ビジネス虎の巻
人間関係を楽にする方法/職場で嫌われる人の特徴
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2026年4月2日

「ビジネス虎の巻」、今回のテーマは「ストレスフリーの仕事術」。前編では、精神科医・樺沢紫苑が「職場の人間関係を楽にする方法」を解説。 <ゲスト> 樺沢紫苑|精神科医 札幌医科大学卒業。米イリノイ大学への留学を経て、樺沢心理学研究所を設立。YouTube「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」や累計27...
精神科医が教える「ストレスフリーな生き方」:現代社会を軽やかに乗り越える処世術
現代社会はストレスの温床だ。職場での人間関係、膨大な情報量、終わりのないタスクに囲まれ、知らず知らずのうちに心をすり減らしている人も少なくない。では、そうした環境で本当に「ストレスフリー」な生き方を実現することは可能か。精神科医の樺沢紫苑氏と益田裕介氏が、ストレスを避けるための独自の視点と具体的な方法を語る。
「ストレスをなくすこと」と誤解されがちなストレスフリーという言葉だが、彼らが提唱するのは全く異なるアプローチだ。まるでボクシングのリングで相手のパンチをかわすかのように、ストレスの「ダメージを受けない技術」を身につける。避けられないストレスにどう向き合い、心穏やかに過ごすのか。Q&A形式でその極意を探ろう。

Q. ストレスフリーな生き方とは具体的にどういうことか?
ストレスフリーと聞くと、多くの人がストレスの原因を根絶することだと考えがちだ。しかし、この世からストレスをゼロにするのは不可能だ。精神科医の樺沢氏は、ストレスを「パンチ」に例え、それをボクシングのようにかわすことをストレスフリーと定義する。強烈なパンチ(ストレス)を相手がいくら放ってきても、当たらなければダメージはゼロなのだ。

私たちはストレスのパンチを受け止めて耐えるのではなく、巧みに避けて受け流す技術を身につけるべきである。残念ながら、多くの人は無意識のうちにストレスのパンチを自らもらいにいっている。正しい対処法を学ぶだけで、受けるダメージを大幅に減らせるはずだ。
Q. 職場の人間関係はどのように捉えるべきか?
「職場の人間関係は『どうでもいい』というくらいでよい」と樺沢氏は語る。これは、職場はあくまで仕事をする場所であり、会社を辞めれば二度と会わない人たちなのだから、過剰にエネルギーを注ぐ必要はないという視点である。
実際に、10人を超える組織で全員が良好な人間関係を築くのは不可能である。自身の認知リソース(集中力や思考力)は、仕事そのものに注ぐべきだ。人間関係の構築に真面目になりすぎると、疲弊する一方だろう。
人間の脳には「神経可塑性」があり、毎日変化している。ポジティブな思考を繰り返せばポジティブな脳の高速道路ができあがる。職場の人間関係で悩むのは、ネガティブな思考回路を強化することになるため、不毛だと言える。この考えを受け入れ、「そうなんだ」と腑に落ちた瞬間から、脳の回路は変化を始めている。
Q. ストレスを与える相手にはどのように対処すればよいか?
マウンティングする人
悪口やネガティブな言葉が多い人
クレクレ星人
人間関係には「1:2:7の法則」がある。これは「10人いたら1人はあなたを嫌い、2人はあなたを好意的に見、7人は無関心」というものだ。もし嫌いな相手が現れたら「メタルスライムが出た」と心のなかでつぶやき、当然のことと受け入れよう。この1割をゼロにするのは不可能だから、過剰に意識せず適当にあしらうことが重要である。そして、残りの2割の味方を大切にする方がよほど建設的だ。

もしその「1割の嫌いな相手」が上司であった場合でも、好かれる必要はない。「嫌い(マイナス)」から「無関心(ゼロ)」を目指せば十分だ。そのためには、逆にコミュニケーション量を増やすべきだという。相手を避けるのではなく、仕事の進め方やすり合わせを行うことで、互いの期待値を調整する。コミュニケーション不足は、すれ違いの大きな原因になるからだ。
さらに、マウンティングする人、悪口が多い人、テイカー(クレクレ星人)といった「エナジーバンパイア」は、意識的に距離を置くべきである。彼らは認知リソースを消耗させ、ネガティブな思考を強化する。誘いを断る際は、長々とした理由を述べるのではなく、「用事があってすみません」と簡潔に断り、余計な隙を与えないことがコツだ。しかし、完全に拒絶するのではなく、ノンバーバルコミュニケーションで少しだけ「行きたくないオーラ」を匂わせる程度の距離感を意識するのが処世術となる。
Q. 「本当の友達」の基準と人との付き合い方について?
「本当に困った時に相談できる人が友達だ」と樺沢氏は定義する。友達の数は重要ではなく、心から信頼できる親友が一人でもいれば十分なのだ。このような相手との深い絆は、メンタルが落ち込んだ際の大きな支えとなる。
気心の知れた友人との会話や交流は、幸せホルモンである「オキシトシン」を分泌させる。これはリラックス効果の高い癒しの物質であり、最も手軽で効果的なストレス解消法である。しかし、職場での形式的な飲み会など、気遣いを要する場面ではオキシトシンは分泌されにくい。心から楽しめる関係性でこそ、この効果は発揮されるのだ。
人は同時に濃密な人間関係を築ける数には限界がある。親友はせいぜい1~2人、親しい友人は5~6人が限界と言われている。SNSでの常時接続は一見友情を深めるように思えるが、無理に多くの人と深い付き合いをしようとすると疲弊するだけである。「ヤマアラシのジレンマ」のように、近づきすぎると互いのトゲが刺さり傷つけ合ってしまう可能性があるのだ。どんな関係性においても、「心地よいと感じる適度な距離感」を測ることが重要となる。
Q. 精神的に自立した生き方をするにはどうすればよいか?
ストレスに強い精神状態を築くためには「自立した生き方」が不可欠である。自立とは「自分で考え、自分で決断し、自分で行動する」ことだ。他人の顔色を窺ったり、流行に流されたりするのは、自身の意思でなく他者の意思に操られている状態であり、ストレスの根本的な原因にもなり得る。

精神医学の視点からは、自立した人とは「自己機能が高い人」と表現できる。自己機能とは、自身の感情、目的、欲求を正確に認識し、明確に説明できる能力を指す。この自己機能が低いと、周囲の意見に流されたり、自分の感情すら分からなくなったりする。つまり、自分の心をコントロールできず、外部からのストレスに脆弱になってしまうのだ。
この自己機能、あるいはメタ認知(自己観察力)を高める最も簡単なトレーニングが「ポジティブ日記」だ。寝る前に、今日あった楽しかったこと、良かったことを3行程度で書き出す。慣れてきたら、なぜ楽しかったのか、その詳細や感動した点なども加える。これを習慣化することで、自己の内面を客観的に見つめる力が養われ、同時にポジティブな思考回路も強化されていく。自分を深く知ることは、ストレスを管理し、自立した心を育む第一歩である。
Q. 辛い時の嫌な思考のループを断ち切る具体的な方法は?
頭の中で嫌なことが繰り返し巡る「ぐるぐる思考」や「反芻思考」は、ネガティブな脳の高速道路をさらに強化し、自らストレスを増殖させる行為である。このループから抜け出すためには、能動的な意識の切り替えが必須だ。特に有効なのが「アフターファイブの切り替え術」だ。
会社を出たら、仕事のことは一切考えない。今日あった嫌な出来事も、一歩会社を出た瞬間にシャットアウトする。この習慣を身につければ、会社からのストレスがプライベートな時間まで侵食するのを防げる。家に帰ってまで会社のことを考えていると、ストレスを自分で作り出すことになりかねない。仕事後には自分の楽しいことに集中し、プライベートな時間でポジティブな回路を築き、心を回復させるのだ。
さらに、物理的な刺激を使って思考をリセットする方法もある。サウナは温冷交代浴により自律神経を強制的にスイッチさせ、深いリラックス効果をもたらす。冷水に顔をつけたり、氷水に手を浸したりするのも、強烈な刺激が思考のループを一時的に断ち切るのに有効だ。また、姿勢も重要である。「背筋をピンと伸ばす」だけでセロトニンが活性化し、感情が安定するという。これは集中力を高め、気持ちを前向きにする効果がある。