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部下は平等に扱うな?
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2026年5月22日

「できる上司スキル」後編では、上司が部下に”やってはいけないこと”を深掘り。 部下のモチベーションは上げるな、部下は平等に扱うな、退職の理由は聞くな——。 その納得の理由とは?上司が部下に期待すべきこととは? 『仕事ができる上司の当たり前』著者の西原亮氏が語る「できる上司」のコミュニケーションスキル...
部下育成の新常識:リーダーが知るべき逆説的マネジメント術
現代のビジネス環境はめまぐるしく変化しており、上司と部下の関係性もまた、新たな視点での見直しが求められている。従来の「常識」が必ずしも通用しない時代、部下の能力を最大限に引き出し、チーム全体の成果を向上させるためには、どのようなマネジメント術が必要だろうか。この疑問に答えるべく、西原亮氏の『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』から導き出される実践的な知見をQ&A形式で解説する。

Q. 部下のモチベーション向上は上司の役割ではないのか?
部下のモチベーションを「上げる」ことは、上司の役割ではない。なぜなら、人のモチベーションはプライベートの事情や個人の価値観など、上司がコントロールできない無数の変数に影響されるからだ。職場での評価や成功が家庭での問題一つで簡単に帳消しになることもある。モチベーションの源泉は給与、成果、感謝の言葉など人それぞれであり、一律の施策では全員のやる気を高めるのは不可能である。これはゴールが見えないマラソンのようなもので、上司を疲弊させるだけで効果は期待できないだろう。

それよりも上司が注力すべきは、部下のモチベーションを「下げない」ことである。曖昧な指示を避けたり、パワハラ行為をなくしたりするなど、普遍的かつ再現性のある「やってはいけない行動」を組織で共有し、徹底するほうが効果的である。これらはどの部下にも共通して適用でき、不必要なモチベーションの低下を防ぐ確実な手段となるだろう。
Q. 上司が部下を比較してはいけないのはなぜか?
上司が部下を他者と比較する行為は、多くの場合、直接指摘する勇気のない上司の「逃げ」でしかない。「同僚の佐藤はこんなにできているのに」「新人の加藤の方が件数を挙げている」といった比較は、部下の心に劣等感や不満を植え付けるだけで、本質的な成長には繋がらないだろう。さらに最悪なのは、「俺の若い頃はもっとできた」と、上司自身の過去の経験と比較することである。時代背景も働き方も大きく異なる現代において、過去の「成功体験」は通用しない。そのような比較は部下の心と上司との距離を離す原因にしかならないだろう。
部下へのフィードバックは、比較ではなく客観的な基準に基づくべきだ。例えば、「この資料は20日間で仕上げるのが基準である。君が時間をかけたポイントはどこか、一緒に考えよう」というように、具体的な事実に基づいて改善点を指摘し、支援者としての姿勢を見せる。そうすることで部下は課題を特定しやすくなり、前向きに問題解決に取り組むことができるだろう。
Q. 部下を平等に扱わないほうがよいというのはどういうことか?
部下を全員一律に平等に扱うことは、組織にとって逆効果になる可能性がある。上司の時間は有限な経営資源であり、誰に、どのように時間を使うかを戦略的に判断する必要があるからだ。できない部下のフォローばかりに時間を割いていると、結果を出している優秀な部下は「自分は見てもらえていない」と感じ、物足りなさから離職してしまう危険性があるだろう。組織の成果を最大化するには、指摘されたことを素直に改善できる部下、すなわち「投資対効果が高い」と見込める部下に重点的に時間を使うべきである。これは冷酷な判断ではなく、限られた資源を最適に配分するという上司の重要な責務である。

成果の出ない部下を切り捨てるという意味ではない。その部下のレベルに合わせた適切な「期待値」を設定し直すことが重要だ。「まずはお客様へ一人で商品説明ができるようになる」「半年後に新規顧客を1件獲得する」など、個人に合わせた達成可能な目標を与えることで、各人がチームへの貢献度を感じられるように促す。全員に同じ高い目標を課すのではなく、個々の能力に応じた役割を与えることで、チーム全体としての目標達成を目指すのである。
Q. 年上部下との効果的なコミュニケーション方法は?
年上部下をマネジメントする際に、上司が彼らの経験やプライドと正面から戦おうとしてはならない。多くの年上部下は、長年のキャリアで培ってきた自身の経験を否定されたくないという強い欲求を抱えているからだ。世代や経歴が異なる部下に対し、指示命令口調で接すると、反発を招き関係性が悪化する可能性が高いだろう。
効果的なアプローチは、彼らを「頼る演出」をすることである。具体的には、「〇〇さんの知恵を貸してください」と切り出すのが非常に有効だ。何か依頼をする際も、「お願いできますか」ではなく、「これはご相談なのですが」と言葉を和らげることで、彼らの経験やスキルを尊重するメッセージを伝えることができる。そうすることで、年上部下は「自分の力が役立つ」と感じ、前向きに協力してくれるようになる。また、年上の部下には敬意をもって接し、常に丁寧語を使うなど、社会人としての礼節を忘れないコミュニケーションが信頼関係構築の基本となる。上司には、相手の経験値や立場に合わせてコミュニケーションスタイルを柔軟に「チューニング」するスキルが求められるのである。
Q. 上司として完璧主義を捨てるべき理由は何だろうか?
上司が陥りがちな「完璧主義」とは、多くの場合、自分自身がプレイヤーだった頃の成功体験や基準を部下に押し付ける行為である。しかし、時代や業界の状況、個々の部下の特性が異なる中で、かつての自分の「正しさ」が必ずしも今の部下や組織にとっての最適解であるとは限らない。自身の経験に基づいた「完璧な指示」が、データ分析の結果、むしろ成果に繋がらないこともあり得るのだ。この過剰な完璧主義は、上司自身にも部下にも不要なストレスを与え、多様な視点や新しいアイデアの芽を摘んでしまう危険性があるだろう。

また、上司は常に「機嫌よく」振る舞うことを意識すべきである。上司というだけで、部下は程度の差こそあれ緊張を伴って接する。そこに上司の不機嫌な態度やため息が加わると、チーム全体の士気は著しく低下し、部下は安心して報告や相談ができなくなるだろう。上司の感情は組織全体に大きな影響を与えるため、「機嫌の良さ」は上司に求められる重要な「仕事」であると言える。部下が働きやすい心理的安全性のある環境を整えることも、上司の重要な責務だ。
Q. 「分からない」と言える上司が部下からの信頼を得られるのはなぜか?
上司だからといって、あらゆることを完璧に理解している必要はない。完璧を装うことは、むしろ部下からの信頼を失う原因になりかねない。言っていることと行動が食い違う「言行不一致」の状態は、部下から上司への不信感に繋がりやすいからだ。さらに、自分が言行不一致の状態にならないよう、上司が部下への指摘をためらってしまうという悪循環に陥ることもあるだろう。

部下からの信頼を得るには、「自分ができること」「できないこと」「これから挑戦したいこと」をオープンに開示する勇気が求められる。特に「この領域は未経験で、分からない」と正直に伝えることで、部下は上司に対して現実的な期待を持つことができる。そして、その「分からない」部分で自らの知識やスキルを活かせる機会を見出すことができ、より積極的な協力体制を築きやすくなるだろう。等身大の自分を見せる上司は、部下にとって相談しやすく、共に課題解決に取り組める存在となり、健全な信頼関係を築けるのだ。
Q. 部下から退職の意思を伝えられたら、どのように対応するのが最適か?
部下から「辞めたい」と伝えられた時点で、その決意は99%固まっていると認識すべきだ。その段階で退職理由を執拗に追求したり、過去の貢献度を盾に非難したりしても、本音を聞き出すことは難しく、関係性がさらに悪化するだけでメリットはない。過去の行動を責めることなく、不平不満も言わず、静かに聞き入れる姿勢が重要である。
この時に最も大切なのは、部下の今後の挑戦を心から応援する姿勢を示すことである。「次はどのような分野で力を発揮したいのか」「あなたの幸せを願っている」というメッセージを伝える。そうすることで、円満な形で退職してもらうことができる。これにより、将来的にその部下が社外で貴重な協力者になったり、数年後に成長して再び戻ってくる「出戻り社員」となったりする可能性もあるのだ。これは短期的な損失と捉えるのではなく、長期的な視点での「未来への投資」と考えるべきだろう。特に人材確保が困難な中小企業にとって、このマネジメントは重要な生存戦略となる。