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【心・体・性の不調】男性更年期に注意
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2026年2月21日

これまであまり注目されてこなかった「男性の更年期障害」。男性ホルモンの減少により、早い人では30〜40代から心・体・性の様々な不調が起きる可能性がある。主な症状や対策について、泌尿器科医の久末伸一氏に聞いた。 <ゲスト> 久末伸一|泌尿器科医 恵佑会札幌病院 泌尿器科部長。日本泌尿器科学会指導医・...
男性更年期の真実:30~40代も無関係ではない、その症状と対策
やる気が出ない、体が疲れやすい、あるいはなんとなく元気がない。これらの不調は単なる加齢のせいだと見過ごされていないか。実は男性にも更年期が存在し、これらの症状はそのサインかもしれない。男性ホルモン「テストステロン」の低下によって引き起こされる男性更年期は、一部の高齢者だけの問題ではない。現代社会を生きる多くの男性にとって身近なリスクであり、適切な知識と対策が自身の健康を維持するために不可欠である。

Q. 男性更年期とは一体どのような状態を指すのか?
男性更年期は「心」「体」「性」の3つの側面にわたる多岐にわたる症状が特徴である。心の面では、やる気の低下、漠然とした不安、軽度のうつ症状などが現れることがある。身体的な側面では、疲れやすさ、筋力の衰え、息切れ、そしてメタボリックシンドロームのような体形の変化も伴う。さらに、性の面では性欲の減退や性機能の低下、特に朝立ちの回数の減少などが明確なサインとなる。
これらの症状は、男性ホルモンであるテストステロンの低下によって引き起こされる。女性の更年期が閉経という明確なイベントに伴い50歳前後で劇的にホルモンが減少するのに対し、男性の場合は特定のイベントがなく、テストステロンの分泌は30代頃から徐々に減少し始めるため、若年層でも更年期症状が出現する可能性がある。この症状の現れ方や時期には大きな個人差があり、予測が困難である点も特徴だ。
Q. テストステロンの低下が薄毛やその他の不調を引き起こすのはなぜか?
「テストステロン値が高いと薄毛になる」という説は実は誤解だ。現実には真逆のことが起こりうる。テストステロンが加齢とともに低下すると、身体はその減少を補うために、残されたテストステロンの一部をより強力な「ジヒドロテストステロン」というホルモンに変換する。このジヒドロテストステロンが、毛根や前立腺を過剰に刺激し、毛が抜ける薄毛や前立腺肥大症を招くと考えられている。つまり、テストステロン低下の二次的な影響が不調の原因だと言えよう。

テストステロンはまた、男性の身体の多くの機能に不可欠な役割を果たす。性欲や積極性だけでなく、筋力の維持、造血作用(貧血予防)、さらには骨の健康にも寄与している。体内でテストステロンの一部は「アロマターゼ」という酵素によって女性ホルモン(エストロゲン)に変換され、これが男性の骨粗鬆症を防ぐ重要な働きをする。実際、60代では閉経後の女性よりも男性の方がエストロゲン値が高くなるという興味深い逆転現象も確認されている。
テストステロンのレベルは、男性の健康と長寿に深く関係する。複数のデータによると、テストステロン値が低い男性は、心臓病だけでなく、癌やその他のあらゆる原因による死亡率が高いことが示されている。テストステロンの適切な維持は、病気を予防し、病気になった際の回復力や生活の質を保つ上でも極めて重要である。人生100年時代と言われる現代において、男性ホルモンを意識した健康管理が必須となるだろう。
Q. 自身のテストステロンレベルを簡易的に測る方法はあるか?
自分のテストステロンの基礎的なポテンシャルは、指の長さで知ることができる。人差し指よりも薬指が長い男性は、胎児期にテストステロンを多く浴びて成長した証であり、生まれつきテストステロン産生能力が高い傾向にあると言われている。このため、加齢によるテストステロンの減少があっても、比較的更年期症状が出にくい体質である可能性が高い。

より直接的なバロメーターとして、朝立ち(夜間睡眠時勃起)の回数がある。朝立ちは、睡眠中に起こる勃起のことで、陰茎の血流を保つ「深呼吸」のような役割を担い、テストステロンの分泌量と密接に関わっている。健康な男性であれば週に2〜3回程度の朝立ちがあるのが一般的だが、週に1回未満しか自覚がない場合、テストステロンの低下が進んでいるサインと捉え、男性更年期の可能性を疑う必要がある。
また、メンタル面では、急に仕事に行きたくないと感じる、外出を億劫に思うといった意欲の低下は男性更年期のサインであることが多い。また、結婚後に体重が増加する現象は一般的に「幸せ太り」と呼ばれることが多いが、実はこれもテストステロン低下による代謝の変化で起こる「更年期メタボ」である場合が少なくない。これは哺乳類が子育てのために家庭に留まるように、テストステロンが低下する生物学的メカニズムによるものだ。
Q. 日常生活でテストステロン値を高めるために実践できることは何か?
テストステロン値を上げる最も効果的な方法は「筋トレ」である。特に体の筋肉量の約7割を占める下半身の筋肉を鍛えるスクワットが推奨される。筋肉量が増加すると、男性ホルモンの受容体も増え、脳からのテストステロン分泌を促す指令が増えるため、結果としてテストステロン値が上昇する仕組みだ。
忙しい中でも実践できる簡単な工夫もある。例えば、毎日の歯磨き中に30回スクワットを行う「ながらスクワット」や、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を積極的に利用するといった習慣だ。こうした日々の積み重ねがテストステロン値の維持に繋がり、結果として男性更年期の予防に繋がるだろう。
食事面では、ニンニク、ニラ、長ネギに含まれる「アリシン」がテストステロンの向上に寄与する。しかしアリシンは熱に弱いため、調理法に一工夫が必要だ。豚肉や牛肉など、ビタミンB1が豊富な食材と一緒に摂取すると、熱に強い「アリチアミン」という物質に変化し、効率よく吸収できる。餃子やレバニラ炒めなどが理想的な組み合わせだと言えよう。
また、亜鉛もテストステロンの生成に不可欠なミネラルだ。亜鉛を多く含む食品として牡蠣が有名だが、枝豆、キャベツ、ごぼうなども日頃から摂取しやすい。調味料としてオイスターソースを使うことも亜鉛補給に役立つ。
これらの食材の要素を理想的に兼ね備えているのが「もつ鍋」である。ニンニクやニラのアリシン、もつに豊富なビタミンB1、そしてキャベツやごぼうに含まれる亜鉛が一つの鍋に集約されており、まさにテストステロンを高めるための「最強フード」と呼べるだろう。
Q. 男性更年期はどれくらいの人が影響を受けるのか、早期発見のポイントは?
男性更年期の認知度は依然として低く、特に20代から30代の若年層ではその半数以上が「知らない」と回答している。自分の不調を単なるストレスや老化と捉え、適切な対応が遅れるケースが多いため注意が必要だ。うつ病と誤解され、心療内科に通院しても改善が見られない場合、実は男性更年期が原因である可能性もある。

男性更年期の大きな特徴は、その始まりや終わりが女性のように明確ではなく、個人差が大きいことだ。そのため「いつ」「誰に」症状が現れるか予測が難しい。多くの場合、本人が自身の変化に気づかず、パートナーが「なんとなく様子がおかしい」と感じて医療機関を受診するきっかけとなることが多い。意欲が減退し「外に出たくない」という状態に陥ると、自ら病院へ行くことすら億劫になるため、周囲の理解とサポートが重要となる。
徹夜はテストステロンにとって極めて有害な行為である。たった2日間の徹夜でもテストステロン値はほぼゼロにまで低下することが研究で示されている。一度テストステロンが大幅に低下し「更年期スパイラル」に陥ると、自力での回復が困難になる場合がある。その場合、テストステロン注射による補充療法が選択肢となることも、頭の片隅に置いておくべきだろう。生活習慣を見直しても症状が改善しない場合は、専門医への相談を検討する必要がある。