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転職ブーム終焉
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2026年4月22日

今 大転職時代と言われる中 常識が変わろうとしている。 転職すれば年収が上がるのは古い? 最新の転職業界の動向をマイナビ キャリアリサーチLabの関根貴広氏と紐解く。 <ゲスト> マイナビ キャリアリサーチLab|関根貴広 2006年、中途で入社。人材紹介・人材派遣のリクルーティングアドバイザー、...
「厳選採用」と「ビッグステイ」で変わる!大転職時代のその先へ
「大転職時代」という言葉を頻繁に耳にするが、日本の労働市場は今、その潮目を大きく変えようとしている。一見すると人手不足感が依然として高い一方で、企業はかつてのような「頭数を揃える採用」から、より専門的なスキルや経験を持つ「優秀な人材」を厳選する「厳選採用」へとシフトしているのだ。
さらに、転職することが必ずしも得策とは限らないという、かつて終身雇用制度下にあった日本社会に似た新たな潮流、「ビッグステイ」の兆しも見え始めている。
企業の人材戦略が新規採用から「人材定着」へ比重を移し、個人にも「戦力としてのアップデート」が求められる今、私たちはこの変化をどのように捉え、行動すべきか。
マイナビキャリアリサーチラボの主任研究員による最新のデータに基づき、この激動の労働市場の「今」と「これから」を解き明かす。

Q. 人手不足の現状と、その質的な変化とは何か?
日本企業が長らく抱える「人手不足」は、コロナ禍の一時期を除いて高止まりの状態が続いている。しかし、この人手不足の内訳が大きく変化している点を認識しなければならない。
かつては単純に労働力が足りない「量」の問題であったが、現在は「スキルを持つ優秀な人材がいない」という「質」の問題へと完全にシフトしたのである。
企業は単なる労働力の補充ではなく、事業に貢献できる即戦力、つまり専門的なスキルや豊富な経験を持つ人材を求めている。この質的変化は、結果として「厳選採用」を加速させている。
マイナビの調査によれば、「求めるスキルや経験に満たない場合は採用しない」と回答した企業は、2024年の54.4%から2025年には62%を超えるまで上昇している。
つまり、これからは明確なスキルや実績がなければ、企業は容易に採用しないという厳しさを増した市場になっている。求職者にとっては、自身の市場価値を客観的に評価し、常に専門性を磨き続ける必要がより一層高まったと言えるだろう。
Q. 労働市場で「ミドル層の空洞化」が起きているのはなぜか?
労働市場では、経験豊富な中核人材である「ミドル層の空洞化」という構造的な矛盾が生じている。過去4年間で、30代の正社員が72万人減少した一方、20代の正社員は27万人増加しているのだ。
さらに詳しく見ると、全正社員数は減少しているにもかかわらず、30代から40代の転職者数そのものは増加している。
これは、経験豊かな層が活発に企業を移動していることを示唆している。逆に、人口が増えているはずの20代では転職者数が減少傾向にあり、若手が現在の会社に留まる選択をするケースが増加しているのだ。
企業にとって最も大きな痛手となるのが、勤続5年以上の中堅社員の流出である。
彼らは知識や経験を蓄え、管理職や新人育成を任される、まさに「これから」という時期にある。彼らの退職は、企業活動における中核機能に深刻な支障をきたし、経営戦略上の大きな課題となっている。

Q. 人材定着(リテンション)に向けた企業の主な戦略は何か?
「ミドル層の空洞化」という課題に直面し、企業は優秀な人材を外部から獲得するだけでなく、「いかに自社に引き留め、定着させるか」、つまりリテンション戦略が最重要課題となっている。
その主要な打ち手は、主に「賃上げ」と「成長支援」の二つである。
賃上げは、従業員の貢献を金銭的に報い、外部からの魅力的なオファーに対抗する直接的な手段だ。多くの企業で賃上げが実施されており、特に若年層ほど高水準の賃上げが行われる傾向にある。
これは、若手の低いベース賃金を改善し、新卒採用競争力を高める狙いがあるだろう。しかし、初任給が大幅に上がる一方で、賃上げの恩恵が薄いミドル層が、自身より高賃金の若手社員の教育を担わされるという「逆転現象」が問題を生む可能性がある。
このような状況は、ミドル層のモチベーションを低下させ、離職へとつながる「負のスパイラル」を引き起こしかねない。そのため、賃上げはバランスを考慮し、全社員にとって公平感のある仕組みを構築する必要がある。
もう一つの戦略は「成長支援」、特にリスキリングなど従業員教育への投資増額である。
多くの企業が、リスキリングなどの従業員教育投資を増額し、「この会社にいれば成長できる」「自身の市場価値を高められる」という実感を持たせることが、社員の定着とエンゲージメント向上に繋がることを期待している。
賃上げだけでは限界があるため、持続可能なリテンション策として、社内で能力開発を促し、社員のキャリア成長をサポートする環境整備が重視されているのだ。
Q. 「ビッグステイ」とはどのような現象か?
米国で近年話題になっている「ビッグステイ」とは、「転職するよりも、今の会社にとどまった方が結果的に経済的なメリットが大きい」という現象を指す。
転職は一時的な年収アップにつながることが多いが、その後の昇給が鈍化する可能性がある。
これに対し、現在の会社で継続して年4%程度の着実な昇給を得られる場合、数年後には転職した場合の総収入を上回ることが起こりうる。
日本企業特有の退職金制度なども考慮すると、この「留まることの経済的メリット」はさらに拡大するだろう。
このビッグステイは、短期的な視点でキャリアを考える転職志向とは対照的に、長期的な視点でキャリアと経済的な安定を追求する動きとして注目されている。経済環境の不確実性が高まる中、人々はより安定した道を求めるようになっているのだ。

Q. 日本の企業は「ビッグステイ」の到来をどのように予測しているのか?
マイナビが日本企業に対して行った調査では、実に8割以上の企業が「ビッグステイ」の潮流が日本にも到来すると予測していることが明らかになった。
このうち半数以上が「3年以内に到来する」と回答しており、企業側がこの変化を非常に近い将来のものとして認識している点が特徴だ。
特に賃上げやリテンション施策に積極的に取り組んでいる企業ほど、ビッグステイの早期到来を確信している傾向にある。
これらの企業は、自社の努力によって社員が留まることの魅力を高められているという自信を持っているのだ。
ビッグステイが予測される背景には、日本特有の終身雇用を是とする文化や、退職金制度のような長期勤続報奨の仕組みが根強く残っていることが挙げられる。
一度は転職ブームに沸いたが、その反動として「とどまることの価値」が見直され、キャリアの安定性を重視する動きが再燃する可能性があると言えるだろう。
Q. この変化の時代に個人が取るべき戦略は何か?
今後の労働市場は、「優秀な人材を厳選して採用する」大転職時代と、「採用した人材を手厚く守り定着させる」大定着時代がハイブリッド化していく。
企業は、一度「戦力」として迎えた人材を、賃上げや成長支援を通じて育成し、引き留めようとするだろう。
このような時代を生き抜くために個人に求められるのは、現在の良い処遇に甘んじることなく、常に自律的にキャリアを築き、スキルを「アップデート」し続けることである。
企業にとって「価値ある戦力」であり続けるという強い意志と行動こそが、自身の市場価値を高め、不確実な時代におけるキャリアの安定を守る最善策となるだろう。
働き手が自らのキャリアと向き合い、積極的にスキル開発や成長機会を求める姿勢が、これからの時代における個人の競争力と満足度を左右する鍵となるはずだ。