
日本株の注目銘柄/木野内栄治&岡村友哉が厳選
日本株の注目銘柄/木野内栄治&岡村友哉が厳選
現在の日本株式市場は大型株に注目が集まりがちだが、その裏で見過ごされてきた中小型株が今、大きな転換点を迎えつつある。割安に放置されがちなこれらの銘柄に新たな光が当たり、株価上昇の強力な起爆剤となり得る複数の要因が重なり合っている。


来るTOPIX改革や、AI相場の質的変化がもたらす影響を詳細に分析し、なぜ今、中小型株への投資が賢明な選択となり得るのか、その深層を探る。
Q. なぜ今、中小型株に注目すべきなのか?
株式市場では約10年周期で設備投資の大きなサイクルがあり、大型株が先行して上昇した後、約5年遅れで中小型株がアウトパフォームする傾向が見られる。過去のデータによると、フロンティア市場(現在の中小型株市場)は大型株相場が底を打った約5年後にリバウンドする歴史的なパターンがある。この周期に基づくと、今年か来年には大型株主導の相場が一服し、中小型株へと資金が集中する転換点が訪れる可能性があるため、今が注目のタイミングと言えるだろう。
Q. 大型株偏重の市場で、中小型株は見過ごされているのか?
東証プライム市場は大企業のイメージが強いものの、時価総額3000億円未満の企業が約7割を占めるのが実態である。さらに、1000億円未満の企業も44%存在するため、プライム市場内にも市場に見過ごされている中小型株は少なくない。これら企業の中には、本来の企業価値に見合わない株価で取引されている銘柄が数多く存在する。
近年の株主還元ブームでは、自社株買いや累進配当が可能な体力ある大型株に資金が集中した。結果、体力に乏しい中小型株は同様の株主還元策を打てず、投資マネーが流入しない状況が続いていた。機関投資家がポートフォリオを大型株に集中させることで、中小型市場への資金は停滞し、株価低迷の一因となったのである。

スタンダードやグロース市場ではアナリストのカバー率が極めて低い(スタンダード6%、グロース10%)ため、第三者による適切な企業価値評価がなされていない銘柄が多い。また、売買代金も乏しく(スタンダード市場の全銘柄合計でプライム市場の一銘柄に劣ることも)、機関投資家が大量に買いたくても流動性がなく投資できない実情がある。これらの要因により、多くの優良中小型株が割安に放置され、「宝探し」のような状況が生まれている。
Q. TOPIX改革がスタンダード市場に与える影響とは何か?
2024年10月から実施されるTOPIX改革は、スタンダード市場の銘柄にとって大きなチャンスである。これまでプライム市場の銘柄が中心であったTOPIXに、スタンダード市場の銘柄も採用される道が開かれたからだ。この改革の肝は「浮動株時価総額」を重視する点にあり、ボーダーラインは約250億円と推測される。

TOPIXへの採用は、マクドナルドの株価動向から既にその影響が見え始めている。同社は長期的に好調な売上を維持していたにもかかわらず、今年に入って急騰した。これは単に業績が良いからではなく、TOPIX採用への期待感が先行したためである。TOPIXに採用されれば、TOPIX連動型のETF(上場投資信託)や年金基金が機械的にその銘柄を買い入れる。これにより浮動株の2割もの大量の買い需要が発生し、株価を押し上げる可能性を秘める。
具体的には、マクドナルドの他にも東映アニメ、ワークマン、上村工業、福田電子、沖縄セルラー、サンテックホールディングスなどが浮動株時価総額から見て注目される候補銘柄として挙げられる。これらの銘柄は、既に年初から大きく上昇しているケースもあるが、売買代金がまだ大きく膨らんでいないため、TOPIX採用の織り込みは完全ではない可能性がある。特に普段から流動性の低い銘柄ほど、採用時の資金流入による株価インパクトは絶大となり、秋に向けて更なる株価上昇が期待できる。
Q. グロース市場における有望テーマと具体的な銘柄は何か?
過去5年間低迷してきたグロース市場だが、ここ最近は市場を構成する銘柄の顔ぶれが変化し、市場全体の質が向上している。従来のネットゲームやバイオ企業一辺倒だった傾向から、現在ではスーパーのトライアル、美容機器のMTG、リユース事業のバイセル、蓄電池のPower Xなど、多岐にわたるビジネスモデルを持つ企業が上位に名を連ねるようになっている。

特に注目すべきテーマは「宇宙」関連である。SAR衛星(合成開口レーダー衛星)を開発・運用するシン・スペクティブやQPS研究所は、その防衛分野での活用に大きな期待が寄せられている。シン・スペクティブは防衛省から5年間で前期売上の約40年分に相当する961億円、QPS研究所は同17年分に相当する697億円という超大型契約を受注した。
これらの宇宙ベンチャーは、過去の夢や期待先行の創薬バイオベンチャーとは一線を画す。具体的な大型契約とそれに伴う来期からの黒字化が既に確定しており、絵に描いた餅ではなく「確実な数字に裏付けられたリアルな成長株」として位置付けられる。イーロン・マスク氏らが牽引する世界的な宇宙投資の波に乗れば、日本の関連企業も大きな恩恵を受け、かつての海運株のように専門アナリストが増加し、投資家の注目を集める可能性がある。
Q. AI相場の変化は、中小型株にどのような新たな機会をもたらすのか?
現在のAI相場は、NVIDIAのような半導体メーカーが牽引する「設備投資」が中心である。しかし、NVIDIAの次世代チップ「Rubin」が投入されると、AIの処理能力が飛躍的に向上し、結果的にAI利用の総コスト(TCO)は大幅に低下する。これにより、AI相場の主役はAIインフラを「作る側」から、AIをビジネスに「活用する側」へと移行すると考えられる。

データセンターの利用料が安価になり、高性能なAIインフラが容易に使えるようになると、これまで資金力が課題だった中小型の「AIベンチャー」に強力な追い風が吹く。これにより、ビジネスアイデアはあるが開発コストが高くて実現が難しかったサービスや製品が、一気に普及する可能性を秘めている。
AIの具体的な応用分野としては、「画像認識」や「プログラミング支援」が挙げられる。これらは既にビジネスとして成立し始めている領域だが、コスト低下によって一層の需要拡大が見込めるだろう。また、「フィジカルAI」(AIを搭載したロボティクスなど)も有望分野である。例えば、ファナックがNVIDIAと協業して仮想空間でロボットの動きを学習させるように、データセンター利用料の低下はシミュレーションコストを劇的に下げ、多様なロボット開発を促進する。これにより、中小のAIロボティクス関連企業も成長する機会を得るだろう。
