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2026年3月3日

なぜ米国はイラン攻撃に踏み切ったのか?トランプ大統領の真の狙いは何か?経済アナリストのジョセフ・クラフト氏に速報解説してもらった。 <収録日> 2026年3月2日14:00 <ゲスト> ジョセフ・クラフト|経済アナリスト UCバークレー校を卒業後、モルガン・スタンレー本社に入社。東京支社で為替本...
トランプ前米大統領によるイラン攻撃は、国際社会に大きな波紋を広げた。表向きの大義名分とは裏腹に、この決断の裏には複雑な国内事情や選挙戦略が隠されていたと分析されている。今回の速報解説では、この攻撃の真意と、それが今後の世界、そして日本に与える影響について深く掘り下げていく。

イラン攻撃はいくつかの明確な予兆により予測されていた。中でも重要なシグナルは、米海軍の最新鋭空母「USSジェラルド・フォード」の動向であった。過去にこの空母が派遣された中東やカリブ海では軍事介入が頻繁に起きており、今回も中東の狭い海域に同空母を含む2隻の航空母艦が異例の配備をされたことは、大規模な軍事行動が近いことを強く示唆した。
攻撃直前には、ルビオ国務長官が議会の重鎮議員にイラン情勢をブリーフィングした。これは前回のベネズエラ攻撃時の批判を踏まえた地ならしだった。さらに、イスラエル大使館からの「任意の避難勧告」や、ホワイトハウス内部の慌ただしさといった情報も、攻撃が間近に迫っている証拠と見られた。多くの情報機関が攻撃の可能性は予測していたが、同時進行する核協議もあり、「いつ」実行されるかというタイミングの特定は最後まで困難を極めた。
トランプ大統領がイラン攻撃に踏み切った最大の動機は、国内政治と中間選挙を有利に進めるためであった。「ポリティコ」の世論調査では、共和党支持層の約半数がイランへの軍事介入を許容すると回答しており、支持基盤からの一定の評価が得られると踏んだのである。
「表向きの理由」はイランの核開発抑制やテロ行為対策だったが、真の狙いは国内問題からの目そらしにあった。当時、トランプ政権は、クリントン夫妻まで巻き込むエプスタイン事件の追及や、移民局の強硬な取り締まりによる死者発生など、不利なニュースが相次ぎ、世論の批判にさらされていた。イラン攻撃という大きな出来事をメディアに提供し、これらを打ち消す狙いがあったと見られている。
さらに、共和党の牙城であるテキサス州の上院予備選で、盤石と思われていた重鎮議員ジョン・コルニンが苦戦を強いられていたことも背景にある。イラン攻撃によるナショナリズムの高揚は、「有事の際に経験豊富なリーダーを変えるべきではない」という心理を喚起し、コルニンの支持率回復に貢献することが期待された。

トランプ大統領の行動の9割は中間選挙に向けたものであり、彼の思考は常に「選挙カレンダー」に支配されている。特に、11月の本選挙だけでなく、7月4日の「アメリカ建国250周年記念日」が重要なイベントと位置付けられていた。
彼はこの建国記念日までに、イランやベネズエラへの軍事介入、ウクライナの停戦合意など、様々な「功績」を積み上げようとしていた。これは、最も愛国心が高まるイベントで成果をアピールし、その勢いを借りて11月の選挙戦に突入するという戦略だ。まさに自分のテレビ番組をプロデュースするかのように、最適なタイミングで大きなニュースを仕掛け、支持獲得を図ろうとしていると言える。
国内スキャンダルや低支持率で追い込まれると、軍事介入によって支持率回復を図るというのは、過去の米政権にも見られた「悪しき傾向」である。トランプはこれを、さらに巧妙かつ露骨な形で利用し、あたかも人気テレビ番組の演出家のように国際政治を操っている。
イラン攻撃後の米国内世論は、複数の調査で「必要だった」と「正当化できない」という意見が拮抗し、明確な支持回復には至っていない。今後の攻撃継続の可否は、世論調査の動向が鍵を握るだろう。支持率が上昇すれば攻撃をエスカレートさせ、下落すれば早期の収束を探る公算が高い。
トランプの最大の弱点は「物価高」であり、紛争の長期化による原油価格高騰は、ガソリン価格の上昇を通じて国民生活を圧迫し、支持率に直結する。このため、トランプは本音では短期決戦を望んでおり、イラン側が彼のメンツが立つような「手柄」――例えば核開発の放棄――を差し出せば、電撃的な終結もあり得る。
イラン国内の情勢も混沌としている。最高指導者ハメネイ師の退場後、穏健派と強硬派の間で権力闘争が激化する可能性が高い。トランプは「4週間の攻撃継続」という脅し(ムチ)と、「協力すれば経済制裁を解除する」という提案(アメ)を使い分け、イラン国内の政権運営に揺さぶりをかけている。ホルムズ海峡の封鎖は、イラン側にとっても経済的打撃が大きいため、望ましい選択肢ではない。しかし、紛争が長期化すれば意図せずとも実質的に海峡が利用困難となり、国際原油市場に大きな影響を与えるだろう。

トランプ大統領が推進するのは、「力による平和」という新たな外交戦略である。これはイラクやアフガニスタンでの泥沼化を教訓とし、地上軍の派遣や占領統治をしない「責任なき介入」とも言えるものだ。圧倒的な軍事力を背景に、気に入らないリーダーをピンポイントで排除し、その後は現地に政権転覆や統治を任せるというやり方である。まるで企業の「アクティビスト」が会社を掻き回して去っていくかのようである。
この戦略の究極の目標は、西半球の反米国家を一掃し、米国本土を守る「盾」を完成させることにあると指摘されている。ベネズエラの介入もその一環であり、次の標的は経済的に弱体化しているキューバが有力候補と見られている。トランプは国際法や国連を軽視し、自国の国益、とりわけ自身の選挙に資するかどうかで全てを判断する。彼を動かすのは「金融市場」と「世論(選挙)」の二つだけであり、これらが否定しない限り、暴走は止まらないだろう。
イラン攻撃は、国内政治対策が主眼だが、同時に中国やロシアといった大国に対し「米国に逆らうとどうなるか」という圧倒的な軍事力を誇示するメッセージともなっている。彼の政策は倫理的には問題が多いとされながらも、西側諸国がテロ支援国家を放置するジレンマを抱えていることもあり、明確な反発を受けにくいのが現状である。

トランプ大統領は選挙に勝てないリーダーや長期政権ではない相手を軽視する傾向にある。そのため、選挙で圧勝し、安定した長期政権の基盤を固めた日本の総理は、トランプから一目置かれ、本気で向き合える稀有な立場にある。この状況を最大限に活用することが日本の外交戦略において重要となる。
トランプの懐に入り、日米関係を強化するための具体的な策としては、以下の三つが考えられる。一つ目は、大規模な対米投資計画を策定し、それをトランプの「功績」として共同で発表すること。二つ目は、中国が供給を握るレアアースについて、日本が南鳥島での開発を通じて代替供給源となることを提示し、米国の経済安全保障を支援すること。三つ目は、トランプが最も重視する7月4日のアメリカ建国250周年記念式典に総理が出席し、彼の顔を立て、個人的な信頼関係を深めることである。
このような「朝貢外交」とも揶揄されかねない戦略を通じて、習近平以上にトランプとの会談機会を増やし、米中両国が世界の行方を決める「G2」体制への傾斜を牽制する必要がある。この厳しい国際情勢の中で、現実を直視し、したたかに立ち回ることが、日本の国益を守るための不可欠な戦略となるだろう。