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転職理由No.1は?
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2026年5月6日

今、転勤を嫌がる人が増加している。 なぜ、そんなにも増加しているのか? マイナビキャリアリサーチの嘉嶋氏と最新の転職市場をデータで読み解く。 <ゲスト> マイナビ キャリアリサーチLab |嘉嶋麻友美 2018年、マイナビに入社。 転職情報メディアの営業として、北陸エリア・近畿エリアで350社以...
「働きたくない」約7割?多様化する世代別転職ニーズと企業の人材戦略
転勤の有無は働きがいを大きく左右する要因の一つであり、昨今では約7割もの従業員が転勤に抵抗感を持つ。働き手側の価値観やニーズは急速に変化し、年代ごとに求めるものも大きく異なってきている現状がある。旧態依然とした人事戦略では、企業は優秀な人材を惹きつけ、定着させることが難しい時代を迎えていると言える。本稿では、最新の調査データから浮き彫りになる世代別の転職ニーズの「グラデーション」を紐解き、企業が今後取るべき人事戦略について考察する。

Q. 転勤を拒否する人が増えているのはなぜだろうか?
最新の意識調査によると、「転勤がある会社で働きたくない」と回答した正社員は約68.8%にのぼり、約7割近くが転勤に対して抵抗感を抱いていることが判明した。この割合は前年から3.5ポイント増加しており、抵抗感が年々強まっているとみられる。特に20代では76%と最も高く、転勤制度は若手人材の獲得において大きな障壁となっている実態がある。
転勤を拒否する最大の理由として「転居にお金がかかる」が最も多く挙がった点は注目すべきだろう。多くの人が予想するキャリアプランへの不透明さよりも、物価高を背景とした引っ越し費用や家電・車の購入といった具体的な経済的負担への懸念が上位を占めている。企業が転居費用を一部負担するケースはあるが、それに加えて生じる諸費用や生活コストの上昇への不安が、転勤への強い抵抗感につながっているとみられる。
世代別に見ると、30代の転勤拒否率は他の世代と比較して低い傾向が見られる。しかし50代では、子育てが落ち着くなど身軽になる側面もある一方で、定年延長により長く働くことを前提とした際、「働きやすい環境」を求める意識が高まるため、再び転勤への抵抗感が増す可能性がある。このように、転勤への意識は年代やライフステージによって複雑に変化している状況だ。

Q. 転勤が社員の離職に繋がりやすい理由とは何か?
転勤の可能性を伝えられた際、「転職を考えたことがある」と回答した社員は全世代で約4割にのぼる。これは、転勤制度が年代を問わず社員の離職につながりやすい重大なリテンションリスクであることを示している。企業は常に4割もの従業員が転勤を契機に離職する可能性があると認識する必要があるだろう。
企業にとって、転勤は人員配置の最適化や人材育成といった重要な役割を担っているため、その制度を完全に廃止することは現実的ではないケースが多い。そこで重要になるのが、いかに従業員に転勤を受け入れてもらうかという点だ。調査結果からは、社員が転勤を受け入れる条件として「金銭的補償」と「キャリア上の納得感」の2つが特に重視されていることがわかる。
具体的には、「基本給を上げてもらえる」「転居費用を会社が全額負担してくれる」といった、目先の経済的な不安を取り除く措置が求められる。これに加え、「将来の昇進や昇格に繋がる」というキャリアパスが明確に提示されることで、従業員は転勤の意義を理解し、前向きに受け入れやすくなる。転勤は人間関係のリセットや新たな役割を通じた成長機会といったポジティブな側面も持つが、企業はそうした期待を本人に直接伝え、納得感を醸成する努力を怠ってはならない。
Q. 世代別に転職理由の傾向は異なるのか?
転職理由の傾向は、もはや「給与」一辺倒ではなく、年代ごとに異なる多様なニーズの「グラデーション」が顕著になっている。一律の人事施策では全世代のエンゲージメントを高めることは困難だ。
20代の転職理由で「給与の低さ」の割合は減少傾向にある。これは、企業の新卒初任給引き上げにより、一定のベース給与への満足感が得られるようになったためと考えられる。その代わりに20代で目立つのは、リモートワークの有無に代表される「働く環境への不満」や、「成長できる環境が整っていない」といった成長意欲の不満だ。ハラスメントを懸念するあまり、若手に大胆な仕事を任せきれない企業側のジレンマが、若手の成長意欲とギャップを生み、転職の引き金となるケースがある。
一方、30代の転職理由では「昇進・昇給が見込めない」や「成長環境の不足」といった、キャリアの将来性への不安が上位に挙げられている。20代の給与水準が上がる中で、自身のキャリアアップが停滞していると感じると、不満が顕在化しやすいと言える。40代は依然として「年収への不満」が強い傾向にあり、働きがいと生活の両立を見据えた収入を求めているようだ。
そして50代では、「働く環境への不満」と「働きやすさ」が重要な転職理由として浮上している。定年延長により、かつてより長く働くことが常識となる中で、体力的な負担や自身の価値観に合う働き方を重視する傾向が強まっているとみられる。
Q. 転職先を決める際に重視される点は変化しているのか?
転職先を決める理由についても、単に給与の高さだけでなく、より多様な要素が重視されるようになってきている。「給与の良さ」は依然として高い割合を占めるものの、その重要度は若干減少傾向にある。代わって存在感を増しているのが「新しいキャリア・スキルが身につく・伸ばせる」という成長機会、そして「働く上司・同僚が魅力的」といった人間関係や職場の雰囲気だ。さらに、「専門性のある仕事に集中できる」といった、自己実現に繋がる要素も高く評価されている。
「新しいスキルを身につけたい」と考えるのは20代に多く、新しい環境での挑戦意欲がうかがえる。一方で50代では、これまでの経験で培った「スキルや専門性を伸ばせるか」という視点が重視され、円熟したキャリアをさらに深化させたいと考える傾向がある。これは、キャリアに対する考え方が世代間で異なり、企業側もそれぞれの成長フェーズに合わせたアプローチが必要であることを示唆している。
また、「休日・残業が適正範囲内である」というワークライフバランスに関する項目も、特に20代と40代で高い重視度を示している。20代はデジタルネイティブ世代であり、コロナ禍で柔軟な働き方を経験したことで、プライベートを犠牲にしない働き方を重視する傾向が強い。一方、40代は管理職が増える年代であり、業務時間外の連絡に追われがちな状況を回避したいという意識が働いていると推測できるだろう。
「働く上司・同僚が魅力的である」という要素の重要性が高まっていることを受け、企業側もカジュアル面談などを通じて、候補者に事前に職場の雰囲気や働く人々の人柄を伝える機会を設けるなど、カルチャーフィットを見極めるための工夫が求められている。

Q. 勤務時間外の連絡「つながらない権利」をめぐる現状と課題は何か?
勤務時間外の業務連絡に関しては、7割の従業員が「連絡がある」と回答している。さらに役職別に見てみると、非管理職では4割程度だが、係長・主任クラスでは約8割、部長職にいたっては90.3%もの人が休日や時間外に連絡を受けている実態が明らかになった。これは、管理職がプライベートな時間までも仕事に侵食されている深刻な状況を示唆している。
この状況を受け、「つながらない権利(Disconnect Right)」の法制化が労働基準法の改正論点の一つにも挙がっている。しかし、その導入には多くの課題も伴う。医療やメディアなど緊急対応が求められる職種や、海外拠点を持つ企業での時差を考慮すると、全ての業務から完全に切り離すことは現実的に難しい。一部では「やむを得ない」との声も存在する。
業務時間外の連絡がストレスや健康被害に繋がることは明白であり、企業には明確なガイドライン策定や対策が求められる。具体的には、業務用携帯を会社に保管する、不在時の自動転送設定を導入する、代理人対応の仕組みを構築するといった対応が考えられる。ただし、安易な法制化は、結果的に管理職層へ業務負荷を集中させる可能性があり、その負担軽減策も同時に検討する必要があるだろう。
完全に業務連絡をシャットアウトすることの可否だけでなく、どこまでが許容範囲であり、いかに従業員の納得感を高めるかという「バランス」の議論が重要だと言える。企業は職種や業務内容に応じて、実態に合わせた制度設計を丁寧に進める必要があるだろう。
