PIVOT TALK HEALTH
専門医が「健康神話」徹底解説
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2026年2月17日

巷に溢れる健康情報。実はその中には全くエビデンスがないものも。 朝の白湯の効果は?「お酒にウコン」は本当?米国で活躍する山田悠史医師に気になるQ&Aをぶつけた。 <収録日> 2026年1月26日 <ゲスト> 山田悠史|米国内科・老年医学専門医 慶応義塾大学医学部を卒業。日本全国の総合診療科で勤務...
健康情報のウソ・ホント:専門医が明かす最新科学に基づいた真実
巷には健康に関する情報が溢れているが、その全てが科学的な根拠に基づいているわけではない。何を信じ、どう実践すれば良いのか、多くの人が迷うことも多いだろう。本記事では、米国老年医学専門医である山田悠史先生の解説を基に、日頃耳にする健康情報の真偽を最新の論文や科学的エビデンスに基づいて明らかにする。

自身の健康に関する知識をアップデートし、より根拠に基づいた選択ができるようになるだろう。
Q. 人間ドックより国が推奨するがん検診を優先すべきなのか?
まず最優先すべきは、国が推奨するがん検診である。これらの検診は、受診することでがんによる死亡リスクが減少するという明確な科学的根拠が存在するからだ。対して人間ドックは、提供する施設によって検査内容が大きく異なり、必ずしもエビデンスが確立されていない検査も含まれている。一見手厚く感じるかもしれないが、闇雲な検査は「過剰診断」のリスクを伴う。これは、放置しても問題ない異常を見つけたり、がんではないものを疑い不要な精密検査や治療、そして心理的負担を引き起こしたりする可能性があるためである。

また、胃がん検診に関しては、バリウム検査よりも胃カメラ(内視鏡検査)を選択する方が合理的である。バリウム検査には胃がんによる死亡率低下の確たる証拠が不足している一方、胃カメラは直接胃の内部を観察でき、早期発見により死亡リスクを低減する効果が複数の研究で示されている。病院選びにおいては、もし異常が見つかった際に処置まで一貫して行える施設を選ぶという考え方もあるが、特に若年層で異常が見つかる確率は低いことから、かかりつけ医など信頼できる医師のもとで受けることも有効な選択肢と言える。いずれにせよ、会社で行われる健康診断や国のがん検診で「要精密検査」や「要受診」の通知が出た場合は、必ず専門医療機関を受診することが極めて重要である。検診はあくまで「ふるい分け」であり、その後の精密検査によってはじめて病気の有無が確定するからだ。
Q. 風邪やインフルエンザに抗生剤は必要か?また、その頭痛、頭痛薬が原因ではないのか?
風邪やインフルエンザといった疾患には、抗生剤は不要である。これらの病気はウイルス感染が原因であり、抗生剤は細菌を標的にする薬であるため、ウイルスには効果がないからだ。過去には風邪の後に起こりうる中耳炎や副鼻腔炎といった細菌感染を予防する目的や、患者の「薬への期待」に応えるために抗生剤が処方される慣習があったが、現在はウイルス感染には不要という認識が広まっている。もし抗生剤を処方された場合は、医師に「なぜこの薬が必要なのか」と尋ね、説明を求めるべきである。インフルエンザの最も確実な予防策は予防接種、手洗い、マスクの三つである。うがいの効果は限定的で、あくまで補助的な役割に過ぎない。
日常的に頭痛薬を服用している人は、「薬物乱用頭痛」のリスクに注意する必要がある。特に片頭痛で毎日のように市販の頭痛薬を飲んでいる場合、薬が効かなくなるだけでなく、その薬自体が新たな頭痛を引き起こす原因となる可能性がある。頻繁に頭痛が起こる、あるいは頭痛の性質がこれまでと違うと感じる場合は、自己判断で薬を飲み続けず、速やかに医療機関を受診すべきだ。頭痛を我慢する必要はないが、頻繁な頭痛の原因が薬であれば、痛み止めを使うだけでなく、片頭痛の発作頻度を根本的に減らす治療を検討することが重要となる。病院で処方される薬の中には、頭痛の発作頻度を抑える効果が期待できるものもあるため、専門医への相談が望ましい。
Q. 白湯や「温活」に科学的根拠はあるか?
白湯を飲むことや「温活」と呼ばれる身体を温める行為に、単なる水を飲むことや快適な温度で過ごすこと以上の科学的な健康増進効果は、残念ながら確認されていない。

体質や気分が良くなる、リラックスできるといった主観的な効果はあり、好きな人が続ける分には問題ないが、「健康のために無理をして実践する必要がある」とまでは言えないだろう。一部の「温活グッズ」なども商業的な側面が強く、エビデンスが十分に確立されていないケースが多い。
Q. 「酒は百薬の長」という説は最新のエビデンスから見て正しいのか?ウコンの効果はどうなのか?
「酒は百薬の長」という考えは、残念ながら現代の科学的知見とは異なる。最新の研究では、アルコールはごく少量、つまり一滴からでも健康リスクを高めることが示されている。これまでの「適量なら健康に良い」という説は、統計学的な落とし穴が原因であったとされている。

具体的には、過去の研究で「全く酒を飲まない人」のグループには、健康上の理由(持病など)で飲めない人が含まれており、そのため統計上「全く飲まない人」が「適量を飲む人」よりも不健康に見えるという現象が発生していた。この交絡因子を取り除き、正確な比較を行うと、飲酒量は少量からでも発がんリスクや認知症のリスクを高めることが明らかになっている。現在では、健康のために酒を飲み始めることは推奨されない。
また、「高いお酒は酔いにくい」というのも俗説である。お酒の質が酔いやすさに直接的な影響を与えることはなく、摂取するアルコールの総量と飲むペースが酔いの程度を左右する。高級なお酒はゆっくりと嗜む傾向があるため、結果的に酔いにくいと感じるだけなのだ。さらに、二日酔い対策として日本で広く使われるウコン(クルクミン)には、二日酔いに効果があるという科学的な根拠は確認されていない。これは日本特有の民間療法に過ぎず、海外ではビタミンBやカリウムなどが二日酔いに効くと信じられているケースもあるが、これらにも明確なエビデンスはない。唯一、確実な二日酔い対策は、シンプルにアルコールの摂取量を控えることである。
Q. コーヒーや牛乳は本当に健康に良いのか、悪いのか?
コーヒーは多くの研究で健康に良い影響を与える可能性が示されている。具体的には、心臓病、糖尿病、一部のがん、さらには全体の死亡率の低下との関連が報告されている。カフェインの摂りすぎによる不眠や動悸には注意が必要だが、一般的にマグカップで1日4~5杯程度までは安全かつ有益な習慣となり得ると考えられる。コーヒー好きにとっては朗報と言えるだろう。

一方、牛乳が体に悪いという根拠も存在しない。「脂肪分が動脈硬化を促進する」という懸念もあるが、実際には牛乳を飲むことで心臓病のリスクが高まるという直接的な証拠は見られない。牛乳には良い脂肪分も含まれており、単一成分のみで判断することはできないのだ。ただし、乳糖不耐症は世界的に広く見られる症状であり、牛乳を飲むとお腹を下しやすい場合は、無理に飲む必要はない。その場合でも、ヨーグルトなどの乳加工品であれば乳糖が分解されているため、乳製品から栄養を摂取できる可能性がある。
Q. 長時間のデスクワークはがんのリスクを高めるのか?悪玉コレステロール値が高い場合はどうすべきか?
長時間のデスクワークは、タバコの喫煙や過度な飲酒と同じレベルでがんのリスクを高める生活習慣であることが判明している。座りっぱなしの生活が続くことで、体内で慢性的な「ぼや」のような炎症が起こり、様々な体の不具合が生じることが知られている。これは人類が本来体を動かして生きてきた歴史を考えると、身体活動の減少がバランスを崩しているためだと考えられる。しかし朗報もあり、このリスクは仕事の合間のストレッチや休憩時間のウォーキング、あるいは業務外での定期的な運動によって十分に相殺可能である。意識的に体を動かす習慣を取り入れることで、健康リスクから身を守ることができる。
悪玉コレステロール(LDL)値が高い場合、自覚症状がなくても放置することは非常に危険である。高いLDLコレステロール値が長期間続くと、血管の動脈硬化が進み、将来的に心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患のリスクを確実に高めるからだ。時に「遺伝だから仕方ない」と諦める人もいるが、遺伝的要因があったとしても適切な治療と管理が重要となる。LDLコレステロール値が高いと診断された場合は、医師と相談し、自身の心血管イベントのリスクを正確に把握すべきだ。その結果、食事や運動療法、さらには薬剤による治療が推奨される場合もある。症状が出てからでは手遅れになるケースが多いため、未然に病気を防ぐ観点から、検診で指摘されたら必ず専門医療機関を受診することが賢明である。