
米AI株はバブルなのか?【石黒英之】
3.3万回視聴
2026年3月23日
マグニフィセント・セブンに代表される米AI株の底力を「フリーキャッシュフロー」を基に解説。インフレに打ち勝つ投資戦略について野村アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト石黒英之氏にインフレ時代の投資戦略を聞いた。 <ゲスト> 石黒英之|野村アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 証券会社...
投資情報の洪水に流されない!金融のプロが語る市場の見方と賢い戦略
インフレの波が世界を覆い、生活コストが上昇する中、私たちのお金をどう守り、どう増やすべきか。氾濫する投資情報に翻弄されず、本質を見抜く力が必要とされている。
本稿では、野村アセットマネジメントのチーフストラテジスト、石黒英之氏が、多忙な個人投資家でも実践できるシンプルかつ奥深い投資戦略を明かす。
同氏の波瀾万丈な経歴から紐解く投資哲学、複雑なマーケットを読み解く「3つの要素」と「ワニの口」理論、そしてAI時代の「フリーキャッシュフロー」の重要性まで、賢い資産形成のための道筋を示すだろう。

Q. 金融業界で活躍するに至った石黒氏の投資家としての原点は何ですか?
石黒氏は元々金融業界とは無縁の事業会社に勤務していた。彼の人生が投資によって大きく動いたのは、名古屋特有の結婚文化がきっかけであると語る。名古屋では結婚式費用が非常に高額で、貯金だけでは一生結婚できないという危機感から株式投資を始めたそうだ。
初めての投資では、結婚資金の全てを一つの銀行株に集中投資し、株価が半値になるという大失敗を経験した。しかし、この経験から投資の奥深さに目覚め、自分が調べた企業に投資し、応援しつつ資産を増やす可能性に大きな魅力を感じた。
その後、市場が回復し、投資成功体験を得た石黒氏は、投資こそが少子高齢化が進む日本を根底から変え得る唯一のツールであると確信したという。
国民が保有する現金資産を投資に回せば、日本全体が豊かになる。この信念が、金融の世界へと彼を導く原動力となったのだ。
Q. 投資情報過多の時代に、マーケットの動向をシンプルに把握する秘訣は何ですか?
情報が多すぎて何がなんだか分からなくなる個人投資家の悩みに対し、石黒氏は市場の変動要因を「3つに絞ること」を推奨している。具体的には「企業業績」「金融政策」「その他テーマ1つ」だ。
このうち企業業績と金融政策は常に注視すべき固定要素である。これらを「○(好調)」「△(中立)」「×(不調)」で評価し、これに時事的な「その他テーマ1つ」を加えるだけで、全体の市場動向を簡潔に判断できる。例えば、テクノロジー中心の企業業績が好調であれば「丸」、各国が利下げに転じれば金融政策も「丸」といった具合だ。
「ワニの口」理論という、金融政策と企業業績の推移を示すチャートに注目することも大切だ。
このチャートは政策金利が下がり(アクセルが踏まれる)、業績が伸びる時に口を開いたワニのような形となる。この形が続く限りは株にとって非常に強力な状況であり、日々のネガティブな情報に一喜一憂する必要はない。
石黒氏は「石黒英之 EPS」で検索すればこのチャートが見つかると教えている。これを参照すれば、個人投資家でも市場の大局を判断できるようになるだろう。
Q. 株式投資において、米国の巨大テック企業の株価が「バブルではない」と言われるのはなぜですか?
現在のマグニフィセント・セブンなどのテック株高は「バブルではない」という意見も少なくない。
その根拠は、株価の上昇が企業の実績や利益の成長によって裏付けられている点にある。

過去のITバブルは、実体のない企業価値や借金によって膨れ上がった側面があったが、今日の巨大テック企業は状況が大きく異なる。
石黒氏によれば、株価は必ず利益に収斂するものである。マグニフィセント・セブンの株価は確かに急上昇したが、彼らの利益もそれに見合う形で著しく成長している。株価の伸びと利益の伸びが同調している限り、それは健全な成長であり、過剰なバブルとは言えない。
つまり、一時的に株価が鈍化する期間があったとしても、企業が継続的に利益を伸ばしていれば、再び株価がその利益に追いつくという。「心配ない」と石黒氏は語る。重要なのは短期的な値動きに惑わされず、長期的な利益成長のトレンドを見極めることだ。
Q. 米国株の圧倒的な強さの背景にはどのような要因があり、新興国株への投資戦略にどう影響しますか?
石黒氏は米国株の強さを野球チームのロサンゼルス・ドジャースに例える。

現在のNVIDIAのような「大谷翔平」クラスの強力打者が揃っているだけでなく、ベンチには「次の大谷」になり得る潜在力を持つユニコーン企業が700社以上も控えていることが米国の圧倒的な選手層の厚さだと指摘する。
日本のユニコーン企業が8社程度に過ぎない現状と比較すると、その差は歴然としている。
また、新興国株への投資においては一般的な誤解があるとする。
新興国は人口増加と経済成長が見込まれるため有望視されるが、そこで豊かになった消費者は結局iPhoneやAndroidといった米国の製品、NetflixやAmazonのような米国のサービスを利用する傾向にある。
結果として、新興国で生み出された富の多くは米国企業へと流れ込んでしまうのだ。
つまり、新興国に直接投資するよりも、米国株に投資することで、間接的に新興国の経済成長の恩恵を効率的に享受できるというロジックである。石黒氏自身のポートフォリオも米国株が6割を占めていることからも、その自信が伺えるだろう。
Q. AIブームの裏側にある「フリーキャッシュフロー」の重要性とその見極め方を教えてください?
AIブームが「バブルではない」という根拠として、石黒氏は巨大テック企業が持つ「フリーキャッシュフロー(FCF)」の潤沢さを挙げる。
FCFとは、企業が事業活動で稼いだ資金から、投資や借入金の返済に必要な資金を差し引いた後に残る、文字通り「使い切れないお金」である。ITバブルの時代は多くの企業が借金で投資を行っていたのに対し、現代の主要なテック企業は、既存の「金のなる木」で稼いだ巨額のFCFでAIに投資しているため、財務基盤が極めて健全である。
Appleは年間約1000億ドル、Alphabetも年間約700億ドルのFCFを生み出し、これに両社の現金同等物を合わせると優に40兆円を超える。この圧倒的な資金力は、有望なスタートアップを次々と買収し、自社の成長戦略に組み込むことを可能にする。
これが、競合がなかなか巨大テックの牙城を崩せない大きな理由であり、安定した投資先としての魅力に繋がる。
個別株への投資を検討する際、フリーキャッシュフローは非常に重要な指標となる。

FCFがプラスであれば、自前の資金で成長できる健全な企業であり、マイナスであれば外部からの資金調達に依存するリスクの高い企業だと判断できる。
過去に市場の暴落を予知してきた「炭鉱のカナリア」と呼ばれる信用リスク指標も現状では低水準であるため、AIバブル崩壊を懸念する報道に過剰に反応する必要はないだろう。
Q. インフレ時代を迎えた日本において、個人投資家がとるべき投資戦略は何ですか?
長らくデフレに苦しんできた日本だが、今はデフレ時代の考え方を捨て、新たな投資戦略に転換すべき時期であると石黒氏は主張する。
インフレ下では現金を保有しているだけではその価値が目減りするため、「投資しないこと」が最大のリスクとなり、積極的な資産運用が不可欠となるのだ。
特に日本株については、これまで「上がったら売る」という短期売買が主流であったが、現在は「継続保有できる投資対象」へと質が変化していると見ている。これは、構造的に上昇しやすい地合いになったことを意味する。
石黒氏は「ガチホ(長期保有)」こそが、これからのインフレ時代に日本株で資産を形成するための有効な戦略であると結論付けている。
Q. そもそも投資を通じて目指すべき「幸せ」とは具体的にどのようなものですか?
石黒氏が語る最終的な投資ゴールは、単に資産を増やすことではない。「一度きりの人生を幸せに生きる」ための手段である。金銭的な余裕が生まれれば、時間や心にも余裕が生まれ、人生を豊かにするための選択肢が広がる。お金という要素が満たされることで、精神的な豊かさも追求できるようになるのだ。
経済的基盤を整えることは、不安の軽減に繋がり、個々人がそれぞれの理想とする「幸せな人生」を送るための強固な土台となるだろう。今日の市場を理解し、適切な投資戦略を学ぶことが、未来の「幸せな自分」を築く第一歩となると石黒氏は語る。
