PIVOT TALK SPECIAL
セス・フィッシャー氏が語る、創業ファミリー経営の問題点
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2026年3月18日

【訂正とお詫び】 本動画内の一部発言について、事実関係の誤認および最新状況との相違があったため、該当箇所を削除いたしました。 ・死亡に関する数値: 厚生労働省への死亡関連の報告数は408件(2025年3月16日時点)。現時点で同社製品との因果関係が特定されたものではありません。 ・調査体制: 社外...
日本企業の「眠れる巨人」を目覚めさせる鍵は? アクティビストが語る変革の道筋
日本企業の経営には、「謙虚さ」と「ガッツ」が必要だと繰り返し語られる。しかし、多くの企業では、その両方のバランスが崩れ、外部からの建設的な提言を阻む壁となっているのが現状である。
本記事では、アクティビスト(物言う株主)として知られるオアシス・マネジメントのセス・フィッシャー氏が指摘する花王や小林製薬の経営課題を通じ、日本企業が潜在能力を最大限に引き出すための道筋を探る。
Q. 花王はなぜ「眠れる巨人」と評されるのか?
花王は「眠れる巨人」と見なされる。そのポテンシャルから見て、株価は極めて割安だ。
問題は、経営陣が顧客、R&D、そして最も重要なマーケティングに焦点を当てていない点にある。特にマーケティングへの過小投資が致命的だという。優れたグローバルブランドであるにもかかわらず、その潜在能力を十分に引き出せていない状況がある。

花王の利益率はわずか7~8%であり、P&Gやユニリーバが17~20%であることを考慮すると、グローバル市場で競争する上で非常に不利な状態だ。この低い利益率の背景には、不採算なSKU(最小管理単位)が多すぎることが指摘されている。
日本では棚の確保のためにSKUを増やす傾向があり、これが結果的にコアブランドへの投資やマーケティング活動を阻害し、収益性を圧迫しているのだ。
Q. 花王経営陣の「マーケティング軽視」は具体的にどのような問題を引き起こすのか?
花王の経営陣は、優れた事業はマーケティングに投資しないと考えているようだが、これは世界の優良企業の常識と著しく乖離している。
Apple、コカ・コーラ、P&Gといった企業は、マーケティングに莫大な資金を投じている。消費財企業である花王が、最高マーケティング責任者(CMO)を置いていないことは、この問題の象徴と言えるだろう。
顧客が誰なのかを把握するためのデータ分析が不足しており、AIを活用したパーソナライズドマーケティングの導入も遅れている。自社ブランドのウェブサイトが機能していなかったり、ECサイトへの導線が確立されていなかったりと、デジタル時代の基本的なマーケティング戦略すら不十分なのだ。
これにより、多くの成長機会を逃している。こうした顧客理解の欠如が、アクティビストとの対話が噛み合わない一因となっている。
Q. 小林製薬の紅麹問題で明らかになったガバナンスの問題点とは何か?
小林製薬の紅麹問題は、経営陣を監督する取締役会が機能不全に陥っている典型例であった。

米国のコーポレートガバナンスは、独立した取締役会に加え、取締役の義務違反を厳しく追及する強力な司法制度という二重のチェック機能によって成り立っている。
対照的に、日本では過去25年間で取締役が責任を問われた事例がほとんどないため、責任感が希薄になりがちだ。この点が、日本の取締役会に緊張感が不足する主要な理由である。
Q. なぜ日本の多くの企業は外部からの提言を受け入れにくいのか?
多くの日本企業には、外部からの助言を素直に受け入れられない「エゴ」という壁が存在する。株主の提言が会社の成長に繋がるとしても、当初は感情的に反発する傾向が見られる。
実際にある日本企業の社長は、当初オアシスの提案書に激怒したという。しかし、最終的には妻からの「彼らは正しいのでは?」という言葉で冷静になり、提言を実行した結果、収益や株価が飛躍的に向上した事例もあるのだ。

この問題の根源には、戦後の日本経済の歴史的背景が深く関係している。第二次世界大戦後の高度経済成長期は、人口が増加し、作れば売れる「人口ボーナス」の時代であった。この時期に、「モノづくり」や「営業力」が重視される一方で、マーケティングや高度な経営戦略はあまり発展しなかったのだ。
結果として、現場の生産性や品質は世界トップレベルだが、それをグローバル市場で売るための経営やマーケティング戦略が弱く、外部からの知見を受け入れる柔軟性も乏しくなってしまったのである。
Q. 日本企業の企業統治と経営者の質を向上させるために何が必要か?
まず、株主の権利を強化し、経営陣に緊張感をもたらす司法制度改革が必要だ。
米国のように「クラスアクション(集団代表訴訟)」制度を導入し、個人株主が多大なコストを払わずに、悪質な経営に対して責任追及できる仕組みを作るべきである。弁護士が成功報酬で訴訟を担うことで、経営への強力な牽制力となるだろう。
次に、経営者を監督する取締役会のレベルアップが不可欠だ。
取締役に対し、善管注意義務、財務会計、コンプライアンス、業界知識などに関する年間6~8時間程度の研修を義務付けることで、経営を監視・監督する能力を高められる。多くの日本の社長が貸借対照表すら完璧には理解していない現状があり、金融リテラシーの向上が喫緊の課題だ。
最後に、プロフェッショナルな経営者の育成が求められる。
過去、日本の企業は優れた現場労働者の質で世界と戦ってきたが、今は知識集約型の経営エリートが不可欠だ。CEOの金融リテラシーが向上し、例えばAIなどを活用して学ぶ意欲さえあれば、短期間で知識を習得できる。知識を積極的に吸収し、適切な投資判断を下せる経営者が求められる。
Q. アクティビスト投資家は日本企業にどのような価値をもたらすのか?
アクティビストは単に企業を「攻撃する株主」ではない。多くのケースで、彼らは「教師」や「コーチ」のような役割を果たす。彼らの提案の90%以上は建設的であり、非公開の対話を通じて企業価値の向上を目指すのだ。
例えば、金融知識に乏しい経営者に対し、割安に評価されている自社株の買い戻し(自社株買い)がいかに優れた投資であるかを説くこともある。
高価なM&Aに走りがちな日本企業に対し、「最高の投資先はあなた方自身の会社です」と示唆し、資本効率の概念を教え、実践を促す。経営者が彼らの指摘を成長の「きっかけ」として捉え、積極的に学び取り入れることで、企業は大きく成長できることを示している。
Q. 日本企業が競争力を回復することは、世界にどのような貢献をもたらすのか?
日本企業が競争力を回復し、高品質な製品やサービスを世界市場に提供できれば、それは全世界の人々の生活の質向上に直結する。より良い医療、教育、貯蓄、社会の豊かさに貢献し、世界のQOLを向上させる原動力となるのだ。

アクティビストは単なる利益追求ではなく、従業員、経営陣、取引先、そして株主を含む全てのステークホルダーが利益を享受する「使命感」を持って企業変革に取り組んでいる。
日本の次世代リーダーに必要なのは、常に学び続ける「謙虚さ」と、正しいと信じることを行動に移す「ガッツ」の両立だ。日本が持つ誠実さ、丁寧さ、他者を尊重する社会秩序といった文化的価値は、世界が学ぶべき素晴らしい「輸出可能な資産」である。
日本の抱える人口減少問題のようなユニークな課題も、その解決策を見出すことで、世界のモデルとなりうる大きな機会に転じるだろう。日本の変革は、自国の繁栄に留まらず、世界の持続的発展に貢献する可能性を秘めている。