ビジネス虎の巻
ベストセラー著者2人から学ぶマネジメント【橋本拓也×岡本純子】
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2026年2月9日

管理職の役目は部下が変わるお手伝い?部下を管理・指示しない"リードマネジメント”とは?マネジメントに悩めるビジネスパーソンに向けた実践術をベストセラー著者 の橋本拓也氏と岡本純子氏に聞いた。 <ゲスト> 橋本拓也|アチーブメント株式会社 取締役営業本部長 - 千葉大学を卒業後 アチーブメント株式会...
部下との関係を一新するマネジメント術:ベストセラー著者が語る「技術」の真髄
現代において、多くの管理職は部下との向き合い方やチームの育成に深い悩みを抱えている。「管理職は罰ゲーム」という言葉が示すように、従来のマネジメント手法では対応しきれない課題が山積しているのが現状である。
しかし、この問題は個人の能力や才能の有無に起因するものではなく、学ぶことで克服可能な「技術」の領域である。本記事では、ベストセラー著者である橋本拓也氏と岡本純子氏の知見を基に、マネジメントを「技術」として捉え、部下との関係を根本から見直し、チームの生産性を最大化するための具体的な手法をQ&A形式で解説する。今日から実践できるコミュニケーションの「魔法」を習得し、理想のリーダー像を目指せ。

Q. マネジメントは「技術」が9割というが、それは何を意味するのか?
マネジメントは、持って生まれた才能や人望といった先天的なものではなく、後天的に習得できる100%「技術」である。多くの管理職はプレイヤーとしての経験や感覚のままマネジメントに臨み、「無免許運転」のような状態に陥りやすい。これは、適切な知識やスキルを学ぶ機会がないために発生する。

しかし、車の運転免許と同様に、マネジメントも正しい知識を体系的に学び、実践することで誰もが習得可能である。マネージャーへの移行は、個人競技から団体競技へとステージが変わるようなものと捉えられる。自身のプレイヤーとしての力量だけでなく、チーム全体の力を引き出す新たなスキルセットが求められるのだ。コミュニケーション能力も同様に、才能ではなくスキルであり、誰でも磨きをかけられるものとされる。
Q. 従来の「ボスマネジメント」から「リードマネジメント」へ転換する方法は?
まず自身のマネージャータイプを把握することが重要だ。マネージャーは「成果」と「人間関係」を軸に「無関心」「ボス」「甘やかし」「リード」の4タイプに分けられる。無関心は両方を軽視するタイプ、ボスは成果を追求し人間関係を軽視するタイプ、甘やかしは人間関係重視で成果に甘いタイプ、そして理想的なのは成果と人間関係を両立させる「リードマネージャー」である。
従来の「ボスマネジメント」は、指示や命令、飴と鞭を用いて部下をコントロールしようとする。これは部下の思考を停止させ、長期的な成長には繋がりにくい。一方、「リードマネジメント」は、部下を主体と捉え、管理職はあくまで「お手伝い」として部下の目標達成を導く。
「人は変えられないが、自ら変わることができる」という原則に基づき、上司は情報提供者としての役割に徹するべきである。部下を動かす説得は、ボクシングのように無理強いするのではなく、ソーシャルダンスのように自然に誘い、気持ちよく自身のゴールへ導く姿勢が不可欠となる。
具体的には「リーダーシップ」「個人の成長支援」「水質管理」「委任」「仕組み化」という5つの技術を習得し実践することで、この転換を図れる。これらの技術は漠然とした取り組みではなく、体系的に学ぶべきスキルである。
Q. 部下の成長を阻害するとされる「叱る」行為の弊害とは?
一般的に「怒る」ことは悪いが「叱る」ことは良いと認識されがちだが、その漢字の成り立ちからも、「叱る」は「目上の者が目下の人に対し、声を荒らげて咎める」という強い調子での注意を意味する。この行為はしばしば恐怖による支配に繋がりやすい。

恐怖で動く人間は、短期的には指示に従うかもしれないが、長期的には自主的な思考力や成長意欲を失ってしまう。反発するか、諦めて従うかのいずれかになり、部下の主体的な行動や内発的なモチベーションは育たない。結果的に「言われたことしかしない」部下を育ててしまう恐れがあるのだ。
日本の「厳しくしないと人は育たない」というマチョなカルチャーは、恐怖によるコミュニケーションを生みやすく、上司が不機嫌な顔で接することが当たり前とされる環境すら生み出してしまう。これは部下が自ら考え行動することを阻害する原因となる。
部下への注意は、感情的に「叱る」のではなく、客観的な事実に基づいた「フィードバック」の技術を習得する必要がある。これは耳の痛いことを適切に伝えつつ、相手の成長に繋げるための重要なスキルである。
Q. 「なぜ?」はなぜ避けるべきなのか? 効果的な質問の仕方とは?
詰問のような「なぜ?」という問いかけは、部下の「言い訳回路」を刺激し、自己防衛的な反応を引き出すため避けるべきである。「なぜ遅刻したのか?」と聞かれても、人は弁解しようとし、心理的安全性は損なわれるばかりである。日本の製造業に「なぜ5回」という神話があるが、人に対してこれを実施すれば精神的に追い詰めることとなる。
代わりに「何が起きたのか?」「次は何ができるか?」と未来志向の問いに変えるべきだ。これにより、部下は攻撃されたと感じることなく、状況の分析と具体的な解決策の検討に集中できる。過去を責めるのではなく、未来の改善に焦点を当てることで、建設的な対話が生まれる。
Q. 人間関係を好転させる「SPECIAL」の法則とはどのようなものか?
岡本氏が提唱する「SPECIAL」の法則は、人間関係とコミュニケーションを劇的に改善する7つの魔法の言い換えから成り立っている。それぞれは次のとおりである。

S(Small & Specific):曖昧な指示を避け、具体的かつ定量的に伝える。「しっかりやって」ではなく「明日の10時までに資料を提出して」と具体的にすることで、部下は何をすべきか明確になる。
P(Proposal):命令ではなく提案形式で話す。「これ、できるかな?」と疑問形にすることで、部下は自ら考え、行動する主体性を育む。WBCの栗山監督のコミュニケーション術もこの類型に該当する。
E(Elect):過去を責める問いかけは避け、未来志向で伝える。「なぜやったのか」ではなく、「次は何ができるか」に焦点を当てる。
C(Cause):理由を明確に伝える。「なぜなら」という言葉を使い、指示の背景や重要性を共有することで、部下は納得し、責任感を持って仕事に取り組む。
I(I):主語を「私」にして伝える。「君はやる気がない」ではなく、「私は君がもっと活躍する姿を見たい」といったアイメッセージは、相手に攻撃と捉えられず、受け入れられやすい。
A(Affirm):否定形ではなく肯定形で伝える。「緊張しないで」ではなく「リラックスして臨んで」のように、ポジティブな言葉は人の心に残りやすく、良い行動変容を促す。
L(Like):信頼と好意を示すこと。根底に尊敬や信頼があるからこそ、言葉は相手に響き、行動へと繋がる。敵対関係ではなく、ポジティブな人間関係の構築が重要である。
Q. やる気のない部下に対し、管理職はどう接するべきか?
やる気のない部下に対して「それは君自身の問題だ」と突き放すのは、部下を閉ざし、孤立させる最も悪い対応である。まず管理職がすべきことは、部下の話を聞き、共感し、何が彼らのやる気を阻害しているのかを徹底的に引き出すことだ。
彼らが言語化できていない感情や課題を共に探り、自ら問題の本質に気づかせ、結論を出させる支援が重要となる。決めつけや一方的なアドバイスではなく、「ハーバードのロースクール交渉クラス」でも教えられる「聞く・共感する・心をつなぐ」の3ステップを踏むことで、部下は初めて上司の影響を受け入れ、行動を変える可能性が生まれる。
個々の部下の状況や心境に合わせた「実験」と試行錯誤を通じて、最も響くアプローチを見つける探求心が管理職には求められる。