PIVOT TALK SPECIAL
最強アクティビスト、セス・フィッシャーが語る「日本企業の問題」
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2026年3月17日

日本企業に30年以上投資する、オアシス・マネジメント創業者のセス・フィッシャー氏。最強のアクティビストと呼ばれるフィッシャー氏に、日本企業の経営の問題点、改善点について、元ネスレ・ジャパンCEOの高岡浩三氏とともに聞いた。 <ゲスト> 高岡浩三|ネスレ日本 元社長 83年神戸大卒、ネスレ日本入社。...
アクティビストが語る日本企業改革の現在地:成長を阻む壁と未来への提言
日本企業の成長鈍化が叫ばれて久しい。グローバル競争が激化する現代において、企業が持続的に成長するには何が必要だろうか。
本記事では、ネスレ元社長の高岡浩三氏と、オアシス・マネジメント創業者のセス・フィッシャー氏による対談を基に、日本のコーポレートガバナンスが抱える課題、長期的な視点での経営の必要性、そしてアクティビストが果たすべき役割を深掘りする。

両氏の鋭い視点から、日本企業が成長を取り戻すための具体的な道筋を明らかにする。
Q. 日本のコーポレートガバナンスは米国と比較してどの程度改善されたか?
セス・フィッシャー氏は、米国企業が7~8点(10点満点)であるとすれば、日本企業はゼロからのスタートを経て、現在は4点程度まで改善されたと評価した。かつては社外取締役が皆無であり、社長のみに対する説明責任しか存在しなかったが、今では社外取締役の導入など劇的な変化が見られる。しかし、ガバナンスの文化、M&Aにおける公平性、説明責任といった概念の浸透は未だ道半ばである。
Q. 日本企業の取締役会が機能不全に陥っている原因は何か?
米国の取締役会が終日かけてCEOをチェックし、各委員会が独立して報告を行う一方で、日本の取締役会はCEOに対するチェック機能が働かず、形骸化しているという現状が指摘された。

これは、過去に株主総会が主要銀行のための儀式的な側面が強く、経営を厳しく評価する文化が育たなかった歴史的背景に起因すると考えられる。
米国ではCEOが席を外して報酬委員会や指名委員会が評価する
日本の取締役会のうち、指名委員会を設置している企業はわずか2〜5%にとどまる
良質なガバナンスとは経営陣にアカウンタビリティ(説明責任)を問い、場合によっては経営者を交代させる機能を果たすことだ
悪い経営はすなわち悪いガバナンスであるという認識が必要となる
Q. 日本企業が30年間成長できなかった根本的な要因は何か?
日本経済が「失われた30年」を経験した最大の要因は、企業がリスクを取らず、未来への投資を怠ったことだとされている。
大規模な日本企業は、将来の成長のための投資(設備投資、研究開発、賃上げ)を行う代わりに、GDPに匹敵する約600兆円もの内部留保を積み上げた。
これは「犯罪的」な資本の死蔵であり、従業員の給与も抑制され、先進国中で最低レベルにとどまった。かつての過剰なリスク志向から一転し、極端なリスク回避が停滞を招いたとの指摘がある。
Q. アクティビストは日本企業の変革においてどのような役割を果たすべきか?
歴史的に見て、日本は「外圧」がなければ大きく変化できない傾向がある。現代において、この「外圧」の役割をアクティビスト、すなわち「物言う株主」が担うことができる。日本には素晴らしい資産、優秀な人材、計り知れない潜在力があるにもかかわらず、リスクを恐れる経営陣や文化によってその真価が発揮できていない現状が存在する。
アクティビストは、企業経営陣が自社では気づかない他国の成功事例や最新技術(AIなど)、マーケティング戦略などの知識をもたらす「無料のコンサルタント」になり得る。アクティビストの成功は企業の成功と密接に結びついており、彼らを敵対視するのではなく、対話を通じて企業価値を向上させるパートナーとして捉えるべきだ。
Q. 良質なアクティビストがもたらす企業の変革とは何か?成功事例と課題は?
アクティビストは、短期的な財務改善のみを求める「バランスシート型」と、事業戦略を提案し長期的な成長を目指す「オペレーション型」に大別される。後者が「良質なアクティビスト」であり、持続的な企業価値向上に貢献する。

東京ドームの事例は、顧客体験の向上を通じて収益を増やし、ファン・企業・株主の「三方よし」を実現した成功例である。電子決済の導入、座席の改善など、アクティビストの綿密な調査に基づく提案が効果を発揮した。
フジテックの事例では、エレベーター設置よりも高収益なメンテナンス事業に焦点を当てる「カミソリと刃」モデルを提唱し、事業戦略の変革を促した。
一方で、フジテレビの事例は議論を呼んだ。不動産事業の切り離し提案自体はあったものの、放送事業という本業の成長戦略が欠如しており、多額の自社株買いで投資余力を失った結果、将来的な成長への懸念が残った。これは、財務改善だけでなく、本業の長期的な成長戦略を提案できるかどうかが、良質なアクティビストを見極める鍵となることを示唆している。
Q. 花王の事例から見えてくる日本企業の問題点とは?
花王は世界的なブランド力を持つにもかかわらず、その株価は潜在的な価値と比較して極めて割安に放置されていると指摘されている。
その根源的な問題は、経営陣が効果的なマーケティング投資を怠り、顧客や注力すべきブランドへの焦点を欠いている点にある。結果として、優れた研究開発やブランドのポテンシャルを収益に結びつけられていない。多くの日本企業では、いまだ外部からの助言を受け入れない排他的な文化があり、基本的な財務知識や戦略的思考が不足している経営陣が散見される。こうした企業においては、アクティビストが「教育者」の役割をも果たす必要がある。
Q. まとめ:日本企業の成長に必要な視点とは何か?
日本企業のコーポレートガバナンスは進歩したものの、未だその潜在力を十分に引き出せていない。リスクを回避し、内部留保を過剰に抱え込む体質から脱却し、未来への投資に舵を切ることが喫緊の課題だ。

そのためには、経営陣を厳しくチェックし、長期的な視点で企業価値の最大化を追求する取締役会の機能強化が不可欠である。アクティビストは、日本企業にとって単なる「外圧」ではなく、知識と経験を提供する「無料のコンサルタント」となり得る存在である。
彼らの提案を真摯に受け止め、対話を通じて共に成長戦略を築く姿勢こそが、日本企業が停滞を打破し、グローバル市場で再び輝くための鍵となるだろう。