PIVOT TALK BUSINESS
できる上司・嫌われる上司
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2026年5月15日

曖昧な言葉で指示を出し、常に部下を監視しながら、ストレス解消のように叱りつける——。 こんな”ダメ上司”になっていないだろうか。良い上司は「期待を上回る部下」を生み出せる。そう語るのは、父親から継いだ家業で「人の動かし方」を試行錯誤し、10年で営業利益率を13倍に跳ね上げた西原亮氏だ。マネジメントに...
「できる上司」になるための七つの技術:斜陽産業をV字回復させた実践的リーダーシップ論
「仕事ができる上司の当たり前」は、現代のビジネスパーソンにとって共通の課題である。リーダーシップや人材育成が精神論に偏りがちな中、明治クッカー代表の西原亮氏(ニッシー社長)は、斜陽産業の牛乳配達業をV字回復させた自身の経験から得た「超具体的なノウハウ」を提唱する。

本記事では、氏の提唱する多岐にわたる実践知の中から、特に重要な七つのテーマをQ&A形式で深掘りする。これらは単なる理想論ではなく、明日から現場で実践可能な「できる上司」の具体的な技術として活用できるだろう。

Q. 部下を成長させるためには、なぜ目標を一つに絞る必要があるのか?
かつて氏は、32個ものKPIを部下に課したことで現場を混乱させ、結果的に何も達成できなかった。この失敗経験から、目標を一つに絞る重要性を学んだ。多くの目標は部下の集中力を散漫にさせ、混乱を招き、達成意欲を失わせる。まずはシンプルな目標一つに集中させ、部下に「達成感」という成功体験を味わわせることが、自信を育み、次の成長へつながる第一歩となる。
また、上層部から多数の目標が降りてきても、安易にすべて引き受けるべきではない。何が重要で、何をやらないのかを取捨選択し、部下に明示することが上司の責任である。中間管理職が持つ唯一の特権は上司への「交渉権」である。無理な目標をそのまま部下に押し付けるのではなく、「この3つは達成しますが、残りは困難です」と明確に交渉する姿勢が、チームを守る盾となる。
Q. 部下が「やりたいこと」に挑戦する前に、まず教えるべきは何があるか?
近年、若手社員の中には「やりたいこと」を主張する傾向が見られるが、その前に自身の「飯の種」がどこにあるのかを理解させるべきである。氏自身の経験でも、社員の「やりたい」を優先させた結果、売上が低下したことがあった。上司は部下に対し、「あなたの給料は、この部署でこの役割を果たすことで支払われている」という事実を明確に伝える。
これは、厳しい現実を突きつけるようにも思えるが、実は組織の健全性を保つために不可欠だ。本来の業務(飯の種)を7割の力で達成させ、残りの3割で「やりたいこと」に挑戦させるというメリハリを付けることで、組織は成果を出しつつ個人の成長も促せる。部下に嫌われたくないという感情でこれを怠ると、部署全体の目標未達やモチベーション低下を招く。
Q. 上司は部下を「監視する者」ではなく「支援する者」になるべきというのはどういう意味か?
かつての氏も「与えられた給料分ちゃんと働いているか」「サボっていないか」と部下を監視し、成果が出ない際に詰問ばかりしていたという。しかし、この監視者としての役割は、上司自身の精神衛生を悪化させ、部下との信頼関係を破壊する。
「できる上司」は、部下が期待を超える成果を出せるよう「支援する」存在である。部下を詰問する代わりに、「目標達成のために何が障害になっているか?」と問いかけ、その障害を取り除く手助けをすべきである。自身の役割を「支援者」と明言し、部下にも「私を使いなさい」と伝えることで、部下は自ら上司に助けを求め、目標に向かって迷わず行動できるようになる。
Q. 部下を「叱る」のではなく「違い」を伝えることがなぜ重要か?
感情的に部下を叱ると、部下は萎縮し、次に相談しなくなる。上司が伝えるべきは、感情ではなく、会社や部署の基準と部下の行動との「違い」である。「お客様が来たら全員で立って挨拶するのが当社の基準であり、今回は〇〇の部分が基準と異なっていた」というように、淡々と事実を伝えるに留める。これにより、部下は人格否定されたと感じることなく、行動を修正できる。
また、ハラスメントを恐れて注意できない上司も多いが、線引きは明確である。仕事のやり方や成果に対する指摘はハラスメントではない。しかし、「どういう教育を受けてきたのか」「常識がないのか」など、プライベートや人格と結びつけて批判した瞬間に、それはハラスメントとなり得る。この線引きを守り、あくまで会社のルールを基準として「違い」を伝えれば、恐れる必要はない。

Q. 部下のモチベーションを高める「褒め方」の極意とは何か?
「すごいね」「よくやったね」といった曖昧な褒め言葉は、上っ面と見透かされ、部下のモチベーション向上には効果がない。部下は漠然とした評価ではなく、具体的な行動や成果を褒められることで、「見てもらえている」と感じ、さらなる成長を促される。
たとえば、「先日のイベントで、お客様が他のお客様と接触しないよう、自ら判断してテーブルを移動させたあの配慮は本当に素晴らしかった。あれがスムーズな運営につながった」というように、具体的な行動と、それが生み出した良い結果を結びつけて伝えるのだ。このような具体的なフィードバックこそが、部下の再現性のある成長を支え、信頼を築く礎となる。
Q. 部下からの相談に対して「どうすればいい?」と問い返すことがなぜ無責任なのか?
部下が困って相談してきた際に、上司が何の仮説も持たずに「どうすればいいと思う?」と問い返すのは、無責任極まりない行為である。部下は答えが分からないからこそ相談しているのであり、このような質問は単なる詰問にしかならない。
できる上司は、自身の中に仮説を持ち、具体的な選択肢を提示する。「この課題に対してはA案とB案が考えられるが、君はどちらが良いと思うか?」というように、部下が答えやすいクローズドクエスチョンを投げかける。これにより、部下は自身で選択する「当事者意識」を持つと同時に、上司も明確な選択肢に対して具体的な支援を行いやすくなる。上司が答えを持たずに部下に丸投げすることは、組織の非効率性の元凶となる。
Q. 曖昧な指示が組織に及ぼす影響と、業務時間外のコミュニケーションに求められる配慮は何か?
「なるべく早く」「もう少し綺麗に」「できれば〜してほしい」といった曖昧な言葉は、部下との間に深刻な認識のズレを生み、無駄な手戻りや会議の原因となる。上司は指示を出す際、「3日以内」「13時まで」「A3用紙30部」のように、形容詞や副詞を排して具体的な数字で語るべきである。部下は「どうしたらいいか」と悩むコストから解放され、業務に集中できる。これは仕事の効率性を大幅に向上させる上司の「技術」である。
さらに、業務時間外のメールやチャットも上司として配慮が求められる点である。よかれと思って送った深夜や休日の連絡が、部下には「すぐに反応すべきか」という無用なプレッシャーを与えることがある。これは上司の傲慢さに他ならない。緊急時を除き、思いついた連絡事項はチャットツールの「予約送信」機能を活用し、翌朝の業務時間内に届くよう設定することが、部下のプライベートを尊重し、信頼関係を築く上で極めて重要である。
