健康新常識
薬が原因で太る/太ったことが原因で病気と薬が増える/病院「薬漬け」の裏側/薬を減らして肝臓の若さを取り戻す【健康新常識】
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2026年3月22日

健康業界のトップランナーが「新常識」を紹介する番組。700万再生超えの大反響を呼んだ「肝臓」回、待望のパート2! 肝臓の三毒 ─ 糖・酒の次は「薬」を減らす。後編では薬が原因で太る事実、多剤処方の理由とリスク、減薬で肝臓の若さを取り戻すことを肝臓外科医・尾形哲氏が説く。 <出演> 尾形 哲 肝臓外...
「薬漬け」から脱却し肝臓を蘇らせる新常識:あなたは薬で太っていないか?
現代社会において、薬は健康を支える上で不可欠な存在である。しかし、多くの人々が知らず知らずのうちに、本来であれば避けられる「薬漬け」の状態に陥っている。これは、薬の数が連鎖的に増えていく「処方の連鎖(プリスクリプションカスケード)」という現象と、意外にも薬自体の副作用による体重増加が深く関係している。
本稿では、肝臓専門医が提唱する「薬を減らす」という新常識に焦点を当て、過剰な薬の服用が体に及ぼす影響、特に肝臓への負担と肥満のリスクについて詳述する。
自身の健康と真剣に向き合い、薬との賢い付き合い方を再考することで、誰もが健康な未来を築くヒントを見出すことができるだろう。

Q. 現代人はなぜ薬が増え続けるのか?
薬が増える主な要因は二つある。一つは、「太った結果、病気になり薬が増える」という自然な流れである。肥満は2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症といった生活習慣病を招き、これらの治療のために複数の薬が処方されるケースは非常に多い。もう一つは、「服用している薬の副作用によってさらに別の薬が必要となる、あるいは体重が増えて病気を悪化させる」という知られざる問題である。

特に、一つの病気を治療するために服用し始めた薬が副作用を引き起こし、その副作用を抑えるために別の薬が処方される「処方の連鎖」は深刻な問題だ。例えば、関節の痛み止めとしてNSAID(非ステロイド性消炎鎮痛剤)を長期服用することで胃粘膜が荒れ、その結果胃薬が追加で処方される。さらに運動不足から肥満が悪化し、新たな生活習慣病の薬が加わるという負のループに陥るケースは少なくない。最終的には、5〜6種類もの薬を常飲することになり、肝臓への負担は看過できないレベルに達してしまうのだ。
Q. 服用している薬が原因で肥満になることはあるのか?
結論から言えば、薬の副作用で太るケースは確かに存在する。特に以下の薬は体重増加との関連性が指摘されている。
メンタル疾患治療薬と肥満
うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患で処方される抗精神病薬(特に第二世代)や一部の抗うつ薬、気分安定薬には、食欲増進作用や代謝への影響がある。その結果、急激な体重増加を引き起こすことがある。脂肪肝専門外来では、精神疾患の患者のうち年間10kg以上体重が増えるケースも珍しくないという。これは患者自身の努力不足ではなく、薬の特性によるものである点が重要だ。実際に日本精神神経学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会の三学会が合同でガイドラインを策定するほど、その問題は広く認識されている。
ステロイドによる体重増加の特徴
自己免疫疾患や膠原病、重度の喘息などで使用されるステロイド薬も、長期服用によってほぼ確実に肥満を招く。ステロイドには食欲増進、糖代謝の悪化、体内の水分貯留、そして脂肪蓄積を促す作用があるためである。特に特徴的なのは「中心性肥満」と呼ばれ、顔が丸くなり、手足は細いのに体幹部に脂肪がつく形態変化がよく見られる。これも自己判断で服用を中止することは危険だが、主治医に相談し、近年開発された他の免疫抑制剤を併用することでステロイドの量を減らせる可能性がある。
アレルギー薬や鎮痛剤の落とし穴
意外かもしれないが、花粉症などで日常的に使用される抗アレルギー薬(抗ヒスタミン剤)の一部にも食欲増進作用があることが報告されている。そのため「花粉症の季節だけ太る」という現象も、薬の影響が考えられる。また、ロキソニンに代表される非ステロイド性消炎鎮痛剤(N製剤)の長期連用は、体液貯留によるむくみ(浮腫)を引き起こし、これが体重増加として現れる場合がある。体重が3%以上増えるという報告もあるため、鎮痛剤も漫然と飲み続けることは避けるべきだ。これらの事実を知ることで、患者は自身の肥満が努力不足のせいではないと認識し、医師に相談するきっかけとすることができる。しかし、いずれの薬も自己判断で服用を中止することは大変危険である。必ず医師と相談し、減薬や代替薬への変更を検討する必要がある。
Q. 風邪を引いたら抗生物質を服用すべきか?
多くの人が誤解しているが、一般的な「風邪」の原因のほとんどはウイルスである。抗生物質は「細菌」にしか効果がなく、ウイルス性の風邪には無効だ。したがって、安易な抗生物質の処方や服用は医学的には推奨されない。効果がないだけでなく、不必要な副作用(下痢や肝臓への負担など)のリスクを高めることにつながるからだ。

では、なぜ抗生物質が処方されるのか。その背景には、患者の「早く治したい」「何かしらの薬が欲しい」という要望や、多忙な医療現場で個別の丁寧な説明が難しいといった実情がある。風邪に対する薬は、熱を下げる、喉の痛みを和らげる、鼻水やくしゃみを抑えるといった「対症療法」が主である。症状がひどい期間に一時的に利用し、つらい時期を乗り切るためのものと理解すべきだ。基本的に、身体の免疫力によって数日で回復に向かうため、漫然とした薬の服用は控えるべきである。
Q. 多種類の薬を飲み続ける「ポリファーマシー」の危険性は何か?
一般に5~6種類以上の薬を常用している状態は「ポリファーマシー(多剤併用)」と呼ばれ、重大な健康リスクを伴う。多種類の薬を服用すると、それぞれの薬がもつ副作用のリスクが相乗的、あるいは累乗的に増加し、薬同士の複雑な相互作用によって予期せぬ体調不良を引き起こす可能性が高まるため危険である。どの薬が不調の原因であるのかを特定すること自体が困難になり、さらなる検査や薬の追加につながる悪循環も生じる。
病院は薬をたくさん出すことで儲かるという誤解があるが、現代の医薬分業の仕組みでは、薬の数によって病院が得る「処方箋料」は基本的に変わらない。むしろ、患者の生活習慣改善や治療状況の変化に応じて、医師が2種類以上の薬を減らすことに成功した場合、病院には「薬剤総合評価調整管理料」という形で診療報酬が加算される仕組みとなっている。これは、患者(自己負担減、副作用リスク減)、医療機関(診療報酬増)、国(医療費抑制)の三者にとって利益となる「三方よし」の取り組みである。しかし、多くの医療現場では、過去の処方箋をコピーする「Do処方」が時間効率の面で多用されており、一度増えた薬が減らしにくい実態がある。患者側から「生活習慣を改善したので、薬を減らせませんか?」と積極的に相談することが、医師が減薬を検討するきっかけとなることが多い。
ただし、生活習慣病の薬などは自己判断で服用を中断すると、血糖値や血圧の急激な変動など、深刻な病状の悪化を招く危険がある。必ず主治医と相談し、専門家の指導のもと、計画的に減薬を進めることが絶対条件である。
Q. 日本の未来の健康と脂肪肝の関係はどう予測されているか?
非常に憂慮すべき予測がある。信頼性の高い統計分析によると、現在のペースが続けば、2040年には日本人の平均で44.8%、男性に至っては55%が脂肪肝になる「脂肪肝大国」と化すと言われている。これは日本人男性の2人に1人が脂肪肝になるという衝撃的な未来だ。すでに米国では肝臓移植の原因疾患のトップが脂肪肝由来の肝硬変へとシフトしており、日本も同じ道を辿る可能性が高い。脂肪肝は進行すると肝炎、肝硬変、さらには肝臓がんへと繋がり、公衆衛生上も深刻な問題となる。

この予測はあくまで現在のデータに基づいたものであり、未来は一人ひとりの行動で変えることが可能である。そのカギを握るのは、「引き算の健康法」という新しいアプローチだ。多くの人々が、様々な健康食品やサプリメントを「足し算」で取り入れることで健康増進を試みるが、真に重要なのは「減らす」ことである。糖分の過剰摂取、過度な飲酒、そして不必要な薬やサプリメントの摂取を生活から減らすことが、健康への最もシンプルかつ効果的な道となる。食事と運動習慣を見直し、体重を7%減量するだけでも、肝炎が改善し、ひざの痛みや脂質異常、高血圧などの生活習慣病のリスクが大幅に軽減され、結果として薬を減らすことが可能になる。
肝臓は非常に再生能力の高い臓器である。日々の「小さなパンチ」として継続的にダメージを受けている状況から脱却すれば、自ら健康を取り戻す力を持っている。個人の選択が日本の医療費問題にも貢献し、未来の社会をより健康なものにする力となるだろう。