快にさせる例などもその典型だ。
一方で、医師は「患者だと思えば良い」というアドバイスで問診のように相手の情報を引き出し、会話を進められるため、婚活に強いと述べた。
また、婚活において「決める技術」も重要である。デートの日程や場所をなかなか決められない「決断力ゼロ」の人は、男女問わずモテない。
人気があるのは、自分の都合の良い日をいくつか提示し、複数の選択肢から店を選ぶなど、スムーズに物事を決められる者だ。現代の女性には、幼少期に刷り込まれた「プリンセス願望」や「リードは男性がすべき」という昭和の価値観が残っている場合が多いが、「できる方がやる」という意識のアップデートが必要である。
Q. 結婚のために「客観視」がいかに重要か?どのようにして客観視を磨くことができるか?
婚活で結婚がうまくいかない人の9割は、自分を客観視できていないと分析する。自分の「身の丈」を理解できる残りの1割は、現実的な相手選びができ、スムーズに結婚に至っているという。
結婚は、大谷翔平選手のような努力が実を結ぶ「夢」ではなく、「相手ありきの現実」である。自分の努力だけではどうにもならず、相手に選ばれなければ成立しないのだ。自分の立ち位置を見誤れば、結婚は不可能だと強調した。
高望みを抱く者に対し、頭ごなしに否定はしない。まずは「なぜその条件が必要なのか」を問う。その結果、「なんとなく」で決めた条件は、現実的なシミュレーションを通して「不要だった」と本人が気づくことが多い。
例えば、50代で20代の女性と結婚したいと望む男性には、将来の「子の養育費用」「老後の生活費」「相手の両親の承認」など、具体的な現実を突きつけ、客観的な判断を促すのだ。
自分を客観視するための最も効果的な方法は、高校生や大学生時代の「異性の友人」に本音で相談することだ。利害関係が薄いため、最も率直で的確なアドバイスをもたらす可能性が高いと説明した。反対に、同じ境遇の独身者同士で相談するのは「傷の舐め合い」や「抜け駆け禁止」の心理が働きやすく、避けるべきだとしている。
Q. 希望条件の調整は「我慢」と捉えるべきか、「納得」と捉えるべきか?
希望条件を下げることを「我慢」してはいけないと述べる。我慢して得た関係は長続きしないため、無理に相手の年収を妥協しても結婚生活は破綻してしまう。
重要なのは「納得」である。「実はこの条件は自分の幸せに必須ではなかった」と論理的に考え、心から納得することが必要だ。そうすることで視野が広がり、より柔軟な相手選びが可能になる。
ただし、「生理的に無理」という感情は別だ。これは理屈を超えた本能的な拒絶反応であり、どんなに好条件の相手でも、生理的な嫌悪感がある場合は、我慢せずに断るべきだと明言した。
Q. 婚活を通して得られるスキルはビジネスシーンにも活かせるのか?
婚活で身につくスキルは、ビジネスシーンにも応用可能だ。特に営業職においては、顧客(相手)が何を求めているのかを深く考え、自分をどう見せれば納得・成約に繋がるかを戦略的に考える力が必要になる。

自身の「こうしたい(I want to)」という願望ばかりでなく、「相手に何をしてあげられるか(What can I do for you)」という視点が重要である。これは謙虚さにも繋がり、ビジネスの基本姿勢にも通じると言える。
実際、植草氏のもとには企業から営業マン向けのセミナー依頼も来るという。婚活で培われた対人関係構築、相手理解、自己分析のスキルは、営業成績向上に大きく寄与すると述べた。
Q. 最後に、植草氏にとって結婚とは何か?そして最も大事な技術とは?
植草氏にとって結婚とは、「一人じゃない」ことだと語る。
嬉しいことも辛いことも分かち合い、支え合って共に人生を生き抜く「一番の味方であり戦友」を得ることである。この「戦友」がいるかいないかの違いは人生を大きく変えるのだ。
そして、そのために最も大事な技術は、「謙虚さを持って相手を知ること」
そして「自分自身を客観視し、明確な未来予想図を描いて、それに合致する相手を冷静に見抜く力」である。この技術こそが、理想のパートナーシップへと導く最大の鍵だと言えるだろう。
