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日本のAI基盤 データは誰が握るのか?
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2026年4月21日

デジタル空間の制御はもはや安全保障の問題になりつつある。日本のデータを守りながら、よりビジネスに活用していく方法とは?日本のデータ法制はどうあるべきか? 鍵を握る「データ主権」の考え方について、東大院・越塚登教授に聞いた。 <収録日> 2026年4月17日 <ゲスト> 越塚登|東京大学大学院情報...
日本のAI・データ基盤の未来戦略:越塚昇氏が語る「デジタル小作人」回避への道
日本のAI・データ基盤に対する関心がかつてないほど高まっている。Microsoftの大型投資やさくらインターネットの政府クラウド認定など、大規模な動きが続く中、国のデジタル戦略の行方に大きな注目が集まる。

AIが経済だけでなく安全保障上の重要な要素となる現代において、日本はどのような基盤を構築し、データをどのように活用すべきか。本記事では、日本のAI・データ基盤を巡る重要課題とその対策について、東大院・越塚登教授に聞いた。
Q. 日本のAI・データ基盤が注目される背景は何ですか?
これまで「基盤」が注目されることは稀だったが、Microsoftの大型投資やさくらインターネットの政府クラウド認定を機に、社会の意識が変化した。その背景には主に二つの要因がある。
一つは、AIの膨大な計算処理能力が広く認知され、国を挙げた基盤整備が不可欠と認識されたことである。
もう一つは、デジタル基盤を海外に依存することへの安全保障上の危機感だ。海外製品が安価であっても、基盤が外国に制御されることは国益を損なうリスクがある。この意識が国民全体で共有され始めたため、AI・データ基盤は経済のみならず、国家安全保障の要として位置づけられている。
Q. AI基盤にはどのような種類があり、それぞれどのような役割がありますか?
AI基盤は「学習基盤」と「実行基盤」に大別され、それぞれ異なる役割を担う。学習基盤は、LLMなどの大規模AIモデルを開発するためのインフラである。

数兆ものパラメータを持つモデルの学習には、インターネット上のほぼ全てのオープンデータと大量のGPUを用いる途方もない計算能力が必須となる。
一方、実行基盤は、学習済みのAIモデルを企業システムなどに統合し、活用するためのものだ。AI単体ではなく、既存システムとの連携を通じて、企業秘密やデータ主権を守りつつビジネス価値を創出することが目的である。
これら二つの基盤はシステムやソフトウェアの要件が大きく異なるため、個別に捉え、最適なアプローチで整備することが重要である。
Q. ガバメントクラウドは日本のAI・データ基盤とどう関連していますか?
ガバメントクラウドの主な目的は、全国約1,788の地方自治体が個別に持つシステムをクラウドで共通化し、財政負担を軽減することにある。
各自治体は法的裁量が大きいため独自システムが多いが、ガバメントクラウドはこれらを共通基盤へ移行させ効率化を図るものだ。現時点ではAIの学習や実行のためのインフラ整備とは主眼が異なる。
今後AIと連携する可能性はあるが、現在の課題は地方自治体システム特有のものと認識すべきである。
Q. データ主権とは何ですか、そしてその重要性について説明してください?
データ主権とは、データに法的な所有権はないものの、その管理と利用の制御権を誰が持つかを定める能力である。
AIの性能がデータに大きく依存する現代において、企業と国家双方にとって極めて重要性を増している。企業は自社データを安全に管理し、競争力向上に繋げるための制御権が求められる。

国家レベルでは、自国のデータが自らのイニシアティブで扱えるかが問われる。例えば、日本で生み出された広告収入が海外プラットフォーム経由で流出する状況は、データ主権が損なわれた状態であり、経済的・安全保障的なリスクを伴う。
EUのGDPRのように、データ所在地に関わらず自国の法を適用する法的主権と、技術的・制度的制御を組み合わせることがデータ主権確保の鍵となる。
Q. 日本のデータ戦略は欧米とどう異なり、その課題は何ですか?
日本のデータ戦略は、民間契約主導の米国型とも、政府主導の「ハードロー」重視の欧州型とも異なる、独自の道を歩む必要がある。米国は巨大IT企業群を抱え、欧州は技術推進よりも規制を重視するため、両モデルを日本が模倣することは困難である。
日本は単一法域である強みを持つが、欧州型の「大きな政府」ではない社会構造が制約となる。例えば、日本では公共交通機関を民間が担うなど、欧州と異なる公共領域の民間比率が高い。

この社会構造の違いから、欧米のアプローチは日本のデータ活用モデルには適合しない。独自の「ソフトロー」中心の戦略を進める上で、日本の実情に合った道を模索することが重要である。
Q. 日本のデジタル変革(DX)を阻む根本的な壁は何ですか?
日本のDXを阻む根本的な壁は、歴史的に形成された「地域ごとの最適化」を優先する制度とシステムだ。これは、デジタル化におけるスケールメリットを享受できない最大の要因である。

象徴的なのは、高校の内申書(成績表)のフォーマットが各学校長に裁量があり、全国でバラバラであることだ。この多様性は、大学入試の電子願書といった単純なデジタル連携すら困難にする。
このような個別最適化された多種多様なシステムやデータ形式は、組織間連携における大きな障壁となる。海外企業が日本のAI市場に投資する際も、この「現場の泥臭い課題」の解決が不可欠だと認識している。
日本のDX推進には、この根深く個別最適構造の改革が不可避である。
Q. 日本のAI・データ基盤戦略における未来像と勝機は何ですか?
未来のAIは、中央集権型ではなく「100万個のAIエージェント」が分散するシステムとなる。この分散AIがデータ主権を守りつつ連携するための「AI実行基盤」の確立が、日本の勝機である。
海外依存を続ければ日本は「デジタル小作人」に成り下がる。この課題解決には、制度改革・運用改善・技術活用の「総力戦」が不可欠だ。
特にAIによるコード自動生成技術は、多様なシステムの違いを技術的に吸収し、開発コストを劇的に下げる可能性を秘める。また、AI・データ基盤は国家の安全保障問題であるため、政府が主導する「新・護送船団方式」がリスクテイクを促し、日本の競争力を強化しうる。
最終的に、日本が目指すべきは、米欧中のどのモデルとも異なる独自の「日本モデル」を確立し、同じ課題を持つ東南アジア諸国の模範となることだ。これにより、アジア経済圏でリーダーシップを発揮し、新たな国際的地位を築ける。
現在進行中の「xIPFコンソーシアム」が、この分散AI実行基盤の日本主導構築を目指しており、その成否が日本の未来を左右する鍵となる。