
「お金の不安」の無くし方
お金の不安の無くし方:「8+1+1」の資本で未来を切り開く
現代社会において、お金に関する関心は高まり続ける一方で、多くの人々がその不安に苛まれている。億万長者でさえもお金の不安から完全に解放されるわけではないという現実は、お金に関する悩みが単なる口座残高の問題ではないことを示唆している。本稿では、データアナリストのサトマイこと佐藤舞氏の提唱する、金融資本だけに依存しない真の経済的自立の概念と、不安を乗り越えるための具体的なアプローチを深掘りする。将来への漠然とした恐れが不安の正体であると喝破し、それを払拭する「8+1+1」の多角的資本モデルの構築方法について解説していく。

Q. お金の不安の真の正体は何であるか?
佐藤氏は、お金の不安の核心は口座残高の多寡ではなく「将来の不確実性」に起因すると語る。心理学において、不安とは今目の前の脅威ではなく、将来起こりうる漠然とした事柄への恐れを指す。例えば、億万長者であっても稼いだ多額の資金を失うことへの恐怖や、もしもの場合に再起できるのかという自信の欠如から、常に不安を感じているケースは少なくないという。これは、お金そのものがあるかどうかの問題ではなく、未知なる未来に対する心理的な抵抗感が不安を増幅させている証拠である。
真の経済的自立とは、たとえ金融資本を失ったとしても、自身の他の資本で立ち直れる状態を指すのだ。
Q. 人は不安や脅威に直面したとき、具体的にどのような反応を示すのか?
人は不安や脅威に接した時、「脅威の明確さ」と「自己の対処能力」の二軸に基づき、主に四つの異なる反応を示す。

第一に、脅威が明確で対処可能と感じる場合、「ファイト・オア・フライト(戦うか逃げるか)」モードに移行する。
第二に、脅威は明確だが対処できないと感じる場合、人は「フリーズ(固まる)」状態になる。
第三に、脅威が漠然としているが対処可能だと感じる場合、「エクスプローラー(探索する)」モードに入る。
第四に、脅威が漠然としていて対処不能と感じる場合、人は「流される」行動を選んでしまう。
お金の不安がいつまでも消えない人は、しばしばフリーズか流される状態を繰り返し、揺れ動く感情に振り回されていることが多く、自ら状況を改善する力を失っている。
Q. 不安に強く、揺るがない人生を送る人とそうでない人との決定的な違いはどこにあるか?
不安に強く、自身の人生をコントロールできる人は、脅威に対し「自分なら対処できる」という“対処可能感”を持っている点で異なっている。対処可能感は、知識やスキルといった外的な要因と、精神的健康や前向きな思考といった内的な要因の両面から築かれるものだ。例えば、宝くじで大金を得た場合、一時的に金融資産は増えるが、自力で稼いだものではないため「失ったときに取り戻せる」という対処可能感が育まれず、かえって失う不安が増大する。佐藤氏は、金融資本という一本足で立つと人生は常に不安定であると指摘し、健康資本、心理的資本、人的資本など、複数の「足」でバランス良く立つことの重要性を説く。これにより、一つの資本が脅かされても他で補える強固な土台を築き、不安のループから抜け出すことができる。
Q. 金融資本以外に、人生の土台を安定させるために不可欠な「資本」にはどのようなものがあるか?
佐藤氏の提唱する8+1+1の資本モデルでは、人生の土台を支えるために、金融資本だけでなく様々な資本の分散が鍵を握る。特に、金融、物的(住居や道具)、健康、心理の4つの資本が土台として極めて重要である。

これらの基礎的な資本が確立されて初めて、その上の人的(知識・スキル)資本や社会関係(人脈・信用)資本、さらには文化教養資本などが有効に機能する。土台が不安定な状態で人的資本や文化教養資本の向上を目指しても、その効果は薄いと言わざるを得ない。また、いざという時のセーフティーネット(傷病手当金など)に関する知識は、大きな「お守り」となり、最悪の事態に対する不安を払拭する。しかし、知っていてもプライド(顕示資本)が邪魔をして活用できないケースもあるため、自身のメンタリティも重要である。著者の父親の例のように、金融資本喪失時に頼れる人脈や助けを求められる心理的素養が欠けていると、再起は極めて困難となる場合があるのだ。
Q. 不確実性を苦手とする日本人は、いかにお金の不安と向き合い、解消すべきであるか?
ホフステッド指数によると、日本人は不確実性回避傾向が世界トップクラスであり、曖昧な状況に強いストレスを感じやすい国民性である。この特性が、将来への漠然としたお金の不安をより強く感じさせる一因となっている。対処法としては、まず漠然とした脅威を「見える化」することだ。例えば、老後資金に必要な金額を具体的な数値として計算し、現状とのギャップを明確にする。目標が具体的であれば、それに対する対策も自ずと明確になり、行動へと繋がりやすくなる。
さらに、特に若年層においては、NISAなどの安定運用よりも「人的資本」への自己投資を優先すべきと佐藤氏は提言する。年間100万円をNISAで10年運用しても得られるリターンは約260万円程度に留まるが、同額をスキルアップや学習に投じれば、収入を10倍以上に増やせる可能性があるからだ。自分の人生のリスク許容度や「どう生きたいか」を逆算し、資産配分を決定することが重要である。
Q. キャリアチェンジを通じて自身の市場価値を高めるために最も重要なことは何であるか?
キャリアチェンジや転職において収入を向上させるためには、前職での貢献度を定量的に証明できる市場価値を培うことが不可欠だ。自身の行った業務が企業にどれだけの利益や価値をもたらしたかを明確に語れる実績は、給与交渉における強力な武器となる。特に営業やマーケティングなど、成果が数値で可視化しやすい職種での経験は、市場価値向上に直結しやすい。単に資格を取得することだけでは、履歴書を飾るに過ぎず、実務での具体的な成果がなければ企業は評価しない。企業が見るのは、取得した資格そのものではなく、その資格をどのように活用し、どのような結果を生み出したかであるため、資格はあくまで経験を補完するものに過ぎないことを理解すべきである。転職を検討する際は、自己が培った実績を客観的に評価し、新たな職場でそれが妥当に評価されるかどうかを見極める必要がある。
Q. 自分にとって最適な「資本のポートフォリオ」はどのように見つけ、構築できるか?
人によってお金に変換しやすい資本は異なり、個々人の強みも多様である。

例えば、佐藤氏のように「人的資本(スキルや知識)」が突出している人もいれば、優秀な人脈を活かして事業を立ち上げられる「社会関係資本」に強みを持つ人もいる。自身の強みは、あまりに当たり前であるため、本人では気づきにくいことが多い。そのため、他者からのフィードバックや客観的な意見を参考に、自身の資本を棚卸しすることが非常に有効である。マルチキャピタルマネジメントという考え方では、全ての資本を完璧にする必要はなく、自分の得意な資本で苦手な部分を補い、全体のバランスを取ることを目指す。
「これは人より劣るかもしれないが、他の資本で補える」というポートフォリオを確立することで、無駄に不安になる必要のない安定した人生を送ることが可能になるだろう。
