
いじめ被害を受けやすい子どもの特徴
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2026年4月18日
いじめ被害を受けやすい子どもの特徴とは?いじめを抜けるために必要なこと。科学が証明したいじめが起きる本当の理由とは?いじめのメカニズムについて和久田学氏に聞いた。 <ゲスト> 和久田学 1964年 静岡県生まれ 大阪大学大学院連合小児発達科学研究科 招へい教員 子どもの発達科学研究所所長 主席研究...
科学が解明したいじめの真実と大人ができる対策
いじめは子供たちの間で避けがたい問題だが、その本質や科学的対策は十分に理解されていない。
この問題は単なる個人的な出来事ではなく、長期的な影響を及ぼす可能性がある。
本稿では、子供発達科学研究所の主席研究員である湧田学氏の知見に基づき、いじめの現状、メカニズム、そして親や教育現場が実践できる具体的な解決策をQ&A形式で掘り下げる。
データが示すいじめの実態や、加害者側に生じる認知の歪み「シンキングエラー」、さらには「アンバランスパワー」といったキーワードを通じ、我が子をいじめの加害者にも被害者にもしないための「新常識」を提示する。
全ての大人が科学的アプローチを学び実践することで、安心して成長できる社会の実現に貢献できるだろう。

Q. 日本におけるいじめの現状はどのようなものか?
日本のいじめ認知件数は過去最多を更新しており、文部科学省のデータによれば年間76万9千件に上る。
しかしこれは必ずしもいじめの絶対数が増加したことを意味しない。教師がいじめを見つける感度が向上し、見かけ上の件数が増えたと捉えるべき側面もある。かつては表面化しにくかった陰湿ないじめも、積極的に報告・認知されるようになった結果だ。

日本のいじめ防止対策推進法に基づく定義は広く、「心身の苦痛を感じた」と被害者が訴えれば、加害者に悪意がなくともいじめと認定される。この幅広い定義は早期発見に繋がる一方で、現場での対応を複雑にしている。
興味深いことに、いじめの認知件数が最も多いのは小学校2年生だ。これは、低学年にいじめが集中するのではなく、高学年になるといじめが巧妙化し、表面化しにくくなるためであると考えられる。
Q. いじめが子供の人生に与える影響は、なぜ大人が考えるより深刻なのか?
「いじめは乗り越えられる」「大したことない」という大人の言葉は、「生存者バイアス」から生じている。いじめを経験しつつ社会に適応できた人々の意見は多く聞かれるが、深く傷つき社会から孤立した、あるいは命を落とした人々の声は届かない。実際、いじめの経験は子供たちの将来に深刻な影響を及ぼすことが科学的に証明されている。
ACE(Adverse Childhood Experiences:逆境的小児期体験)研究によると、子供時代のいじめや虐待などの傷つき体験が多いほど、成人後にメンタルヘルスの問題、糖尿病、がんなどの生活習慣病、離婚、喫煙、自死といった多様なリスクを高めることが明らかになっている。累積的な傷つき体験は寿命の短縮にも関連するという。
日本での調査では、成人期の健康状態に影響を与える子供時代の傷つき体験として、家庭での経験(36%)よりも学校での経験(55%)の方が多かった。特に「学校での傷つき体験」は、成人後の引きこもり問題に強く関連することが判明している。学校は社会への窓口であるため、そこでの心的外傷が社会全体への適応を阻害し、孤立へ導く可能性を示している。
Q. いじめはなぜ発生し、深刻化するのか?そのメカニズムを科学的に説明できるか?
いじめの発生と深刻化には、国際的な研究で共通して指摘される二つの科学的要素が関与する。
一つは「アンバランスパワー」、もう一つは「シンキングエラー」である。

アンバランスパワーとは、いじめの加害者と被害者間に存在する力の不均衡を指す。これは身体的な力だけでなく、知的優位性、社会的つながり、精神的なタフさ、集団の中での立場(先輩と後輩、リーダーとメンバーなど)といった要素から生じる。この力の差により、被害者は反論したり助けを求めたりすることが困難になり、いじめは一方的に継続しやすくなる。
シンキングエラー、すなわち「考え方の間違い」は、加害者が自身の行為をいじめだと認識せず、誤った認識で行動を正当化する認知の歪みである。「遊びの延長」「相手も喜んでいるはず」「みんなもやっているから大丈夫」といった思考パターンがこれに当たる。いじめが「悪いこと」と教えられているにもかかわらず認知件数が減らない背景には、このシンキングエラーが深く関わる。現代社会に存在する迷惑系YouTuberや炎上商法といった「他者を傷つけて注目を集める」行為が、子どもたちに誤った行動モデルを与え、シンキングエラーを助長する土壌になっている側面も否定できない。これらの「アンバランスパワー」と「シンキングエラー」が同時に存在することで、いじめは当事者間での解決が極めて困難な状態へと陥る。
Q. いじめの加害者は自身の行為をなぜいじめと認識しないことが多いのか?具体的な事例はあるか?
いじめの加害者は、自身の行動が「いじめ」という重大な問題であると認識していない「無自覚」なケースが非常に多い。彼らは自身の行為を「遊び」「からかい」「注意」などと解釈し、シンキングエラーに陥っている。これは、誰もが「いじめは悪いこと」と知っているはずなのにいじめが続く理由の一つだ。
具体例として、小学校のAさんのケースが挙げられる。Aさんは服装が不潔でアレルギーによる鼻すすりなどがあり、クラスメイトからからかわれたり仲間外れにされたりした。これをいじめと指摘しても、からかう側の子供たちは「Aさんが汚いのが悪い」と主張し、いじめではないと認識した。中にはAさんに清潔さの指導をするだけで、この件をいじめとして扱わない担任教師もいるという。
この事例を科学的に分析すると、からかい行為に複数の子供が関わりAさんが反論できない状況は「アンバランスパワー」を示している。さらに「汚いからといって他者を傷つけても良い」という考えは、加害者側の明らかな「シンキングエラー」である。Aさんに改善すべき点があったとしても、それが彼をいじめて良い理由にはならない。教師は清潔さの問題といじめの問題を切り離し、いじめは許されない行為であることを加害者に明確に伝えるべきだ。加害者自身に、その行動が「いじめ」に当たることを自覚させる教育が、無自覚ないじめを防ぐ上で不可欠となる。
Q. いじめを未然に防ぎ、根本的に解決するために、大人は具体的に何をすべきなのか?
現在の日本のいじめ対策は、相談窓口の設置や早期発見・介入など、「いじめが起こってしまった後」の事後対応に重点を置いている。しかしこれではいじめの根本的な減少には繋がらない。いじめの「予防」という視点が欠けているのだ。

いじめ問題解決の最も重要な原則は、「いじめられる側に問題は一切ない」という認識を徹底することである。いかなる理由があろうとも、他者を傷つける行為はいじめであり、それは100%加害者側の問題だ。大人が「いじめは被害者にも原因がある」といった誤ったメッセージを発すれば、子どもはそうした価値観を内面化し、加害者になるリスクを高めてしまう。
世界のいじめ研究で最も効果的な予防策は「傍観者教育」だ。これは加害者や被害者個人への介入だけでなく、いじめを目撃している「傍観者」たちの行動を変えることに主眼を置く。傍観者が「それはおかしい」と声を上げたり、大人に助けを求めたりすることで、いじめは長期化・深刻化しにくくなる。
親を含め大人の行動は子どもにとって強力なモデルとなる。家庭内で権力的な態度(パワーコントロール)を頻繁に用いる親の子どもは、学校でいじめの加害者になるリスクが高い。大人は自らの言動が子どもに与える影響を常に自覚すべきである。
また、学校全体の「学校風土」を改善する取り組みも重要だ。ポジティブで安全な学校風土は、いじめや不登校の予防だけでなく、学力向上にも繋がることが研究で示されている。個々の問題解決だけでなく、子どもたちを取り巻く環境そのものを変革していく視点が必要だ。
