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【解説】トランプ氏のNATO離脱論概要
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2026年4月7日

トランプ氏がNATO離脱を示唆したインタビューが話題に。制度上脱退は可能なのか?真の危機は「第5条」の形骸化?イラン情勢を背景に米欧の亀裂も露呈する中、集団防衛の限界はどこにあるのか。慶應義塾大学教授・鶴岡路人氏に徹底解説してもらった。 <ゲスト> 鶴岡路人|慶應義塾大学総合政策学部 教授 専門は...
トランプ氏のNATO脱退発言、その深層と今後の展開
ドナルド・トランプ氏のNATO脱退検討発言が、再び国際社会に波紋を広げている。これは単なる牽制か、あるいはアメリカの外交政策における本気の示唆なのか。本稿では、その真意を解き明かし、アメリカとNATOの関係の今後の行方を探る。
特に、イラン情勢を巡るアメリカとヨーロッパ間の温度差も露呈しており、北大西洋条約機構(NATO)の集団防衛のあり方にも疑問符が投げかけられている。専門家の分析に基づき、この複雑な国際政治の舞台裏と、それに伴う影響について詳細に解説する。

Q. トランプ氏のNATO脱退発言は、どこまで本気なのか?
イギリスのテレグラフ紙によるトランプ氏の「NATO脱退を真剣に検討している」という発言は、国際的に大きな注目を集めた。しかし、これはNATOの加盟状況を見直すかを問われたことに対する返答であり、自発的に脱退を宣言したものではない。
ただし、彼の前政権時にも同様の発言は繰り返されており、元国家安全保障問題担当大統領補佐官のジョン・ボルトン氏もその意向が真剣であると警鐘を鳴らしてきた。したがって、これは単なる交渉戦術だけでなく、本気の可能性も含むものとして認識すべきである。
Q. アメリカのNATO脱退は、制度的に可能なのか?
北大西洋条約には脱退規定が存在し、アメリカが脱退を通告すれば1年後には締約国でなくなるため、制度的には可能である。しかし、アメリカ議会はトランプ政権の発足前から、大統領が勝手にNATOを離脱できないよう、議会の承認を義務付ける法律や、離脱のための予算措置を認めない規定を設けてきた。

だが、これらの法的措置が大統領の行政権をどこまで制約できるかという点には、憲法上の問題もはらむ。そのため、現時点では、議会の対策が絶対的な阻止力となるとは断言できないのが現状だ。
Q. トランプ氏はなぜNATOに不満を持っているのか?
トランプ氏がNATOに対して抱く不満の根源は、「アメリカがヨーロッパを助ける一方で、ヨーロッパはアメリカを助けてくれない」という一方通行な関係性への不公平感にある。彼にとっては、NATOがアメリカの利益にならない同盟と映るため、「だったらNATOはいらない」という極論に至る。イラン情勢のようにアメリカが危機に陥った際、ヨーロッパ諸国が支援に消極的である現状が、その不満を一層増幅させている主要因となっている。
Q. イラン情勢で見られる米欧の温度差は、なぜ生じるのか?
現在のイラン情勢がアメリカとヨーロッパ間の温度差を生んでいるのは、NATOの集団防衛義務を定める「北大西洋条約第5条」の適用範囲に深く起因する。第5条は加盟国が直接攻撃を受けた場合に発動されるものであり、イラン情勢のような「域外」での問題には適用されない。
今回のケースはアメリカが先に攻撃を仕掛けたものであるため、NATO全体としての戦争とは異なり、各国の個別判断に委ねられている。歴史を振り返ると、NATO創設時にイギリスやフランスの植民地戦争にアメリカが巻き込まれるのを避けるため、意図的に第5条の適用範囲を北大西洋地域に限定した経緯がある。この当時のアメリカ側の思惑が、今日の皮肉な状況につながっているとも言える。
Q. アメリカがNATOから離脱した場合、最も懸念される事態とは何か?
アメリカのNATO脱退が引き起こす懸念は、正式な手続きを経るよりも、大統領が「北大西洋条約第5条に基づく集団防衛のコミットメントを履行しない」と宣言する方がはるかに深刻な脅威だ。このような宣言があれば、NATOは即座に形骸化し、ロシアに対する抑止力は著しく低下するだろう。

在欧米軍の削減が規定路線とされる中で、もしアメリカがこの形でコミットメントを停止すれば、ヨーロッパの安全保障体制に致命的な穴が開き、結果として世界全体に深刻な影響を与える可能性がある。大統領の発言には交渉の駆け引きとしての側面も大きいが、その結果として同盟への信頼性が損なわれる事態は避けなければならない。
Q. ヨーロッパはアメリカのNATO離脱に対し、どのように対応すべきか?
ヨーロッパは、アメリカのNATOコミットメント低下に対し、「脱アメリカ依存」を加速させ、自らの防衛能力を強化する必要がある。在欧米軍の削減が規定路線である以上、ヨーロッパ諸国は情報収集、輸送能力、長距離打撃力といった、これまでアメリカが担ってきた役割を代替していかなければならない。これには綿密な調整と多大な投資が不可欠だ。
NATO事務総長はアメリカを引き止めようと努力を続けているが、ヨーロッパ内部では、もはやアメリカへの信頼性は回復困難と認識され、自立した安全保障体制を構築すべきだというコンセンサスが形成されつつある。国防費の増額と防衛能力向上は、アメリカへの配慮だけでなく、ヨーロッパ自身の未来のために喫緊の課題である。
Q. アメリカにとってNATOは依然として重要な存在なのか?
もしヨーロッパが経済的・政治的に不安定になれば、密接な関係にあるアメリカも無関係ではいられない。「ヨーロッパの危機はアメリカの危機」であり、例えばロシアがNATO加盟国に侵攻するような事態になれば、アメリカも甚大な影響を被るだろう。
一時的にアメリカがコミットメントを減らすことで混乱が生じ、後にアメリカが介入せざるを得なくなった場合、最初からコミットメントを維持していた方が被害は少なかったという皮肉な結果にもなり得る。アメリカにとってNATOがなぜ重要なのかという議論は、アメリカ国内でもさらに深めるべき課題である。